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父 壱

「明日、お前を殺すからな。剣の準備をしておけよ」

 

 

 

 

・・・・・・・・は?

ちょ、ちょっと待て今こいつ殺すって言ったか?

ん?流石に聞き間違えだよな?

 

「なんだその顔は?早く準備しに行った方がいいんじゃないか?」

 

あ、これガチだ。

転生してから約6年付き合ってきたからか、それともこいつが山の主の首を持っていた時と同じ顔をしていたからか、何故かは分からないがそう感じた。そう感じてからのことは一切記憶になく、気づいたらいつのまにか部屋に戻っていた。

 

(いやいやいやいや、え?は?どういうこと?流石に意味分からんぞ?ちょっと詳細を聞きにいかないとまずいんじゃないか?)

 

そう思ったが、はっきり言ってもう何も考えたくなかった。

だって本気で息子を殺すとか言ってんだよ!?怖ぇじゃん!?

もうやだよ、あんなサイコパス親父の所にいくなんて!?死因が魔物とかじゃなくて実の親なんて勘弁してくれよ!?

でもなぁ、聞きに行かないとそれこそまずいしなぁ。聞きにいくしかないかぁ。

そうして重い足取りでのろのろと父さんの部屋に向かっていった。

 

「ちょっと父さん、さっきのはどういう意味?全然説明足りてないんだけど?」

 

「ん?そうか?じゃあ一応詳しく説明しておくぞ」

「まずうちの流派ではな、免許皆伝する為に一回瀕死になる必要があるんだよ。

これは祖先が見つけたんだけど、瀕死になってから回復したり、瀕死のままトレーニングを続けるとステータスが伸びやすいんだ。

俺も実際何回か死にかけてるし」

「でも俺は手加減が苦手だからさぁ、間違って殺しちゃうだろ?

流石に息子を殺しちゃうのは後味が悪いから、魔法を組んで貰ったんだよ。決められた場所の中なら誰かが一回死んでも瀕死の状態で生き帰るっていうやつ。魔法ってすごいよな」

「それで、お前ならそろそろ瀕死にした後に伸びる位の実力はあると思って明日やることにしたんだ、別に死にかけないでも免許皆伝できる程実力があったらいいんだけどなぁ、ないだろ?というかあっても強くする為にいつかはやるし。あ、一応手加減はするからな安心しとけよ」

 

 

 

 

 

 

はぁーーーーーーーーー(クソデカため息)

 

 

この武術狂いサイコパスマジでやりやがった!なんで自力で覚醒の方法見つけてんだよ!?

確かに原作でも死にかけの状態で鍛えるとキャラが急激に強くなる『覚醒』の仕様はあったよ!?

でも、それは敵との闘いで主人公達が死にかけて気づいたやつなんよ.....!

原作でも隠し要素になっていて、本気で負けイベに勝ちにいった人しか気づけないようになってたのに!?なんで!?先祖はなんなんだよ!?

というか何でそれで父さんは原作に出てこなかったの!?おかしいって!?

それに俺は言ったよ!確かに、強くなりたいって!

でも死なない為なんだよ....いくら生き返るっていっても死にたくないって!

 

そんな俺の心境に全く気づかない様子で父さんは、声をかけた。

 

「じゃ、明日の朝に命天山にこいよ。あと、全力で抵抗しないと意味ないからなぁ」

 

俺、本当に明日生き残るかなぁ.....

 

 

 

 

 

 

 

<翌朝>

まじで一睡も出来なかった、一応夜通し考えて作戦は練ってきたけどどうすんだこれ。正直死ぬ気しかせんぞ。

いや、実際には死なないし強くなるから結局得しかないのは分かる。分かるけどさぁ..!

そんな簡単に人間割り切れん!だって痛いのはいやだし!死にたくもねぇよ!なんなんだよこのサイコパス武術家系は!?

 

はぁ...まじでやりたくないなぁ。

でも、まぁ仕方ないかぁ、死なないから実質力試しみたいな物だし。

主人公パーティに入る時も強さを示す必要があるから、これはあくまでそのリハーサルだと思うことにしよう。そうしよう。

命が掛かってるていうのも一緒だし。まぁ父さんに殺られるか、あの主人公君好き好き狂人に殺られるかの違いはあるけど。

 

「おーい、じゃあそろそろ始めるぞー、10分だけ待ってやるからな、何をしてもいいぞ。全力で殺しにこいよぉ、まぁ殺せないだろうけど。じゃあよーいスタート」

 

開始の合図と共に山の中に向かって全力で駆け出す。

まずは、自分が何を目標にするかを再確認しておく。

今回の俺の目標は2つ。

一つ目は『父さんに実力を認めさせること』

二つ目は『ステータスを伸ばすこと』

 

