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どう考えても初心者ではない

今回は長め(普段が短すぎるんだよ)

 再びログインし宿から出るやいなや、すぐに声を掛けられてしまった。くそ、これもグラパーの仕業か。どうせ宿から出てくるとかいう情報を流したんだろう。


「あの転移魔法って貴方がやったんですか?」


「え、違います」


 テイマーの掲示板で晒されてたのは知っていたが、どうやら魔法掲示板の方でも話題になっていたらしい。あのやけに派手な転移魔法のせいだろう。しかも俺のジョブが魔法士なせいで俺が使ったと思われているらしい。


「じゃあ誰がやったんですか?隣にいた人ですか?」


 グイグイ質問してくるのはいかにも魔女っぽい装備の「ユーナ」というプレイヤー。このゲームでは珍しい女性のプレイヤーであった。


 しかし俺はこの質問に答えられない。源五郎さんの情報は恐らく貴重なものだ。易易と公開するわけにはいかない。


「いやー俺達がやったわけではなくて……でも正直よくわからなくて……」


 あやふやにして誤魔化す。


「……そう、ですか」


「あっ、こっちからも質問良いですか?」


「え、あ、どうぞ」


「……魔法系のアイテムって何処に売ってます?」


 そう、俺は未だに初期装備なのである。あのときはグラパーがいたのでなんとかなったが、ソロで戦うには心許ない装備であることは間違いない。この人装備的に魔法士っぽいし、色々教えて貰いたいことがある。


「魔導書なら本屋に、装備なら装備屋にありますけど」


 至極当たり前のことを言われてしまった。聞き方が悪かったか。


「なら……オススメとかって有ります?初心者なんで全然知らなくて……」


「初心者!?」


 しまった!この街にいるやつは絶対に初心者じゃないんだった!!

ちなみに俺のレベルはハンミョウとの戦いでLv:38になっていた。嘘だろおい、レベル上がりすぎだろ。どんだけレベル高かったのアイツ。

そして第四の街にいるのはレベル帯にして35Lv〜45Lvの人達だ。よっぽど変なことが起きなければ、ここまで来るのにまず第一の町〜第三の街までを経由する。その過程である程度知識をつけるので、こんなところにLv:38の初心者がいて良いわけ無いのだ。


「あの……失礼かもしれませんが、プレイ時間をお聞きしても……?」


「プレイ時間ってどうやって見るんですか?」


 (え、知らないの……!?)


 ユーナは本当に初心者なんじゃないかと思いつつプレイ時間の確認方法を教える。


「…………右上の『プレイログ』を押せば左下にプレイ時間の項目があるはずです」


「ありがとうございます。えーと、今ニ時間四十分ですね」


 このプレイ時間は現実での経過時間を参照している。人気ゲームの廃人ならプレイ時間4000時間とかも有り得るそうだ。ひえー、一年の半分をゲームに費やす廃人……怖。


「たった160分でここまで……?」


 問題はそこではなかった。俺はRTA走者の如きスピードでこの街に来てしまったのだ。何も知らずに。


「いやー、色々あってですね」


「本当に初心者なんですか……?」


「ええ、訳あってこのとおり、装備も初期装備ですし……」


「そき装備!?」


「あ、噛んだ」


「い、いいじゃないですか!」


「ユーナさん……で良いですか? 装備的に多分魔法士なんじゃないかと思うんですけど……良ければ良い装備とか教えてもらえますか?」


「良いですけど……あ、案内します」


 ユーナにとって、()()()()()()()()()()()()()に出会うのは初めてであった。いや、殆どの人はそんな経験をしたことが無いだろう。


 道案内をしつつ、一つ目の店に着く。最初は防具店だ。


「で、どんな装備が欲しいの?」


「MPが上昇するやつ」


 店に向かう道中、面倒くさいから敬語はなし、ということになった。ゲームというものは素晴らしい。年齢に関係なく対等に会話できるのだ。


「まぁ、魔法士ならそうだよね……」


「AGIとかATKが上がっても良いんだけどな」


「いや魔法士が求めるステータスじゃなくない!?」


「良いんだよ、だって……なんでも無い」


「え、何それ」


 おっと危ない、またやらかすところだった。蜻蛉切の情報も出さないほうが良い。このゲームに考察要素があるのが個人的に確定したからな……。情報は価千金だ。


「お、これ良さそう」


【アクセル・ブーツ】

十秒間、AGI+100

十分後に再使用可能。


AGI+30


「いやだから魔法士にAGIは要らないんじゃ」


「要るもんは要る」


 なぜなら俺は杖じゃなくて槍を振り回すからな!


「あとは普通にMP上昇が付くやつでいいか」


「うん、それが普通よ」


「……というかライラック、初心者なのに買うお金あるの?」


「ふ……あるんだよなこれが」


 時は源五郎さんと別れるところまで遡る。




「君、街へ行くんだろう?まだ装備も少ないようだし、これを持っていくと良い」


 渡されたのは一つの袋。中にはみっちりと金貨(一枚10000リテス)が詰まっていて、中々に重みがある。大体八十枚くらい入っていそうだった。


「それから『グラスホッパー』、君にもだ。私が持っていても使わないし、有れば有るだけ便利だろう。持っていきな」


「「ありがとうございます」」




 かくして俺とグラパーは一気に金持ちになったのだ。

今回の買い物は……合計14800リテス。ふ、安い買い物だ……なにせ約八十万リテスあるからな、たったの2%だ。


 (そんなお金有るのに本当に初心者なの……!?)


 ユーナがこっちを怪訝な目で見てくる……やってしまったか?


 (いや、きっと初心者のフリをしてるんだ、そうに違いない)


 やってしまった気がする。ああ、攻略サイトとか見て一人でやればよかった。


 今更遅い。ライラックはユーナから見て、初心者のフリをした人になってしまったのだから。

RTA走者並みの速度で第四の街に来たLv:38の成金プレイヤー、ただし初期装備

 

これは初心者じゃないな……



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