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4体目 魔具

 体力や魔力の消耗。

 それは多くの冒険者に立ちはだかる問題だ。

 回復手段が有るのと無いのでは、活動効率が大きく変わる。

 魔法の中には回復魔法が存在するが、傷は治せても体力まで回復するのは希少だ。


 まず思い付く回復手段は、アイテムを使用した回復。

 しかしそれは、お金が掛かる。

 日常的に使用するのは(さいな)まれる価格だ。


 オレの場合日常では、体力はともかく魔法力が枯渇することはない。

 魔力が高いのは要因のひとつだ。

 それに合わさり、敏捷力(びんしょうりょく)や知力も影響を与え、魔力の回復が早いのだ。


 ステータスには体力、魔力、筋力、敏捷、知力、器用さなどと別れてはいる。

 しかしそれは、大雑把な括りでしかない。

 たとえば魔力と言っても、魔法を使う上での威力や精度、精神力(マジックパワー)の最大容量などの総合値が魔力として記載される。

 敏捷力の場合も肉体的速度なら筋力が影響するし、精神的速度なら魔力が影響する。

 知力も魔法力に影響を与えたりなど、割と複雑だ。

 詳しく測定したい場合は、専門の施設にて体力測定を受けることが可能だ。



 そしてオレは、体力と筋力がレベルの割にやや低い。

 1年と少し前まで自衛隊幹部候補が集まるクラスに通ってた身としては、情けない限りである。

 卒業後に(なま)って、数値が若干(じゃっかん)減っていたぐらいだ。


 実体具現の消耗は、レベル1の頃よりは軽くなった。

 それでもレベル6になった時点で、出せる数が2体になった。

 限界まで出せばまた精度が下がって、消耗が増える。

 2体出した場合の体力の消費速度は、2倍どころではない。

 素早く回復させる手段の獲得は必須だ。


 現状使っているアイテムに頼り続けるのは愚策(ぐさく)

 緊急時などの時以外は、使用頻度を減らしたい。


 最初に思いつく体力回復方法は、能力による補給。

 外部から取り込む方法や、魔力を生命力に変換する方法など様々ある。

 後者は難易度が高いから、覚えるなら外部から取り込む方法だろう。

 

 外部から取り込む手段も様々だ。

 食事などを摂取しエネルギーにする。

 他者から供給してもらう。

 魔素を生命力に変換するなどだ。

 最後のは難しいので早々に却下する。


 食事からエネルギーを補給するのは、現在使っている高価なアイテムに頼る方法に近い。

 だが安く済ませようと普通の食材にすると、大量にカロリーを摂るのが難しい。

 消化スピードを速くする能力は聞いたことがある。

 レベルを上げれば、悪くない効率で体力を回復できるようになるだろう。


 次に、他者からの供給。

 これは味方から提供されるのと、敵から奪う手段がある。

 当然、ソロで活動するオレには、エネルギーを提供してくれる味方など居ない。


 敵から奪うのは、可能となれば最高の効率が出せる。

 ただし、≪気力操作≫が必要なぐらいには難しいはずだ。


 どの手段を選ぶかは、一通り調べてからにする。

 インターネットの情報だけでは限界がある。

 久しぶりに図書館に行く必要がありそうだ。



 魔塔内部にあるこの図書館も、利用できる棚は昔より増えた。

 現在利用できるのは、40階層までのボスを突破した者の棚。

 それと、日本冒険者ギルドの職員として登録された者が許可される棚だ。


 オレが目的にしている本は、レベル21以降の者がよく利用する範囲にある。

 様々な能力が記された本が多く存在しているから、目的の情報を探し(やす)い。

 その場を目指し進むと、見知った顔に出会った。


「先輩。お久しぶりです」

「レイナか。いつぶりだっけか」

「えーっと……。118日と22時間52分ぶりです」

「4ヵ月か」


 口には出さなかったが、若干(じゃっかん)怖い。

 4ヵ月ぐらいというのはオレも思い出せたが、分単位はどう判断するべきか。

 単純に記憶力が凄まじいのだろうか。

 この≪西寺(にしでら) 玲奈(れいな)≫ことレイナは、時々妙な発言や反応を取るから判断が難しい。


「……ツッコんでくれてもいいんですよ?」

「秒単位は覚えてないのかって?」

「今は……52分と50秒ぐらいでしょうか。どのタイミングからカウントするかによって、秒数は変わりますからね」


 ツッコミを入れずにボケてみたら、本当に秒数まで答えてきた。

 冗談なのか本当に秒数まで覚えてるのか、余計分からなくなった。

 これは、早くツッコめという合図だろうか。

 だが、それには乗らない。

 オレもそのままボケさせてもらう。


「カウントは相手が見えなくなったらか、声が届かない範囲に行ったらでいいんじゃないか」

「なるほど……。では今度からは、その基準にしますね」

「…………」

「…………」

「ひとまず本探すから、またあとで」

「はい!」


 気まずくなった空気を打ち切り、本探しを始めた。

 よく思い返してみると、レイナは制服をらしき服を着ていた。

 オレが通っていた学校の制服とは微妙に違う。

 歳が1つ下の子なので、もう卒業しているはず。

 気になったので、合流した際に訊いてみる。


「そういえば、その服ってどこの? 学校の制服に似てる気もするけど」

「オーダーメイドの装備です。結構良い素材を使ってて、このまま狩りにも行けるんですよ」


 女性の冒険者は見た目に(こだわ)る者も少なくない。

 多少のお金をかけても、見た目を(たも)とうとすることがある。

 それにしても、じっくり見てみると尋常(じんじょう)ではない装備だと解かる。


「凄い魔力なのに高い純度だな……。集中しなきゃ魔具(まぐ)だって気が付かなかった」


 魔力がこもっている装備を総称して、魔具と言う。

 お値段は安いものでも、何十万とする物ばかり。

 レイナが着ている服の質だと、恐ろしい値段になりそうだ。


「分かりますか? 破れたりしても修復機能があって、翌日には直るんです。それに着てるだけで、魔力や体力まで回復してくれるんですよ!」

「体力回復か……。珍しい機能つけてるな」


 体力回復の効果付与は、かなり珍しい。

 効果自体が珍しいのもある。

 しかしオレが言った意味は、回復量が少ないのによくそんな効果を――という意味だ。


「最初は小さい物に両方の回復効果を付けようと思ったんですけど、失敗しちゃって……。体力回復しか付与されてませんけど、よければ要りますか?」

「……なんだこれ」


 レイナが差し出してきた物は、小さい宝珠付きの指輪。

 指輪では、効果の程度はたかが知れている。

 しかしオレは、効果の強さに驚いた。

 その宝珠に触れた瞬間、全身に活力が湧いてきた。

 それは1体ならば、戦闘用の分身を出し続けても余りそうな回復量だった。


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