マイナス4体目 古き友
夏休みの終盤。
オレはようやく、レベル2桁に乗った。
魔法も制御は難しいが、簡単なものは使える。
得意なのは風の属性。
火や氷も使えなくはないが、戦闘中の使用はまだできない。
「はあっ――!」
武器に纏った風の刃を飛ばし、蜂型の魔物を切り裂いた。
第3階層のここではオスしか出ないため、毒針は無い。
50cmを超える恐怖を駆り立てる姿に反し、危険度は低い。
だが首などに攻撃を受ければ致命傷になりかねない。
注意は必要だ。
『レベルが1アップしました』
これでレベル11になった。
レベルが上昇して魔物とのレベル差が開くと、獲得できる経験値は減っていく。
魂の質が自身のものより劣り、質を向上させ辛くなるという理屈らしい。
「やっとレベル11か……。21にするのが大変なわけだ」
「安全を考えると1層でレベル6。10階層以降は階層プラスレベル10は欲しいからね」
第3階層の安全マージンはレベル9。
そろそろ5階層に進む頃合だ。
「10層のボス戦は怖いから、もっとマージン取りたいな……」
「仲間も必要だよね」
第10階層の主柱に存在するボスは、上に挑戦したいなら回避できない試練だ。
ボス戦を嫌い、ずっと10階層以下での活動だけという者も居る。
10階層で勝てても、ボス戦がトラウマになり20階層のボスに挑まない者も多い。
「まだ先になるだろうけど、臨時パーティーでも挑めるよ。私が手伝ってもいいし。一番は連携を上手く取れる相手を見つけることだね」
「……まだ中学生だし、ジックリ考えるかな」
ボスが現れる部屋には、最大4人までしか入れない。
突破済みの者や高レベルの者に手伝ってもらうことは可能だ。
しかしその場合、過剰な協力と魔塔に判断された場合、次の階層への挑戦権を得られない。
今後ものぞみと2人で活動するなら、手伝ってもらうのもひとつの手だ。
しかし上の階層に挑むつもりなら悪手。
手伝ってもらうか追加メンバーを探すかは、ジックリ決めればいい。
この時はそう思っていた。
追加のパーティーメンバーは、すぐに見つかった。
それは夏休みが終わり、2学期の初登校日のこと。
「聞いたぞシュナイダー! 貴様、冒険者になったらしいじゃないかっ!!」
「……まあな」
オレを≪シュナイダー≫と呼ぶのは、≪清川 幸助≫。
小学校の頃、科学クラブで一緒にバカをした仲だ。
清川は科学関係の動画投稿者でもある。
「実は俺も今年冒険者になってな。魔塔の動画を上げていこうと思っているんだ。一緒に――」
「嫌だ断る」
「やらないか……」
動画を自作して晒すなど、羞恥心が限界を超える。
なので清川が言い切る前に断った。
「まあ待て。同期で同い年の仲間も居るんだ。合わせて4人というのも、丁度良いだろう?」
「だからって動画は嫌だよ。面倒臭い」
オレの言う面倒臭いは、別の意味で発することが多い。
≪ままならない≫だとか、≪窮屈≫という意味が込められている。
ようは許容できないと言っているのだ。
相手が強く望めば、行動に移すことはある。
しかし繰り返し面倒臭いことをされると、ブチ切れる自信がある。
「……よし! こうしよう!! 動画に写ったり編集などを手伝えとは言わん! だが、活動事態は許容してくれ! これならどうだ!?」
「……妥協点としては良いけど、のぞみに相談しないと。もう1人はどんな人?」
パーティーを組むのなら、相方にも相談しないわけにはいかない。
残り1人がどういった人物かも気になる。
「む……。そうだな。ならばさっそく――」
「ダメよ幸助君。もう授業が始まるわ」
「いや、だが……」
「はいはい。続きは昼休みか放課後ね」
「ああっ! 待て! 待ってくれ愛香!!」
清川を連れて行ったのは、≪赤城 愛香≫さん。
2人は付き合ってこそないが、周りにはバカップル扱いされている。
さっさと付き合ってしまえ。
放課後はファミレスにて、同期の仲間という者を紹介された。
身長が低い、細身の男だ。
受験しようと考えている学校の、中等部の制服を着ている。
「というわけで、こやつがオレの仲間の、≪クマー≫だ!」
「ボクの名前は≪久野 真冬≫。冒険者ネームは実だったんだけど、清ちゃんが≪クマー≫の方が良いって言うから最近変えたんだ。キミらもクマーって呼んでね」
相手が冒険者なら、冒険者ネームで呼ぶのがマナーだ。
臨時パーティーを組んだりした際、防衛的な意味で所在バレを防ぐ目的もある。
冒険者カードの名前は、申請すれば変更可能だ。
女性がニックネームを使うのは珍しくない。
なぜか周りに居る3人は、女性が本名で男性がニックネームだが……。
「小並塔也。冒険者ネームはトウヤだ。よろしく」
「……ん? …………ああ思い出した! 保育園の時一緒だった小並ちゃんだ!」
「……誰?」
保育園の時と言われても、知り合いの名前などほぼ憶えていない。
名前だけでは、誰のことなのか分からない。
「よく一緒にお遊戯とかサボったじゃん。覚えてない?」
「ああ、アイツか……」
深くは思い出せない。
しかし、どういった付き合いだったかはなんとなく覚えている。
「いやぁ、逸れ者同士、やっぱ引かれ合うんだね! また一緒に遊べるなんて楽しみだなぁ……。折角だしこれから家にお邪魔してもいい? それともゲームセンターがいいかな? ああでも……! ん~」
「……お前って、そんなにおしゃべりだったか?」
覚えが正しければ、部屋の隅っこで体育座りを延々としているタイプだったはず。
表情も笑顔が張り付いていて、少し不気味さすら感じる。
「……おしゃべりなのは元からだよ。小並ちゃんの覚え違いでしょ」
その時のクマーは、顔は笑っているのに目が笑っていないように見えた。
―キャラクター紹介②―(1体目の時点)
絆地 のぞみ 冒険者名:のぞみ
髪:桜色・ツーサイドアップ(中学生から高校始めはサイドテールやポニーテール・ツインテールなど)
目:桃色
年齢:19歳(現13歳)
誕生日:2月13日
身長:152cm(現148cm)
体重:45kg前後
一人称:私
武器:弓・ステッキ(短杖)
夢:大きな夢を持つ人の応援
行動理念:人助け
性格:単純一途
趣味:家庭菜園・裁縫
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履歴
小学5年生の頃に小並塔也が在籍する学校へ転校。
同じ保険係なため知り合いよりは関係良好であった。
時間を掛け、塔也の何気ない気遣いに惹かれてゆく。
中学生になると、友達の援護もありより親密になった。
しばらくすると塔也の家族が失踪。
親に頼み賛成を得て家に迎え入れた。
以下略