バーチェル・レンジャー その3
ようやく3万文字です!
???「もう20話目なのに……」
◇
「じゃあ準備は良い?」
クラン"琉神大百足"のグラパー、モーセ、リオ、アスロラの四人は、遠くにいるアリの軍勢を確認し、作戦を開始する。
「もちろん!」
「名付けて……蝗害大作戦! 作戦開始!」
最前列のアリがモーセのトラバサミに引っ掛かる。アリは足を取られて動けない。リオはインベントリから巨大な斧を取り出し、アリを集中攻撃する。リオは殆どのステータスをATKに振っている。その代わりAGIも低いので、敵の動きを止める罠と相性が良い。
リオの攻撃を受けたアリが倒れる。そしてすぐさま次のアリに攻撃を仕掛け、次々にアリを倒していく。
罠は一度発動すると使えなくなってしまう。この状況を維持するには、罠を再設置しなければならない。が、リオは攻撃で精一杯、モーセは戦闘能力が皆無なので、罠を置く隙が作れない。
ならば隙を作れるのはグラパーだけだ。
グラパーがアスロラからのバフを受けて、飛蝗のように跳躍する。
跳躍した先にはアリの群れ、グラパーはインベントリから白く、大きな盾を取り出す。
盾を下に向け、轟音とともに着地する。
アスロラのジョブは"回復魔導師"。主に味方の回復を行うジョブで、回復魔法の回復量に二倍以上の補正が入る。しかしその真髄は回復ではなく、バフ、デバフの効果量増加。
"回復魔導師"は最強のヒーラーであり、バッファーであり、デバッファーなのだ。
【跳躍力上昇Ⅳ】、【炎耐性Ⅳ】、【注目Ⅳ】、さらに炎耐性がある防具をつけたグラパーが、盾をインベントリに仕舞った瞬間。その周囲が突如として炎上する。【注目Ⅳ】は本来ならデバフだが、このような状況では役に立つ。アリ達の注意がグラパーに集まり、燃え上がる地面を無視して、グラパーに襲いかからんとする。
グラパーはインベントリから油を取り出し、炎の中にぶちまける。炎はさらに威力を増す。
「【フローティング】!」
いくら炎耐性を付けようと、ダメージを0にすることは出来ない。アスロラがグラパーに浮遊の魔法をかける。グラパーの体が浮き、【注目IV】によって空を見上げることしか出来ないアリ達が、炎の熱で倒れ一気に数を減らす。グラパーはふわふわと浮きながら前線から離脱する。
アリの数が一気に減り、一時的に敵の前線が崩壊する。その隙にモーセが発動済みの罠を回収し、新たに罠を仕掛ける。仕掛け終わったら回収した罠をグラパーに渡す。
グラパーが【錬金術】で発動済みの罠を新しい罠に錬成する。【錬金術】は錬成前の材質・質量と、錬成後の材質・質量が異なる程、MPを多く要求される。その点、今回の錬成は材質も質量もほぼ変わらないので、少量のMPで済む。
そして罠にかかったアリをリオが倒す。アスロラがバフをかける。グラパーが特攻する。モーセが罠を回収、再設置する。回収した罠をグラパーが新品にする。これを繰り返し、段々とこちらの前線を押し上げて行く。その様子は、群れで草を食べ尽くすような、まさに蝗害であった。
しかしアスロラとグラパーのMPが尽きればこのループは終わる。だが後ろにはMP回復要因のプレイヤーが立っており、そのインベントリには大量のMP回復ポーションが詰まっている。それはつまり、これらが全て尽きるまでこの作戦は続くことを意味している。大規模クランならではの力技だ。
そうして三十分程善戦していたグラパー達だったが、ここで問題が起きる。
アリ達が一斉に集まり、互いの脚をガッチリと掴む。そしてそれは橋となり、罠の上を通り越して攻め入って来た。罠がある地帯は幅10m程あったが、アリが大きすぎて端から端までの橋を簡単に作られてしまった。
「でも、想定済みなんだよね」
グンタイアリが集団で橋を作ることなど、このゲームをプレイしている人の二割くらいは知っている。
そのため橋を架けてくることは想定済みだ。
「作戦を第二フェーズに移行〜!!」
「「「了解!」」」
アスロラの号令を受け、作戦を次の段階に移行する。
橋の上から来るアリを上位勢が対処し、橋以外から来る敵をモーセと他のプレイヤーで対処する作戦だ。
「やーっと俺の出番だな。三人は下がってて良いぞ」
そう言うのはクランリーダーのカワセミ。そのレベルは全プレイヤー最高のLv62。間違いなく、現在最強のプレイヤーの一人だ。
「【龍神大百足】!!」
その瞬間、カワセミは超巨大な、全長100mはあるだろうムカデに変身した。
カワセミは……否、ムカデはアリの軍勢を薙ぎ払い、踏み潰し、蹂躙した。
もう昆虫じゃないじゃん豆知識コーナー
リュウジンオオムカデは国内最大のムカデで、体長は19cm程。沖縄で発見された、世界で三例目の半水棲のムカデです。和名は琉神大百足といいます。
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