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34体目 ボスラッシュ

 110階層のボスは、身長3メートル近い血色の悪いゴブリン。

 攻撃力は高いが素早さが低いため脅威ではない。

 魔法耐性も持ち合わせておらず、オレにとっては80階層のドラゴンよりも楽に感じる。

 風魔法で十分制圧できた。


「弱いな……」

「地下界全体で見ても弱い種族ですからね。低い階層だとレベルを調整して再現しただけの雑魚と言っても良いぐらいです。実際はもっと強いですし、種族的に階級が上のゴブリンも居ますよ」


 地下入り初のボスがゴブリンとは、格落ち感が凄い。

 ドラゴンや天使、悪魔といった種族から格が落ちるのは仕方ない。

 これから先何百というボスが待ち構えているのだ。

 全てを伝説上の生き物で揃えるのも、限界があるのだろう。


『100階層のボスの討伐を~……えーっと、以下省略。≪ボスラッシュ≫を開始します』

「雑か」

『ごめんごめん。ちょっと眠くてね。いきなり呼ばれたんだから許してよ』


 いつもと違い、クマーが魔塔の操作をしている。

 クマーは管理室に居るらしいから、同じボス部屋に居るのはレイナだけだ。

 今回の場合手動での生成だったので、クマーに緊急クエストの作成を頼んだ。

 自動生成ならレイナの声質になるらしい。


「先輩! 始まります!」

「さて……どこまで行けるかな」


 地下入り冒険者ともなると、レベルより能力が重要になることも多いらしい。

 自身より倍近いレベルの魔物に勝てないようでは先に進めない。

 魔物にもレベルがあるように、能力を持ち合わせることもある。

 ボスともなればその特異性は増す。


 雑魚なら2倍近いレベル差をひっくり返せる人でも、ボス相手には苦戦を強いられる。

 レベルランキングの最上位が年間100前後しか塗り替えられないのは、この辺りが理由なのだろう。


 魔塔が現れた当時より年間の上昇量は増えている。

 実のところランキング上位の者は幾度か世代交代している。

 先人たちのノウハウがあり環境が整った分、若い世代の方が伸びる割合が多いためだ。

 錬斗が期待されているのもそういった要因が多くを占めている。





 地下150階層までのボス討伐が完了した。

 110階層から順に猫又(ねこまた)、謎のドロドロした不気味な(かたまり)、木の精霊。

 140から、座敷童子の集団、呪いの集合体が人型を成した存在といった感じに続いた。

 ここまでは苦戦もせず予定調和。

 本番はここからだ。


「少し厳しくなって来たか……」

「200階は越えたいですね。本格的な支援を始めますか?」

「過剰にならないよう気をつけてな」


 レイナは管理者権限で途中経過も大よそは見れるらしい。

 魔塔のシステムに過剰な協力だと判定されないよう調整するのは難しくない。


「160は……骸骨剣士(がいこつけんし)か」


 事前に集めた情報通りだ。

 最近は地下が解放されたことで、浅い階層の情報開示が行われた。

 レイナたちからもボスの特徴を聞いているから、攻略方法は分かっている。


 骸骨剣士は両手剣並に重そうな剣を二刀流で持つ。

 早いとは言えないが重い連撃は受けに回れば致命的なダメージを受ける。

 レイナが遠隔で(シールド)を貼って援護してくれた。

 オレだけなら面倒だったが、これなら分身の数を増やさずとも対処可能だ。

 3体での連携がベストだと感じ、数を2体減らして戦う。

 その結果連携がしやすく無傷で討伐できた。


 170階層のボスは3メートル近いゴーレム3体。

 数で攻めてくるボスは相性抜群だ。

 分身を合計9体出して逆に3対1の状況に追い込んでやった。

 攻守に優れていようと、ボスとして見ればステータスはお察しだ。

 苦労することなく倒せる。


『レベルが1アップしました』


 次は180階層のボス。

 オレのレベルが丁度185に上がったが、安全マージンを確保できない階層に突入した。

 階層が進むほど安全マージンは目安でしかなくなる。

 それでも浅い階層ならレベルによる影響はまだまだ大きい。


「180は悪魔……悪魔かぁ……」


 ザ・アクマといった感じで、武器にトライデントフォークを持っている。

 筋肉質の赤色の大男といった感じだが、強そうに見えないのは下級の悪魔だからか。


「並みの攻撃は無効化するので、注意してください!」

「そうか。そうだったな」


 オレは分身に意思を伝えた。

 3体残している分身は敵へ距離を詰めつつ魔力を圧縮。

 あえて捨て身で攻撃を受けて串刺しになりつつ氷魔法を解放。

 自身すらも魔法に巻き込まれる覚悟で、自滅特攻を仕掛ける。

 折込済みの負傷だから、損失を抑えつつ分身のエネルギーを回収できた。


「消耗が地味に多いけど、自爆は楽だし強いな」


 まだ倒しきれていないようだ。

 オレは爆弾を取り出し投げつけた。

 威力では通用しないが、悪魔の氷像を砕くだけなら可能だ。


『レベルが1アップしました』

「少し休憩しますか? 10分ならインターバルを取れますよ」

「集中力も切れはじめたし、そうするか」


 まだ余裕はあるが、無茶は禁物。

 目標は200階層だったが、もう少し先まで行けそうだ。

 先のことを考慮して、休憩できるうちにしておく。


 190階層のボスは、ゆるキャラだ……。

 クマーがバイトで着ていた着ぐるみと同じ姿形をしている。

 ゆるい見た目とは裏腹に、3次元の高速移動を可能とする耐久型。

 攻撃力と防御力は低く、体力と再生力が凄まじいらしい。

 強力な攻撃を上手く命中させねばならない相手だ。


『レベルが1アップしました』


 レイナの遠隔シールドによる移動妨害が無ければ苦労していたと思う。

 1撃で倒せず、追撃をする前に高速で逃げて再生する。

 首と胴体を切離してなお再生したのは少し引いた。

 体力はともかく、魔力を大量に使って精神的に消耗させられた。


 次は200階層のボスだ。

 一気にレベルを上げたいから、ここからどこまで進めるかが重要になる。 


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