マイナス7体目 東智恵
5月5日。
オレは智恵さんの手伝いで駆り出されていた。
両親が児童養護施設の経営をしているらしく、必要な買い出しに人手が必要だったのだ。
「付き合わせちゃってごめんね」
「普段世話になってばかりで返し足りないぐらいだし、このぐらい全然!」
春休みに全員レベル21を超えたオレたちは、新人の期間を終えることになった。
しかし師弟関係は終わっても、それ以外の関係は続いている。
ついこのあいだも智恵さんに、こどもの日にやる行事に誘われた。
参加するからには、手伝わないわけにもいくまい。
ちなみにオレのレベルは21のままだ。
≪分身≫の獲得を目指し、この四半期を費やした。
初期は覚えるのに必要なSPは5だった。
現在は形になってからさらに鍛え、レベル2にまで至った。
次の強化に必要なSPは1。
レベル2では見た目だけなら自身の分身を作ることは可能。
だが動かすのは難しいといった感じだ。
「みんなおまたせー! 小並塔也君に、絆地のぞみさんだよ!」
施設に着くと、様々な種族の子が出迎えてくれた。
全員ハーフやクォーターらしい。
動物的特徴が耳や尻尾にしか出ていない子ばかりだ。
若干1名に気を引かれたのは、オレが猫好きだからだろう。
やはりというべきか、日本在住数ランキング上位所属のハーフが多い。
正式な種族名はなんだったか。
特に鳥に近い者は種族数も多く、複数に別れていたはずだ。
種族名を間違えると怒る者も多いらしい。
この場に居る者は、鳥、犬、猫、馬、狸の特徴を持っている。
惜しくも上位4位までは居るのに、ランキング5位のペンギンが居ない。
エルフやドワーフなどの妖精や精霊に近い種族は在籍していないようだ。
日本では希少な種族なので、魔塔内部以外ではなかなかお目にかかれない。
「お兄ちゃんも冒険者なんだよね!」
「ん? ああそうだよ。まだ1年経ってない新人だけどな」
「わぁ! ぶき見せて! ぶき!!」
「はは……。悪いけど、危ないから許可されてないんだ」
「えぇー!! いいじゃん! みーせーてー! けーんー!」
小学生低学年ぐらいの男の子たちが縋り付いてきた。
のぞみの方には女の子たちが集まっている。
騒々しくて頭が痛くなりそうだ。
「こらこら。あまりお兄ちゃんたちを困らせちゃダメだぞぉ? ほらみんなー。こっちに集まって!」
目線を智恵さんに贈ると、助け舟を出してくれた。
子供たちは素直に集まっていく。
小学生といえば知らない人が来たら暴走しがちなイメージがあるが、とても慕われているのが解かる。
日が暮れ始め、たまたま智恵さんと2人きりになった。
せっかくなので、気になることを訊ねてみる。
「そういえば智恵さんって、塔の頂上を目指してるんだっけ?」
「うん。そうだよ。100層って意味じゃなくて、地下の誰も到達したことない方ね」
「ボス戦に挑むだけでも危険なのに、100階層の試練とか地下にも挑む気なんだ……」
100階層には、他の階層より厳しい試練が待ち受けている。
試練にはパーティーで挑むこともできない。
個人に合わせギリギリの難易度にしてくるから、安全マージンも取れない。
「やっぱおかしいって思う? 親だけじゃなくて、心配してくれる子がいっぱい居るのにって……」
「そりゃあ、まあ……」
地下に挑む者は、多かれ少なかれ頭のネジが飛んでいるものだ。
理由は様々だろうが、何かしらの目的がない者が目指す場所ではない。
「そこに何か大切なものがある気がするんだ。だからどれだけ危険でも、頂上に辿り着きたい。なんでそう想うのかは自分でも解からないんだけどね」
それが何か解かりすらしないのに、命まで掛けるという。
オレも不思議な夢の件があるから、魔塔の頂上は気になる。
しかし命を掛けようとは思わない。
平均より高いぐらいの階層で、安定した生活を送れたら十分満足だ。
「できれば塔也君たちと目指したいところだけどね~。割り込むのも悪いし遠慮しておこうかな……」
「…………5人だと、ボス戦とかが面倒だからな」
オレは誤魔化した。
割り込むというのが、のぞみとオレに対して言っているのは分かる。
だが、それを認められる度胸は無い。
「ふーん? まあいいけどね。そういうつもりなら」
宣言しながら、智恵さんはオレの肩を掴みつつ後ろに回り込んできた。
そのまま両手を前に回し引き寄せてくる。
「こういう風にアタックするのも構わないよね。塔也君、誰かと付き合ってるわけじゃないみたいだし」
「ちょ……。冗談はやめてくださいよ」
つい敬語に戻ってしまうぐらい動揺した。
確かにこの1年近くで、仲良くさせてもらいはした。
でもここまで好意を寄せられているとは思いもしなかった。
智恵さんは気分屋なところがあるから、冗談のようなものだと思いたい。
「……はははっ。やっぱバレちゃったかぁ。でも同じパーティーになりたい思ってるのは本当だからね。無理にとは言わないけど、覚えといて」
「……考えておくよ」
パーティーを組めたらきっと楽しいのだろう。
5人以上のパーティーは上を目指すなら大変だが、無いわけじゃない。
もう少し上の階層に進みクマ―や清川とのパーティーが続いていたら、5人パーティーを提案してみるのも良いかもしれない。
―キャラクター紹介⑤―(1体目の時点)
久野 真冬 冒険者名:クマー 隠し名:北村 優希
髪:黒 (ぼさぼさ)
目:黒
年齢:19歳(この話時点で15歳)
誕生日:4月1日
身長:164cm(この話時点で158cmぐらい)
体重:39kg前後(この話時点で43kg前後)
一人称:ボク
武器使用頻度:釘・死体・言葉(この話時点では釘と言葉のみ)
夢:巨乳の金髪美女と付き合うこと
行動理念:人の嫌がることを進んでやる(良い意味でも悪い意味でも)
性格:・いいかげん・皮肉屋・お喋り
趣味:ゲーム(主に恋愛シュミレーション)・読書(主に少年漫画)
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履歴
性格が災いして幼い頃から友達はほとんどいなかった。
小学校は小並塔也と別のところに進み、唯一の友達は野良の子猫となる。
しかし年月が経過したある時、何者かによって袋に詰められた猫が釘などで滅多刺しにされ、死亡していた。
そこから彼は、■■■■■■■だした。