マイナス3体目 魔法訓練
初日はレベルが3に上がった時点で終了。
翌日の日曜は4へと至った。
平日は学校へ行くようになり、忙しい日々が過ぎる。
進路はもう決めた。
中高一貫校に、冒険者用の学校がある。
その学校に受験する予定だ。
実のところ、公務員にも冒険者は一定数在籍している。
レベルを上げれば、基本的な能力も上がる。
高ければ、自衛隊や警察、消防などでも活躍できるわけだ。
だいたいの者は、活動制限中に冒険者としての知識を培う。
中学生のあいだは、レベル21を目標にする者が多い。
高校に入るとパーティーを組む機会も増える。
そして気の合う者と、上の階層を目指しだす。
ほとんどの者は、卒業までにレベル40を超えることが目標だ。
世界の冒険者人口は、総勢400万人と言われている。
レベル1~20が3割。
このレベルは、商人などが多い。
冒険者を名乗るのは恥ずかしいレベルだ。
登録してるだけで、活動してない人がほとんど。
レベル21~40は3割ちょっと。
ここが大きな壁だ。
限界を感じ惰性で仕事を続けたり、転職する者が多い。
レベル41~60が1割。
本格的に冒険者を職業として名乗っていいレベルだ。
レベル61~100が1・5割。
長年冒険者を続けたベテランが一定数居るレベル。
努力を続けた者や、才能がそれなりにある若者が多い地帯だ。
レベル101以上ともなれば、1割を切る。
天才や秀才と呼ばれることが多くなるレベルだ。
1割と言われると、「10人に1人も居るのか」と思ってしまう。
自慢はできても、まだ常識的範囲だ。
トップレベルの者たちは、レベルが4桁なのだから……。
天の試しを突破し、地下へ挑める者はレベル101以上の括りとは別の集計になる。
現在は2.8%。
約11万人ぐらい居る。
この先は情報統制がされているようで、詳しくは分からない。
魔塔関連の部署に勤める警察なども、接触してくるらしい。
7月に入り、本格的に熱くなってきた。
オレたちは智恵さんに頼み、土日以外も訓練してもらう。
平日はギルドからの手当ても出ないため、少し申し訳ない。
だが「ドンと来い」と言うので、遠慮はしない。
「そこはもっと、グワーって感じで!」
連携や冒険者としての心得など、教わることは多い。
しかし魔法に関しては感覚派で、まるで分からない。
「擬音使われても分からないって!」
以前、敬語は無しと言われている。
なので現在は、さん呼び以外は普通に対応している。
「じゃあ、えーっと……。全身の血管に……感情エネルギー? が流れて、燃え上がるように噴出……する、ような?」
「もうダメかもしんない。この教官……」
「なにおう!? これでも≪飛翔≫だって覚えてるんだよ! 私!」
空を浮くのは、そこそこの実力者なら可能だ。
難易度が簡単な順に、≪浮遊≫、≪飛行≫、≪飛翔≫となる。
浮遊は文字通り、軽く浮くだけ。
移動も頑張って、歩行ぐらいの速度しか出せない。
飛行は時速30キロ前後の速度。
飛翔は60キロを超える人だ。
「飛翔は凄いけど、教え方が酷すぎる。参考書見た方がまだ分かる」
「ダメだよ悪く言っちゃ……。頑張って教えてくれてるんだし……」
のぞみは悪く言うなと言う。
しかし参考書や指南書を改悪したかのような教え方は、許容できない。
このまま教えられても、逆に変な癖が付きそうだ。
「魔法は個人の性格、イメージの仕方、感情が大きく影響するし、魔力の巡る感覚も人それぞれっていうから、教えるのが難しいんだよ……」
智恵さんの言うように、教える難易度も高い。
修得難易度も個人差が大きく、基礎を修めるだけで数年を使う人すらいる始末。
魔法を使うことを早々に諦める人も多い。
「それよりほら! 続けて続けて! 集中あるのみ!」
「あーい」
気の抜けた返事をして、訓練を続行する。
しかし結局、魔力を感じずにその日を終えた。
帰宅後ネットで調べてみるも、方法が多すぎる。
少しの訓練で進歩するわけでもないから、どれが良いものか判断が難しい。
ならば魔塔内部にある大図書館だ。
そこなら冒険者でないと観覧を許されない本が多く存在する。
オレが追加で見れるのは、初心者用ぐらいだ。
魔法の訓練方法を調べるだけなら、それで十分。
明日は訓練も休みなので、さっそく向かうことにした。
「かなりでかいな……」
入り口には警備員が2人居る。
中に入ると、コーナーがいくつかに分かれている。
まず、専用の会員カードを作る。
そのカードは探知機にもなっている。
許可されていない場所に侵入しようとしたら、ブザーがなる仕掛けらしい。
地下入り冒険者が許可される場所は、もっと厳重に違いない。
初心者用のコーナーに行くと、学生が多いのに気付いた。
おそらくは、中学1年生から冒険者になった者だ。
ここは日本が建てた公共の図書館だ。
居る人も当然、日本人ばかり。
周りの学生には、受験しようと考えている中高一貫校の制服を着ている者も居る。
その中に目を引く、ショートのこげ茶髪の女の子が居る。
どこかで見た気がするのだが、思い出せない。
智恵さんと会った時も感じた既視感だ。
時々あることだから、気にすることもないか。
「あの……」
しばらく見ていたのに気付かれたのか、近づいて来て話し掛けてきた。
ツインテールにしては厚みがないと思いきや、少量のツーサイドアップだった。
「何かお探しですか?」
本を探しているのは事実だ。
場所を誰かに聞こうとしていたと、勘違いさせたか。
「あー、うん。魔法使えるようになりたくてさ、指南書探しに来たんだ」
「でしたらそこの棚にある、上から2段目の右から3冊目がお勧めです……!」
「……これ?」
「はい!」
全体的な内容を見るため、ページを素早く捲る。
ぱっと見た感じ、理解しやすい内容に感じた。
「……うん。試しに読んでみるよ。ありがとう」
「いいえ。お気になさらず」
若干興奮気味な様子に違和感を覚えるが、今は本だ。
貸し出し可能だったので、持ち帰り熟読させてもらう。
結果、早い段階で魔力の感覚を掴むことに成功した。
まだ制御はできない。
しかし、オレは魔法の才能があるのかもしれない。
―キャラクター紹介①―(1体目の時点)
小並 塔也 冒険者名:トウヤ
髪:黒
目:二重・ブラウン
年齢:19歳(現13歳)
血筋:4分の3日本人
誕生日:10月3日
身長:174cm(現163cmぐらい)
体重:68kg前後(現53kg前後)
一人称:オレ、自分、こちら
武器使用頻度:短剣>鉄のポール(斬撃不利や対人戦用)>刀(強敵用)
夢:誰にも頼らずに済む万能性を備えた強さを手に入れること(現在:楽しく楽して生きていきたい)
行動理念:基本的には善行寄りの思考。ただし手段はあまり選ばない。
性格:ロマンチスト・卑劣な正義・個人主義(まだ個人主義ではない)
趣味:修行(漫画やゲームの技再現)・ゲーム・インターネット・読書
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履歴
仲間の協力もあり、虚像の分身能力を鍛え上げた。
冒険者となり3年が経過し、レベルも平均水準を超える。
以下略。
実体分身が芽生えた時用に取って置いたSPは、とある件を切っ掛けに虚像の分身に使ってしまう。
それからも地道に惰性でレベルを上げ、3年が経過した。