マイナス6体目 200年前の伝説
「こんにちは。よく会いますね」
オレが高校生になればレイナは後輩になる。
頻繁に会えば仲良くもなるものだ。
「なんの本を見てるんだ?」
「200年前の伝説に残ってる話を、その仲間目線で綴られた本です」
「ふーん。伝説って?」
歴史は苦手な教科だ。
200年前何があったのかは知らない。
「勇者と魔王の戦いです。200年前にあった有名な話で……こっちの本を見れば詳しく分かりますよ」
読んでいるのとは別の本を差し出してきた。
上下2巻のそこそこ読み応えがありそうな小説だ。
読み切ろうとしたら、今日中には終わらないだろう。
突き返すのも悪いので、軽く読んでみた。
内容は思った以上に面白い。
続きが気になるが、時間がない。
区切りのついたところで一旦読むのをやめる。
「貸し出しは……できるな。これ持ち帰っても平気?」
「はい。私はもう読み終えてるので」
本は家で読むことにして、能力の参考になりそうな本を探す。
そして本を見繕っている途中でのこと。
レイナがギリギリ届かない位置の本を取ろうとしているのを見かけた。
「届かないな」
「そうですね……」
「じゃあ抱えるから、そのあいだに取って」
「え? あっ……」
オレは後先考えず、レイナの両脇に手を入れて持ち上げてしまう。
以前のぞみにやったことがあるから、深く考えていなかった。
相手によっては、殴られても文句は言えない行為だ。
「……どうした?」
案の定、レイナは固まってしまった。
レベルに合わせて筋力も上がっているから、持っているのは辛くない。
しかし突然、レイナの重心が後ろに倒れてるように移動した。
咄嗟に片足を後ろに下げてバランスを取る。
「うわっと……危な……。大丈夫かレイ――」
「ぶふっ」
「はぁ!!?」
レイナが吐血した。
手で口と鼻を押さえていたため、鼻から溢れた血を口から吐き出したようだ。
オレは事態が飲み込めずしばらく混乱。
少ししてからセクハラ染みた行為をしてしまったことに気付き、謝罪した。
「ご、ごめん。悪かった。急に触るのはないよな」
「い……いいえ。寧ろご褒美……」
「え? なんて言った?」
後半、声が小さくなり聞き取れなかった。
「な、なんでもありません! 大丈……」
急に起き上がるものだから、レイナはふらつく。
そのまま背中から地面に頭突きしそうだ。
オレは慌ててレイナを抱え、衝突を防ぐ。
「ふらついてるし、大丈夫じゃないだろ」
「な……ならしばらく、膝枕してください。30分……1時間もすれば、落ち着くと思うので」
「まぁ……それでいいなら。場所だけ少し移動するか」
周りからの目線が痛い。
先ほどから、騒がしいなという目線はあった。
この場で膝枕などしようものなら、何を言われるか分かったものではない。
オレはレイナをお姫様抱っこにし、休める場所に移動してから任務を遂行した。
服などについた血の汚れに関しては問題ない。
レイナが清潔にする魔法を使えたようで、元通り綺麗にされた。
そのまま満足いくまで枕にされ続け、日が暮れた。
選んだ本は時間もないので持ち帰る。
後日、鍛え上げる能力を決めた。
特殊能力に分類される、分身能力だ。
一応確定する前に、智恵さんに相談する。
「――って感じにしようかと」
「分身かぁ……。でも虚像のは、扱いが難しいよ? 実体を持たせるのも大変で操作も難しい。その上燃費も悪いって聞くし」
「並列処理は得意だし、平気かなって……」
魔法にも興味はそそられたが、分身を選んだ理由はいくつかある。
真っ当に鍛えれば、一流に至れる可能性すらある。
しかし、一流を超えることは不可能だろう。
単純に経験を積むだけでは、常識外な才能のある者には勝てない。
「それに、のぞみとの相性も良いし」
分身を前衛に出し囮にすれば、誤射を気にする必要がなくなる。
能力が安定したら、オレも魔法で後ろから攻めればいい。
実体の数を増やせれば、応用力もかなり高まるはずだ。
なにより、安全度が桁違いに上がる。
伝承に残る武道家も、分身を3体生み出し戦っていたという。
オレも並列処理は4つ同時にできなくもない。
魔法を同時に使用するのは難しいだろうが、役割を分担すれば十分活躍できる。
「ボクも賛成! ボクや清ちゃんも防御を捨てたような戦闘スタイルだし、壁役ができるのは助かるからね。清ちゃんも賛成だよね!」
「ああ! 勿論だ! これまでできなかった危険な実験も、分身にやってもらえば安全だしな!」
合同訓練をしているため、今日はクマーと清川も居る。
普段から危険なことを繰り返す清川には、後で物申すことにした。
盾役は清川が受け持ってくれているが、本職ではない。
だから捨て身な行動に出ることも多い。
計算ずくだから心配ないとは言うが、近くに居る身からしたら恐ろしいことこの上ない。
それでも危険物の取扱など、資格は取ってあるというから侮れない。
お前本当に中学生かと聞きたくなるレベルで、清川は頭が良いのだ。
頭の悪いことをするのが玉に瑕だが……。
「私も、塔也君が考えて出した答えなら賛成」
「考えあってのことなら否定はしないけど、SPを使うなら考えて使いなよ? それこそ取返しがつかないからさ」
のぞみからの賛成も得れたので、臨時のパーティーでは満場一致だ。
智恵さんの言うように、自力で鍛えるだけなら使った時間や労力を失うだけで済む。
他の能力を覚えようとして悪影響が出ないとも限らないが、大体の場合は問題ない。
しかしSPを使ってしまえば、レベルを上げるのが難しくなりかねない。
それはレベルが低ければ低いほど、大きな影響となる。
SPを使う時は、よく考えてから使わねばならない。
―キャラクター紹介④―(1体目の時点)
清川 幸助 冒険者名(動画投稿名):ああああ。
髪:黒(若干灰色っぽい)
目:金色の若干たれ目
年齢:19歳(現14歳)
誕生日:12月24日
身長:187cm(現178cmぐらい)
体重:82kg前後(現73kg前後)
一人称:俺・我
武器使用頻度:義手義足(現在:自作の品・肉体)
目標:登録者数100万人突破
夢:タイムマシン作成
行動理念:面白そうなことに全力を出す
性格:ロマンチスト・マイペース・理屈屋・気分屋
趣味:動画投稿・科学・研究・読書
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履歴……?
本人曰く、次元を超えし者であり、天からの声を受けし者。
いずれは森羅万象を解き明かし、時すらも超越させる者。
自称、未来を切り開くカオスサイエンティスト。