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~保健室~
「能力を使いすぎたことにより体力を消耗していますね」
アルバートから保健室へ連れて行くように言われた影城は「どうして俺が…」と言いながらもそれを了解した
「今は眠らせておいてあげてください、それにしても影城君はなんともないんですか?」
保健医のアルヴェーヌが影城を気遣う
「大丈夫です。能力はほんの少ししか使っていないので」
アルヴェーヌはおっとりした20代前半の見た目をしている。銀髪に青い目をした美女で渚よりも大人の色気がある
「ふふ、でもすごいです。上級生でも鋼殻壁の技を使える人はそんなにいないのに」
「小さい頃から姉に鍛えられたんです。鉄の能力は鎧に変化し、技もいくつか覚えました」
「すごいお姉さんなのね。それに鎧の能力まで」
保健医はおもむろにアルカリの肩に触り指で線をなぞる
「鎧の能力者は頑丈な身体の持ち主、お姉さんにはとても厳しい訓練を強いられたんでしょう・・・デバイスを回収され再び抑制された身体からでもわかる洗練された筋肉、はぁすばらしいわね・・・それに鎧の能力者は現在この学園にあなたしかいません。実戦での戦闘に駆り出される日も近いかもしれませんね」
優しい手つきについ青少年らしいドキドキした感情が込み上げてくる
「あと少しだったのに・・・」
それが恋火の寝言によって我に返る
「プリン…プリンプリンプリンプリンプリンプリン」
「お、起きてるのか?」
「プリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリンプリン無理ン!!!」
そして恋火はカッと目を見開く
「今度は勝ってやる」
まだ寝ぼけているのか髪をわしゃわしゃしながら恋火は保健室を出て行った
「あらあら好かれちゃったわね」
クスクス笑う保健医の笑顔を横目に影城は呆然とした表情をしていた
~女子寮・談話室~
談話室には恋火、渚に加え複数の女子たちが思い思いの女子トークに花を咲かせていた
「ねぇねぇ今日あった模擬戦闘での話を聞かせてほしいっす!」
ポニーテールの元気っ子、刀堂新が新しい話題を振る。他の女子も興味津々だ
「あーそれね、まぁまぁの試合だったわ」
「試合の話なんかどうでもいいんすよ!相手のことを聞きたいんす!」
相手、とは影城のことだろうか
「プリン泥棒くらいにしか思っていないわ、今日は途中で眠くなっちゃったけど次の戦闘では負かしてやるわ」
その言葉に一同は静まり返ったがそれも一瞬のことで誰からともなく笑いだしていた
「ちょ、ちょー!そんなこと聞きたいんじゃないっすよ、今日の恋ちゃんずっと新入生のことばっかりっす。ぷくく・・・授業もうわの空で影城さんのこととプリンのことばっか!」
新は腹を抱えながら一番盛大に笑っている
「恋火ってさぁ影城のこと好きすぎじゃね?今日だけでどんだけ好きになってんのよwww」
「あまりに影城様の話ばかりするものですから彼氏をお乗り換えされたものかと思いましたわ」
「ワタシは神路木姉の尻軽さに呆れてものも言えんゾ!出会って1日でカップル成立など!」
口火を切った新に続いて他の女子たちも恋火をいじる。こういうところでしか普段ムスッとした恋火をいじり辛いのだ
「は、はぁー!!?誰があんな存在薄い男のことを…~~~っ///もう寝る」
恋火は完全にヘソを曲げてしまった。みんなの笑い声を背に自室へと引っ込む
「こーら、あなたたち!あんまり恋火ちゃんをいじらないの」
「渚もさぁ、姉離れそろそろしなさいよ~」
「渚様は恋火様に執心しすぎですわ」
「ムム、そういうやつカ?お主らと国が違うからわからんかったが姉妹での百合、というやつか?フーム」
「もーう誰がお姉ちゃん大好きっ子よ、までもお姉ちゃんは好きだけど~」