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28体目 転移門

 隷属契約後、錬斗は比較的自由に行動させることにした。

 元々魔塔の内部で下宿していたらしく、いつでも呼び出せる。

 しばらくしたらオレも引っ越して近場に住まわせるつもりだ。


 今後は錬斗が得た給料から経費などを取り除いた手元に残る金から一定の割合を受け取る。

 本来は全額を取られても文句は言えないらしい。

 だが搾り取り過ぎれば活動意欲を削ってしまう。

 この辺りは木崎さんに頼んで普通よりは甘く調整してもらった。

 責任問題があるから、管理できないほどの遠くには行かせない。

 それでも必要な時だけ呼び出せるぐらいの方がオレも気も楽というものだ。

 周りから――特にムギから汚物を見られるような目で見られるのは嫌だから、この程度の対応が良い塩梅(あんばい)だろう。


 日本人は法律上よっぽどの事情がない限り奴隷にはならない。

 今回のケースでは錬斗を隷属させるのは無理があるが、そこは様々なコネを使ってお目こぼし頂いた。

 錬斗自身が拒否すれば隷属は無しにもできた。

 それでも拒否しなかった辺り、責任は取る人物なのだろう。


 そして現在オレは、奴隷を売買している店へと向かっている。

 最終的な権利書などはオレが直接受け取らなければいけないらしい。


「なんでこんな場所に……よりによって誕生日に」


 今日は10月3日。

 オレの誕生日だ。

 特に用事が有るわけでもないが、つい口には出てしまう。


「誕生日って言っても、祝ってくれる人は居るの?」

「…………」

「ごめんなさい。今のは考えなしな発言だったわ」


 木崎さんが謝罪した理由は、オレの家族が失踪しているからだろう。

 少し前にレイナやクマーに確認したことがある。


「別に、家族のことは気にしちゃいないよ」


 その時聞いた話だと、実際は失踪するよりもずっと前から亡くなっていた。

 別の時間軸では極稀に生きていることもあり、その辻褄合わせで消えるように居なくなったのだとか。

 この世界でも実際に生きていたわけではなく、「残滓のようなもの?」と言っていた。


 辻褄合わせはかなり複雑で、200年近く前から調整されているらしい。

 2人にも詳細は分からないことだらけだと言っていた。

 オレが感じていた違和感や年齢のズレなどの正体がこれらしい。

 時々夢に出ていたのは、別の時間軸の光景というわけだ。


「そうだわ。小並君何か欲しいものはない?」

「金」


 頭を(はた)かれた。

 現金を貰って困る人など居ない。

 少なくともオレは困らない。

 気持ちがこもった物云々が良いと言う者など、極一部の者だけだ。


「真面目に」

「真面目に……?」


 真面目に考えるなら、最初に思いつくのは「美味しい物を御馳走してもらう」だ。

 だがそれだと、いつもと同じだ。


「なら、一緒に戦える仲間かな」


 今後の事を本気で考えるなら、答えはこうなる……。


「…………あなたが本当に望むなら、私が一緒に活動してもいいわ」

「ありがたい申し出だけど、それじゃあダメだ」


 木崎さんはレベル帯を同じくする者が2人。

 それに加え高レベルの従者を1人入れた4人パーティーだ。

 オレが入る余地が無いとは言わないが、(いびつ)な形になる。

 パーティーを抜けさせるわけにもいかないし、未来のこともある。


「近い未来戦力が必要になる。だから1人でも多く戦える仲間が欲しいんだ。別々のパーティーで活動する方が都合が良い」

「戦力が必要って、どうして?」





 オレは事情を説明した。

 2人には隠せとも言われてい。

 戦力が必要ならむしろ木崎さんの協力は必要不可欠だ。


「――って感じ。本当かどうかは若干疑わしくもあるけど、尖兵ってのが本物なら事実なんだろうな」


 尖兵についてはもうじきレイナの作業が終わるらしいから、その後で資料をもらえる。

