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バーチェル・レンジャー その4


 蟻地獄は優秀な罠だった。

何万ものアリがその大穴に足を取られ滑り落ちた。

しかしアリとて馬鹿ではなかった。大穴に入ってはいけないのなら、入らなければいい。


 城は山に囲まれており、アリの進路は一本道。その進路を塞ぐように置かれた蟻地獄だったが、容易に橋が架けられ突破されてしまう。それは、今までの罠も同様だった。


 通路の幅は100m程あり、到底四人で守りきれる範囲ではない。


「お、俺のアリジゴクが……」


 しかし目の前に広がる光景は文字通り蟻地獄。耐えられなければ、早期に脱落してしまう。


「ライラック……これは……」


「ああ、やってみるしかない……な!」


 一か八か、俺はインベントリから、虫取り網を取り出した。


「【宥和の(レティア・)大網(プラカティオニス)】、巨大化!!」


 網はぐんぐんと大きくなり、やがて網部分の直径が90mくらいになると、ライラックは思い切りそれを下に振り下ろす。空気抵抗が大きい為、ゆっくりと降下する網の先には、向かってくる蟻の軍勢があった。


「えぇい!! どうだおらぁ!!」


 網が地面に叩きつけられ、大きく砂埃を立てる。砂埃の奥に見えるのは沢山の黒い影。


「おぉ! ちゃんと捕獲できてるじゃーん」


 網は大量のアリを捕らえることに成功した。


「戻す時どうすんだこれ」


「ん? 『戻れ!』とかじゃないか?」


「じゃあ……戻れ!」


 巨大な網が段々と薄くなるように消え、手元には元のサイズの虫取り網が残った。


「戻せたな……戻せるんだな……」


「そうだねぇ。あれ、このアリ達、向かってこないけど?」


「何?」


「妙だな。行動変化か?」


 そうか。そうか……ははは、ははははは!!!


「これはキタぜえぇぇぇ!!!!」


「なんだ? 急に」


 俺は黙って、三人にとある物を渡す。


「何ですかこれ」


 それはバレーボール程の大きさの昆虫ゼリーだった。


「? 何を……?」


「ははははは!!! 何をって??? そいつを敵対してないアリにあげるんだよ!!!」


 そう、敵対してないということはつまり!【宥和の(レティア・)大網(プラカティオニス)】の効果がしっかり適用されているということ!即ちテイム可能って訳だぜひゃっほう!!ただ、大きさが変わらないような……ま、いいか。


「あの人狂い出したよ? 大丈夫そ?」


「まぁ何かの作戦ですよ! きっと……」


「取り敢えずあげてみようぜ」


 ライズがそう言ったその時には、ライズは既にアリに餌をあげていた。


「行動早すぎません!?」


「すごいぞ、全然攻撃してこない。さっきの網の効果か?」


「大体合ってる!!! おらぁ!!!」


 俺は再度網を構える。そして振り下ろす直前に巨大化させ、振り上げる前に大きさを戻す。

こうすることで空気抵抗を減らして網を振れる。…………天才か?


 そうして網を上下させていると、どんどんとアリが敵対しなくなっていく。

敵対しなくなったアリは三人によってどんどん仲間になる。

敵のアリからしたら、まさに四面楚歌だ。


 しかし、何かが引っ掛かる……何だ?

……………………そうだ! 網で捕まえたら倒したことにならないんじゃないか!?!?


「おーい、ヨザクラー! これ倒したことになってるかー!?」


「ちょっと待って下さーい!! えーと、えーと、なってます!!」


「なってるんかーーーい!!! しゃあぁぁぁぁ!!!」


「ぶふっ」


 レイズがちょっと吹いた。笑いのツボが独特だなぁ。

ええい、そんな事はどうでもいい! 倒したことになってるなら遠慮なく網を振れる!!

おらおらおらぁ!!


 一方で。


「おお、仲間になると意外とかわいいな」


「人間大だからってのもあるかもねぇ」


「確かに…………小さいとちょっとキモいですもんね」


「見ろ、撫でると喜ぶぞ。もしかしたら脳もデカくなってるって設定なのかもな」


「そうかも知れないねぇ」


 三人は戦闘をせずアリと戯れていた。




「あーなんか作業化してきた…………」


 ただ網を振るだけになってしまった。いけない、これは……つまらん!!

なんか、刺激が足りない!!さっきまでテンション高かったのもあって差が激しい!!


「お?」


 そう思った矢先、地平線の先に、大きい影が見えた。

それは大きく湾曲した黒い大顎を持っており、体長は10m程あるように見える。


 普通の個体がメディア、橋を作ったのがマイナーだとするならば…………

この個体はメジャー、所謂"兵アリ"だ。


「来たか兵アリさんよぉ! 数の暴力でボコボコにしてやらぁ!!」

アリ「こっちのセリフ…………だったハズでは?」



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