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23体目 笑えない

 天の試しを終え落ち着いたある日。

 オレはクマーを、一発殴らせろと言って呼び出した。

 勿論他の用事もあるわけだが、これだけはしておくべきだ。

 というわけで、出会いがしらに拳を顔面に叩きつけた。

 レベル差はあるが、クマーは貧弱なので十分なダメージが入る。


()ったいなぁ……ボクだって望んでやったわけじゃないのに、ボクだけ殴るのは酷くない?」

「レイナのことだって許してないぞ。ただ殴るほどじゃないってだけだ」


 レイナは贖罪(しょくざい)かは不明だが、相応のことをしてくれている。

 思うところはある

 それでも貰った指輪を見たら、怒りは鎮火(ちんか)した。


「うーん。他ならまだしも、比較対象が西寺ちゃんだと納得いかないなぁ……。まあいいや。用事って何だい?」

「別井双樹って知ってるよな。今は異世界に居るらしいんだけど、何か知らないか」


 容疑を掛けるには十分な理由がある。

 異世界に送り込むなど、一般の者にできるとは思えない。

 偶発的に行ってしまった可能性もあるだろう。

 しかしクマーたちは、魔塔の管理者権限で色々やっていた前例がある。


「……いや。少なくともボクは知らないよ。西寺ちゃんも少し前まではキミに夢中だったし、今は次に向けて忙しそうだから違うかな」

「次って?」

「一般人の地下への転移を解放するらしいよ? 他にも他国と連携を取りやすくするとか……」

「地下をか……」


 地下の1から100階層は、地上の魔物と強さが同じぐらい。

 分身に各階層を確かめさせてみたのだが、違いは環境ぐらいだった。

 より過酷だったり、楽園のような階層が多いように感じる。

 刑事に聞かされた内容とも一致する。

 やはり地下は、天界や魔界のようなところを模しているのだろう。


「地下って見たことない魔物が多く居たけど、あれってどこの魔物なんだ?」

「≪天上界≫と≪地下界≫だよ。天界や魔界と言い換えてくれてもいい。そのうち攻めてくるのは天界の奴等だ」

「理由は?」


 普通攻め込んでくるのなら、魔界の者が相場ではないのか。

 同じ時を繰り返し過ごしたクマーなら、理由も知っているかもしれない。


「世界の均衡を崩す連中は滅ぼすって感じかな? 元々滅ぼす気だったのが溢れただけだから、遅かれ早かれその時は来るって感じ。この日だって決まった日時はないよ。先に威力偵察とかがあるから、タイミングは図りやすくはあるけど。遅くても3年後かな」


 決まった日時が無いから、これまで日付に関しては触れなかったようだ。

 レイナが「前提から壊した」とも言っていた。

 ならば2人にも分からないこともありそうだ。


「敵総戦力は?」

「上限は不明。天使長クラスは推定レベル4000から7000が大勢。その下にうじゃうじゃ部下が居る感じだね」


 レベル4000ですら、現在のトップレベルの冒険者クラスだ。

 それが大勢となると、対抗するのも難しい。


「その上の階級だと、推定1万8000。さらに言うなら前回までは天地の魔塔は無かったんだ。本当に笑えちゃうよ」

「それは……笑えないな」


 レベル1万越えが3年以内にくる。

 言い方からして、偵察はすぐに来てもおかしくない。

 現状では、世界中の冒険者を集めても勝てない。

 それを天地の魔塔が無い世界で抗うのは不可能ではないか。


「またボクらでパーティーを組むのも悪くないけど、別々に仲間を集めて戦力を増強すべきだろうね。個の力も必要だけど、数も必要になるから」

「仲間って……。早々集まるもんでもないだろ」


 とは口で言うものの、実はタイミングとしては悪くない。

 地下入りしたばかりの今だからこそ、パーティーは組みやすい。

 地上層から地下まで同じメンバーでパーティーを続けられるケースは珍しい。

 天の試しを区切りに、解散することは多いのだ。


「なんなら奴隷でも買えばいいんじゃない? SPを好きに使わせられるから、足りない部分を補うに使えるよ。ボクも仲間は全員奴隷だし!」

「……お前、奴隷使ってるのか」


 奴隷を使う冒険者は少なくない。

 国によって法律は違うが、魔塔内部では基本的に黙認される。

 日本ではグレーなところで、奴隷を魔塔からは出せないだけだ。

 それでも場合によってはクマーを粛清(しゅくせい)せねばなるまい。


「勿論待遇は良くしてるよ? 戦闘でも前には出さず支援系に重視してもらってるし、休日やお小遣いも十分あげてる。不満は出てないし、出す気もない」

「…………」


 いくら待遇を良くしていても、自分で奴隷を買うのは抵抗がある。

 個人主義的考えを持つ身としては許容できない。


「別に奴隷じゃなくてもいいさ。ともかく仲間は作った方が良い。1人でできることには限界がある。得意不得意だってあるしね。悪くない時期だし考えてみなよ。絆地ちゃんとよりを戻すって手も……ごめんって。謝るからそんな目で見ないでくれよ」


 今さらどの面を下げて、のぞみとよりを戻せというのか。

 そもそも正式に付き合っていたわけでもない。

 もしその部分を茶化すようなら、オレはクマーに全力で攻撃を仕掛けていた。


「あー、そうだ。別井ちゃんの件なら心当たりはあるよ」

「どんな」

「ボクらの上司さ。天使の中でもかなり上位に位置するんだけど……って先に言っておくけど、天界とかも一枚岩じゃないからね」


 上司という者がただ者ではないとは感じていた。

 だがまさか、敵勢力と同じ世界の者だとは思わなかった。

 同時に納得もできる。

 意見が分かれて、強硬派が動いたのを保守派が防ごうとしているとも受け取れる。


「天使様はこれまでの周回では逆行時ぐらいしか関わらなかったんだけど、今回はどうも動いてる様子がちらほらあるんだよね。キミに対する天の試しとかさ」

「じゃあ未来のことは、分からないことばかりなわけか」


 天地の魔塔が別の時間軸ではなかったと言う。

 ならばその世界の知識は、あまり役には立たないかもしれない。


「ボクは一度帰るよ。別井ちゃんのことで何か分かったら知らせるね。仲間の件、しっかり考えてよ?」

「……ああ」


次回18:00投下予定


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