 今日中に送られてくる予定だ。


「それが本当ならなんで公表……するわけにもいかないか」

「難しいだろうな」


 単純に公表しても混乱を招く結果になる。

 下手をすれば天界の連中に情報が筒抜けになり刺激しかねない。

 場合によっては攻めて来る日時が早まってしまうかもしれない。


「…………なら丁度良いわね。これから行く店で仲間を探したらどう? 躊躇(ためら)える状況じゃないのでしょう?」

「まあ……」

『天地の魔塔からお知らせします』


 返答に迷っているとレイナの声が聞こえてきた。

 事前に聞かされていた通り、一般人も地下へ転移できるようにしたらしい。

 これからは世界中がパニックになることだろう。

 階層の所有権を巡って大きな論争が起きること間違いなしだ。

 冒険者たちも一気に活性化して、地下を目指す者が増えるはず。


『続きまして世界に点在する転移球を有する建築物に≪転移門≫を設置します』


 ≪転移門≫――これは門同士を繋ぎ合わせる扉だ。

 別の国へ即座に移動できるようにしたらしい。

 ≪転移球≫では入場する時に使用した場所と、各階層の固定地点にしか転移できなかった。

 それが今後は外国にまで転移可能となる。

 こちらも混乱を招くだろう。

 転移門はしばらく封鎖されそうな気しかしない。


「言った通りのことが起きたわね……。国の移動が楽になるけど、色々問題もありそう。旅客機の関係とか悲惨なことになりそう」

「別の仕事も増えるだろうから、選り好みしなければ失業はしないんじゃないか」


 転移門を設置した理由は、魔塔だけでは敵の攻勢を受けきれなくなるからだ。

 威力偵察が始まれば、魔塔の外にも被害が出るだろうと聞かされている。

 その前に民間人の避難が円滑に済ませられる体制を作らねばなるまい。



―冒険者人口分布(作中で経過した時間で総勢500万人ちょっとになった)―


レベル1~20:約3割

商人やその他色々の登録だけして真面目に活動してない地帯

努力さえすれば誰でも超えられるレベル


レベル21~40:3割

才能がない人が挫折する地帯

惰性で活動を続ける冒険者も多く在籍している。

一般人では勝てない力を持つため犯罪者が多く、逆に被害に遭う者も多い


レベル41~60:約1割ちょっと。

本格的に冒険者を職業として名乗っていい地帯

ギルドから定期的仕事を受けることもできて年収はそれなりに安定する

冒険者以外の職業に就いている者も多い


レベル61~100:約1・5割。

長年冒険者を続けたベテランもしくは才能がそれなりにある若者が多い地帯

年収は安定しないが少なくはない

引退前に稼ぐだけ稼ごうとする者も多い地帯


地下に入っていないレベル101以上:1割未満

お世辞で天才や秀才と呼ばれることが多くなる地帯。

年収が多かったり美人奴隷を囲っていることが多い

冒険者以外の特殊な役職に就いている人も一定数居る



―地下入り冒険者:総勢3%(15万人ぐらい)―


レベル300未満:90%

天の試しで怪我を負い上を目指すのを諦める者が多い

かなり待遇もよくなるため多くの者が無茶をしなくなる

誰かに隷属してから地下入りを果たした者も多い(支援特化だと天の試しを突破しやすい)


レベル500未満:7%

(清川幸助:レベル445)(木崎ミナミ:レベル357)


レベル1000未満:2・5%

(絆地のぞみ:レベル513)


レベル1000~2000:0・3%(450人ぐらい)

(西寺玲奈:自称(申告)レベル1003(実レベル1872))


レベル2001~3000:0・15%(225人ぐらい)

(久野真冬:自称レベル4万1・申告レベル444(実レベル2911))


レベル3500前後:0・05%(77人)(カグツチホムラ:レベル3490(鳥族))


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