幕間
小並塔也が冒険者活動をやめたばかりの頃。
天地の魔塔のとある階層に、西寺玲奈が居た。
彼女は巨大なモニターが複数あるその部屋の中心でキーボードを打ち続けている。
「お疲れ~。ようやく役目も落ちいたって感じかな」
そこに役目を終えた北村優希――現在では久野真冬やクマーを名乗る人物がやってきた。
「やっぱり誘導するのって大変だね。本当にアレでよかったの? ボクだってあんなことしたくないのにさ。なんでわざわざ告白拒否させるようなことするのさ」
「私の知る限り、必要な事ですから……」
「原作知識ってやつ? そんな外面だけで何でも知ってるように振舞うなんて、本当に気持ち悪いね。ここは決まった未来なんて存在しない世界だぜ? 実際、東にゃんだって――」
「いくら長い付き合いでも、同じ時間だけを過ごして満足してたあなたの方が気持ち悪いです」
2人は犬猿の仲だった。
だが、動き出した計画を止めることは叶わない。
それぞれの目的のために休戦し、手を取り合った。
そして久野真冬は、取られた手を振り回され翻弄され続ける。
「……次はどうする気?」
「しばらくは天地の魔塔のシステム管理だけで大丈夫です。これから3年ぐらいは適当に過ごしてくれていいですよ」
計画の実行には時間が掛かる。
そしてモニターには、必要な重要人物が数名映し出されていた。
中央のモニターには、様々なシステムが起動されている。
右の画面には絆地のぞみ。
そして左には、小並塔也が映っていた。
「清ちゃんはどうするの。記憶を持ち越すなんて、完全なイレギュラーだよね」
「放置して問題ありません。どうせ手に負えるような次元ではなくなりますから」
清川幸助は、本来関わることのない存在だった。
関わることになった理由を、2人はまだ知らない。
たとえ清川幸助が動きを見せても、歯車は正常に回り続けると思っている。
しかしその実態は、動いたことにより未来は動きだす。
それは、まだ先のこと……。




