マイナス5体目 レベル21
顔合わせが終わった後は別行動となった。
パーティーを組むことに関しては一時保留。
それぞれに、担当になってくれている先輩がいるからだ。
それに10階層のボスはレベル21以上の4人で挑むという、暗黙のルールがある。
条件を満たすまでは、時々連携の練習をすることになった。
本格的にパーティーを組むかは、10階層を突破したらまた話し合う。
そして、あっというまに月日が経過した。
時には清川の撮影を見学した。
クマーもよく遊びに誘ってきた。
赤城さんを含め5人でよく出かけたものだ。
1人だけ男女ペアから外されるのが不服なようで、クマーはしょっちゅうナンパをしていた。
ただし、その全てに撃沈していたが……。
下心を隠さず全開でセクハラ紛いのナンパをするから、断られるのも無理はない。
一度のぞみにも、遠慮せず言ったことがある。
「のぞみちゃん。今日履いているパンツは何色? お出かけだからまさかの勝負パンツだったりして! 勝負パンツはどんなのを用意してるの? ボクの好みはセクシーなやつだけど、のぞみちゃんなら純白だとか薄いピンクとか似合いそうだよね!」
などとのたまったので、その時は強めに叩かせてもらった。
放置すればそのまま言い続けそうな勢いだった。
のぞみが明らかに困った様子だったので、力ずくで止めたのは当然の処置だ。
その際、また言うようなら真面目に縁を切らせてもらうと宣言した。
それからは、のぞみと赤城さんにセクハラ発言をほとんどしなくなった。
クマーにも悪気があるわけではないらしい。
ただ口が緩く、本心を隠そうとしないだけ。
しっかりと忠告しておけば、仲間の嫌がることはしない……はずだ。
オレ自身もそうだが、こうも癖の強い者が集まったのだ。
トラブルは後を絶えなかった。
それでも大きな問題に発展しなかったのは、不幸中の幸いか。
本当に、体がいくつあっても足りないと何度思ったことか。
だが忙しくも、楽しい日々だった。
年を越し3学期に入った頃。
オレは一足早く、レベル21になった。
現在それぞのレベルは、のぞみが17。
清川が18で、クマーは元々21越えだ。
現在は独自の能力を鍛え上げていて、レベルは23だと言っていた。
のぞみより早く至れた理由は複数ある。
オレには魔法の才能があったらしく、魔力がどんどん上がった。
精神力に無理が出ない程度に酷使し続けた結果、経験値が多く入り込んできたのだ。
後は毎週土日に冒険者活動をしていては、休みがない。
オレは基本的に活動していたが、のぞみは友達と遊びに行ったりなども時々していた。
その差があった分早かったわけだ。
急いで上層を目指しているわけではないから、遅くても文句を言う者はいない。
そしてオレは、ギルドの受付に来ていた。
担当してくれるのは金髪の猫耳を生やした女性。
毎週複数回会う相手なので、この半年で名前も覚えてしまった。
クマーが何度も誘っている相手だ。
業務上慣れているのか、毎回軽くあしらわれている。
「確認しました。冒険者カードはお返しします。上限の解放おめでとうございます。トウヤさんの今後のご活躍を、心よりお祈りさせていただきます」
「ありがとうございました」
貯まっているSPは、1度目はギルドでしか使えない。
たった今SP20を使用し、機能の解放とレベル条件の解除が行われた。
これで今後は、冒険者カードからでもSPを使用できる。
冒険者は、殺傷能力のある強力な武器を持つようなものだ。
なので国にデータを提供しなければならない。
これからは定期的に冒険者カードのデータを提供する必要がある。
機能を解放したことにより、画面に記載されている内容が増えた。
覚えた能力がステータスなどに追記されるのはこれまで通り。
それ以外に覚えられるものも、記されるようになった。
僅かでも覚えられる可能性があれば、カードに出てくるようだ。
しかし苦手な能力や技術だと、必要SPも増えるらしい。
たとえば、オレは土や水の魔法はほぼ使えない。
それをレベル1にするのにも、土ならSP3が必要。
水ならSP5が必要と、差がある。
覚えたい属性の訓練を重ねれば、必要SPも減らせる。
苦手なものを伸ばすのは苦労するので、長所を伸ばすのが基本だ。
種類が膨大なため、画面を整理する必要がありそうだ。
必要SPが多い、覚えさせる気がないだろうというものは除外させてもらう。
何を鍛え上げるかは重要な分岐点になる。
自身の資質と相談しつつ、これだと思える能力を見つけ出さねばならない。
日数を掛けて候補を10にまで絞った。
ネットの情報だけでは心もとない。
残りは図書館で詳細を調べてから決定する。
第一候補は、魔法を使いつつ接近戦もこなす魔法戦士。
第二候補は魔法オンリーで極めていく純魔法使い。
第三候補は、特殊能力を鍛えていくパターンだ。
ちなみに特殊能力は千差万別なので、職業で括りにくい。
分類的には大きく分けて3種類ある。
まず魔法に性質が近い、≪精神力≫を使って超常現象を起こすタイプ。
次に、≪生命力≫を使ったタイプ。
これは物理的な傾向になることが多い。
そして最後に、両方を使う複雑奇怪なタイプ。
特殊能力は個人の性質に大きく影響を受けるため、才能が必要不可欠だ。
どの本を手に取るか吟味していると、見知った相手を発見した。
「こんにちは。今日も来てたんだ」
≪西寺 怜奈≫。
初めてこの図書館に訪れた際、お勧めの本を教えてくれた子だ。
あれからも幾度となく図書館に訪れては遭遇して、話し合ううちに仲良くなった。
歳と学年は1つ下らしい。
―キャラクター紹介③―(1体目の時点)
東 智恵 冒険者名:智恵
髪:ロング、薔薇色
目:オレンジ
年齢:--
血筋:1/4ロシア、3/4日本人
誕生日:10月31日
身長:157cm
体重:43kg
一人称:私
使用武器:細剣
夢:塔の頂上へ共に至りたかった
行動理念:自分を好感を持ってくれてる人に答える・気分次第
性格:勇敢・苦労人・気分屋
趣味:自分磨き(他者から見える細かい仕草なども気を使っている)
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履歴
ハーフやクォーターを集めている児童養護施設を経営する両親を小さい頃から見て育った。
自身も人の役に立てるような職業に付きたいと思い、学生時代より冒険者となる。
やや特殊な児童養護施設ということもあり、得た賃金は家計の足しにしてもらっていた。
高校を卒業し学業を終えた智恵は、ギルドから新人育成の依頼をされた。
施設の子たちからは、憧れの存在になっているらしい。