バーチェル・レンジャー その4
◆
蟻地獄は優秀な罠だった。
何万ものアリがその大穴に足を取られ滑り落ちた。
しかしアリとて馬鹿ではなかった。大穴に入ってはいけないのなら、入らなければいい。
城は山に囲まれており、アリの進路は一本道。その進路を塞ぐように置かれた蟻地獄だったが、容易に橋が架けられ突破されてしまう。それは、今までの罠も同様だった。
通路の幅は100m程あり、到底四人で守りきれる範囲ではない。
「お、俺のアリジゴクが……」
しかし目の前に広がる光景は文字通り蟻地獄。耐えられなければ、早期に脱落してしまう。
「ライラック……これは……」
「ああ、やってみるしかない……な!」
一か八か、俺はインベントリから、虫取り網を取り出した。
「【宥和の大網】、巨大化!!」
網はぐんぐんと大きくなり、やがて網部分の直径が90mくらいになると、ライラックは思い切りそれを下に振り下ろす。空気抵抗が大きい為、ゆっくりと降下する網の先には、向かってくる蟻の軍勢があった。
「えぇい!! どうだおらぁ!!」
網が地面に叩きつけられ、大きく砂埃を立てる。砂埃の奥に見えるのは沢山の黒い影。
「おぉ! ちゃんと捕獲できてるじゃーん」
網は大量のアリを捕らえることに成功した。
「戻す時どうすんだこれ」
「ん? 『戻れ!』とかじゃないか?」
「じゃあ……戻れ!」
巨大な網が段々と薄くなるように消え、手元には元のサイズの虫取り網が残った。
「戻せたな……戻せるんだな……」
「そうだねぇ。あれ、このアリ達、向かってこないけど?」
「何?」
「妙だな。行動変化か?」
そうか。そうか……ははは、ははははは!!!
「これはキタぜえぇぇぇ!!!!」
「なんだ? 急に」
俺は黙って、三人にとある物を渡す。
「何ですかこれ」
それはバレーボール程の大きさの昆虫ゼリーだった。
「? 何を……?」
「ははははは!!! 何をって??? そいつを敵対してないアリにあげるんだよ!!!」
そう、敵対してないということはつまり!【宥和の大網】の効果がしっかり適用されているということ!即ちテイム可能って訳だぜひゃっほう!!ただ、大きさが変わらないような……ま、いいか。
「あの人狂い出したよ? 大丈夫そ?」
「まぁ何かの作戦ですよ! きっと……」
「取り敢えずあげてみようぜ」
ライズがそう言ったその時には、ライズは既にアリに餌をあげていた。
「行動早すぎません!?」
「すごいぞ、全然攻撃してこない。さっきの網の効果か?」
「大体合ってる!!! おらぁ!!!」
俺は再度網を構える。そして振り下ろす直前に巨大化させ、振り上げる前に大きさを戻す。
こうすることで空気抵抗を減らして網を振れる。…………天才か?
そうして網を上下させていると、どんどんとアリが敵対しなくなっていく。
敵対しなくなったアリは三人によってどんどん仲間になる。
敵のアリからしたら、まさに四面楚歌だ。
しかし、何かが引っ掛かる……何だ?
……………………そうだ! 網で捕まえたら倒したことにならないんじゃないか!?!?
「おーい、ヨザクラー! これ倒したことになってるかー!?」
「ちょっと待って下さーい!! えーと、えーと、なってます!!」
「なってるんかーーーい!!! しゃあぁぁぁぁ!!!」
「ぶふっ」
レイズがちょっと吹いた。笑いのツボが独特だなぁ。
ええい、そんな事はどうでもいい! 倒したことになってるなら遠慮なく網を振れる!!
おらおらおらぁ!!
一方で。
「おお、仲間になると意外とかわいいな」
「人間大だからってのもあるかもねぇ」
「確かに…………小さいとちょっとキモいですもんね」
「見ろ、撫でると喜ぶぞ。もしかしたら脳もデカくなってるって設定なのかもな」
「そうかも知れないねぇ」
三人は戦闘をせずアリと戯れていた。
「あーなんか作業化してきた…………」
ただ網を振るだけになってしまった。いけない、これは……つまらん!!
なんか、刺激が足りない!!さっきまでテンション高かったのもあって差が激しい!!
「お?」
そう思った矢先、地平線の先に、大きい影が見えた。
それは大きく湾曲した黒い大顎を持っており、体長は10m程あるように見える。
普通の個体がメディア、橋を作ったのがマイナーだとするならば…………
この個体はメジャー、所謂"兵アリ"だ。
「来たか兵アリさんよぉ! 数の暴力でボコボコにしてやらぁ!!」
アリ「こっちのセリフ…………だったハズでは?」
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