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男子寮の自室で影城はテレビを見ていた
『アメリカは今後軍事目的で開発された98(ナインエイト)を・・・』
「いやな話だよな~どこのチャンネルも地球に侵略してきた異世界人との戦争の話ばっか、昼やってる幼児アニメくらいしかアニメはやってないんだ」
今日影城に学園内を案内してくれた徹鎖琢磨だ。クラス委員長なので自分に案内させてくれという熱い申し出を断るのもなんなので頼んだのだがいつの間にやら影城の部屋に上がりこんできた
「アニメはいいもんだよ、見ていると疲れた心が洗い流されていく。僕が子供の頃に観ていたブレイブワールドなんて今でも内容を詳細に覚えているくらいだ」
「じゃあ今は幼児向けのアニメを観ているのか?」
影城の質問に徹鎖はうぐっとにぶい声を上げる
「仕方ないだろう!僕にとってアニメは癒し、生きる糧なんだ!だが幼児向けを今観てもなかなかに見応えがある・・・」
このままアニメ語りを聞いていてもいいのだが今日いろいろありすぎたので思いのほか疲れている影城は気になる点だけ聞いてみた
「お前の部屋にはテレビはないのか?」
「ないさ、僕は筆記試験では高順位だが能力の方は控えめでね、運動神経も悪いから学年順位も平凡で5位までにしか進呈されないテレビはおろか部屋も2人部屋なんだ」
どうやら恋火が特製プリンを気にしていたようにこの学園での順位はそのまま本人のやる気に繋がるように作られているようだ
「1位と2位の生徒について聞きたい」
「そうだなぁ1位については謎が多いんだ。君も見ただろう、特級クラスには2つの空席があった。1つは君でもう1つが誰も名前を知らない、1度だけ教室に来たんだけどどこにでもいるような女の子で特徴がなく、顔もみんなすぐに忘れてしまったんだ・・・。謎多き女子生徒だよ。2位は刀堂新っていう元気が取柄な、こちらも女の子だよ。運動神経はいいんだけど恋火ちゃんや龍宮寺君ほど並外れた存在じゃないね。」
ここで1つと徹鎖はこういう話をする
能力を用いた戦術には、格闘、魔法、変身、贈り物、破壊と5つの戦術がある
格闘戦術は肉弾戦で戦うインファイターや相手のタゲを取るタンクのように戦う、恋火や影城がこういうパターンだ
魔法戦術は遠距離に適した能力で乱戦になれば格闘戦術を使う仲間に守ってもらい炎や雷などの能力を正確に、時には巨大な一撃を放つものもある
変身戦術は主に異世界のモンスターに変身しステータスを向上させたり仲間や敵に変身する騙し討ちを得意とする
贈り物戦術は能力を秘めたアイテムを使い武器や本に仕込んで戦うのが一般的となっているため無能力者が使えたり能力者が自分の能力を使いながらギフトの能力を同時に使うなどができる
破壊戦術は使える能力者が少なく、たとえ使えたとしても能力者自身が死んだり壮絶な反動で身体がボロボロになったり死んだも同然の身体になったりする
座学での授業で言ってたんだけど、と徹鎖は言い
「その中で刀堂さんは贈り物戦術の能力を使えるらしい。彼女自身には能力は発現していないみたいだけど先祖代々伝わる家宝の日本刀に能力が込められていて彼女はその扱いを継承したギフトアーツの使い手らしいんだ」
「無能力者でも学園に入学しているのか。そういえばそんなことを聞いた覚えがある」
地獄の特訓の最中に姉から聞いた話がもやもやと思い出されてきた
「それにしても今日の恋火ちゃんはいつになく元気だったな。まるで新しいおもちゃを与えられた5歳児みたいだった」
「明日からは普通に接してくれたらいいんだが・・・あいつの経歴についてもなにか知っているのか?」
ふーむと徹鎖はうなりながら少し考え、
「ここに入学する前、中学生の頃に付き合っていた人がいたみたいなんだ。小耳に挟んだのを僕の推論から語るにその彼氏も恋火ちゃんの粗暴に参っちゃって入学と同時に縁を切っちゃったんだと思うよ」
「彼氏のいなくなった寂しさから余計に言動が荒いのかもしれないな」
「ここに来てなにより至福のプリンが取られたのもあって今日はバーサーカーみたいだったね。さながらツンデレバーサーカーだよ」
「デレてないと思うが」
「いーや彼女は照れ屋さんだからね、噛みつかれてもいけないから普段は誰もいじらないけど人懐っこい一面もあるんだよ」
そういうものかと思いつつ今日はそろそろ眠くなってきたので徹鎖にはお帰りいただく
明日からの授業や恋火の狂犬ぷりに溜め息を漏らしつつ眠りについたのだった