二つ目は元々父さんが言ってた理屈でステータスを伸ばすという意味だ。まぁこれは本気でやってたらいつのまにか達成してるだろうし、そこまで重要視はしていない。

 

俺が重要視しているのは、一つ目だ。

昨日の晩に父さんが言ってたことを考えると、おそらくこの山では今どちらが死んでも蘇る。つまりお父さんが死んでも問題無いということだ。

なら父さんを一度殺せば流石に実力を認めてもらえ、瀕死にするのは無しで免許皆伝となるのでは?というのがまぁ大体一つ目だ。

あと、これは自分でも驚いてることだが、実は人を殺そうとしていることにあまり忌避感を感じていないっぽい。

っぽいと言ったのには理由があり、理性的な部分では間違いなく駄目だと思っているんだが、異世界の体に引きずられているのかどうしても忌避感を持つことができないからだ。

まぁどうせあんなチートは殺せないだろうし、正直この計画は力こそ入れているものの、駄目もとで考えた策だ。

傷つけられたら万々歳という所だろう。

 

 

そうして走りながら、目標の振り返りをしていると、ついに、作戦を成功させるために探していた大木のもとへと辿り着いた。

 

「よし、頼むぞ。お前が俺の作戦の要だからな。」

 

こうして父殺害計画は開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、もう十分経ったからいくぞー」

そんな父の声が聞こえると同時に、かなり遠くに見える木が爆速で倒れていってるのがみえた。それに付随する音も聞こえてくる。

 

(こ、怖!思ったよりエグい移動方法なんだけど!あんな力で殴られたらひとたまりもないわ!)

だがそう思いながらも、全く体は動かさず居合の体制を保っていた。

居合を構えている周囲の半径2m以内には木が一切なく、少年の手によって刈り取られており、斬られた大木は少し遠くに捨てられている。

 

(まずはこれが一つ目の作戦。この半径2mを間合に絞ることであの化け物の速度にも対応できるようにした。速いのは分かってたからな。できるかは正直やってみんことには分からないんだけど。まぁこの後集中モードに入っても無理ならその時点で駄目だし割り切るしかねぇや。)

 

そう考えている間にも、崩れていく景色と爆速は近づいてきており、あと100m程の猶予もないように見えた。

 

(これで手加減してるんだから怖ぇよ。でも、よし、ここまでは予想外の動きは無いな。このまま予想通り真っ直ぐ突っ込んでくるだろうからそこが勝負だ)

 

そう思い、頭を切り替える。人間との殺し合い、ましてや父親が相手など初の経験だったが不思議と頭は冷えていた。

 

 

 

少年は深呼吸をした。

数年間の武術の修行で身についたルーティンであった。

 

 

余計な思考を削ぎ落とす。

 

 

相手を殺すことのみに思考を廻す。

 

 

眼光が鋭くなり、身に纏う空気が変わった。

 

 

木の倒れる音も今は聞こえない。

 

 

これは、決して特別なものではない。

武を志す者なら通ることのできる地点であった。

 

 

だが、確かで鋭利な殺気をこの少年は放っていた。

 

 

気配が迫ってくる。

 

 

50m

 

 

30m

 

 

20m

 

 

10m

 

 

5m

 

 

 

 

 

そしてついに少年の間合へと足を踏み入れた。

 

 

(今!!!)

 

少年は抜刀した。

 

それは転生してからの人生で最も速く、鋭く、綺麗な居合であったといえるだろう。

 

ステータスを超えた斬撃、これまでの苦行の成果がそこにはあった。

 

 

 

 

 

だが、それでも武芸を極めた者には届かなかった。

 

当たり前といえば当たり前だろう。少年よりも才能があり、少年よりも苦行を続けてきたのだから。例え、手を抜いていても避けることができる、それ程の強さを持っていた。

 

父は完璧なはずの居合を、速度を落とさずに半歩下がることにより躱した。

 

「こんなに伸びていたのか、凄いな。正直舐めていたよ」

 

そう称賛しつつ、速度を前に向けて、殺す為に、だがあくまで手加減は忘れずに殴りかかった。

 

 

 

 

 

(.....ここだ!)

 

が、極度の集中状態にあった少年はその拳撃を紙一重で避けきった。

鳩尾目掛けた打撃をほぼ後ろに倒れ込みながら避けることで、なんとか喰らうことを防いだのだ。

先程の武の極みの回避とは違う、はっきりいって運任せの回避だった。

だが避ける事ができた。

少年にとってはそれが何よりも大事なことだったのだ。

 

(だがニ度目は無い)

そう思いながら父はニ撃目を放った。

確かに大勢を崩した状態ではこれ以上躱すことはできないだろう。

 

だがそれでも構わない。

そう言わんばかりに体制を整えようとしながら、勝利の笑みを浮かべる少年。

 

 

そして、さっきまで少年が立っていた場所からは

捨てていたはずの大木が飛んできていた。

 

 

 

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