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42体目 お姫様と王子様

 オレは後ろ盾に、自衛隊とスイカの故郷の国の両方を選ぶ。

 赤咲さんとセレナさんを通して案を出す予定だ。


 レベル不足なので、まだ準備を進めるだけだ。

 外堀を埋めることから始める。

 動くと決めてから、セレナさんについて聞かされる。

 セレナさんのことは相当なお嬢様だと考えていた。

 それでも国のお姫様と聞いた時は、関わりたくないという考えがオレの頭の中を埋め尽くした。


 聞かなかったことにしたい。

 しかし1度聞いてしまったからには、無しにはできない。

 普段は身分を隠し冒険者活動をしているという。

 そんなことさせるなよと心底思った。


 オレに話す時も本人に確認を取ってから明かした程度には隠している。

 これだけでも目を付けられたのは確定した。

 ただでさえ地下界からのイレギュラーゲートの件もあるのに、別の問題まで発生したわけだ。

 面倒ではあるが、将来を見越した場合やらないわけにもいかないのが辛い。


 ゲートの件については、詳しく話すということで会う約束をしている。

 この時に初めて、クマーがここ数日を不在にしていたことを知った。

 オレが500階層ボスを攻略して510階層までの挑戦権を得た翌日に、地下界へと旅立っていたようだ。

 後から聞いた話によると、相当厳しい旅路(たびじ)で、数日でレベルが大きく上がったと言っていた。



 オレは出会い頭に今回のイレギュラーゲートはクマーが原因ではないかと問いただす。

 大袈裟な態度で否定していたのはわざとらしかったが、嘘ではなさそうだ。

 クマーは別の世界線で友好関係を築けた、地下界のとある国に協力を求めに行ったのだとか。


 地下界への移動自体は、魔塔のシステムを使えば容易らしい。

 天上界に気付かれると不味いから、これも内緒だ。


 肝心のイレギュラーゲートの件については、その国の者が答えてくれると言う。

 待っているという部屋の扉を開くと、何者かが頭から突撃してきた。


「xxx――! xxx!!」


 (きら)びやかなプラチナブロンドを持つこの子が何を言っているのか理解できない。

 言語が分からないのではなく、謎の自主規制音に阻まれている感じだ。


「??? どういうことだ……?」

「ボクにも分からないよ。なにせ、これまで見たことがない子たちだからね」


 クマーは今、「たち」と言った。

 つまりこの15歳前後と思われる女の子とは別に、誰か居るということだ。

 それについても気になったが、もう1つ驚いたことがある。


「……? 天使の翼か……? これ?」


 地下界の者ではないのか。

 なぜ天使(仮)がここに居るのか。

 そんな疑問が次々と出てくる。

 以前見た天使長のような豪快な翼は無い。

 髪の毛に(おお)い隠されそうなサイズだ。


「天使と言っても落ちこぼれのハーフだがな」

「んま! 失礼な!! 私はxxxって、なんでxxまでフィルターかかっちゃうのー!?」


 部屋の奥から黒髪の男の子が歩いて来つつ説明してくれた。

 聞き取れなかったわけではなく、発言に対し何かしらの制限があったようだ。


「フィルターって?」

「気にするな。そいつはアホだから制限を厳しくされているだけだ。オレ様はxxx……名前もダメか」

「えー! なんでアー君だけxxxの!?」


 名前はダメだが、あだ名ならば平気らしい。

 男の子の方の年齢は13歳前後に見える。

 しかしドーレという例もある。

 天使や悪魔は、外見での年齢判別はできなさそうだ。


「アー君か。よろしくな」

「アー君はやめろ。オレ様は≪ドラム王国≫の王子だぞ!」


 やめろと言われても、名前が分からねば無理だ。

 こういうタイプの子は仮に見た目から呼び方を決めても、文句を言うに違いない。

 強く拒否されない限りはアー君呼びを続けさせてもらう。


「アー君はxxxでxxx…………」


 話したいことを話せないからか、天子の子は目に涙を浮かべた。

 そのまま鼻水でオレの服をぐちゃぐちゃにしてくるから敵わない。


 それにしても、明らかに反応がおかしい。

 だが質問をしても、フィルターとやらが働き何を言いたいのか分からない。

 他の手段で伝えることもできないらしく、この子についての情報を得ることは諦めるしかなかった。

 なのでひとまず、予定通り必要なことを確認してゆく。


 まず、協力することに対しての条件と出せる戦力を聞いた。

 戦力に数えられる者は少なく、少数精鋭とのこと。

 レベル数千が数十名。

 5000以上の4桁は10人ちょっと。

 レベル5桁は3人しか居ないと言われた。

 十分な戦力なのだが、歴史の短い国なため地下界の中では弱小国家なのだとか。


 見返りにはゲームや甘味、漫画など、娯楽を大量に寄越せと言われた。

 安いようだが、地下界では手に入り辛いものが多いのだとか。

 量や質は活躍度に応じて増やすという契約になった。


 次に確認したのはイレギュラーゲートについて。

 これはプライドの高い国の誰かの仕業(しわざ)だろうという。

 その国では≪地下界≫の≪下≫という文字を嫌い、魔界と呼ぶ。

 地下界と呼ぶと怒るらしい。

 場所もレイナが逆探知した位置関係と合致した。


 地下界にもルールが有り、地上に攻め入ることは禁忌だとか。

 かなり巨大な国だが、ルールを破るとは思えない。

 個人でやったことだろうと聞かされた。

 もし国家で攻めて来ていた場合、とっくに滅亡していただろうから間違いない。


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