世界観
現代から200年以上も昔、世界には魔王と呼ばれる魔物の力を引き出す魔族が存在した。
人類に敵対していた魔王は、伝承に残る勇者とその仲間によって倒された。
これにより魔物の脅威度は下がることになる。
魔物に近い存在とされていた魔族――亜人との関係も修復されていく。
やがて魔物による被害が大きく減り、文明が衰退することはなくなった。
長い年月を掛け亜人との関係も友好的に改善されていき、科学も発展してゆく。
だが閉鎖的だった日本が開国したのは、魔王が消えてから50年近くも経ってからだった。
開国後も戦争をして、敗北。
国の法律や各国との条約が整ったのは、現代から100年ほど前。
結果亜人との関係で出遅れ、世界的に見れば亜人の人口は比較的少ない国となる。
さらに100年の年月を経た現在、家電製品も当たり前になった。
無かった時代は、今では想像もつかない。
そして現代から50年以上も前のこと。
≪天地の魔塔≫と呼ばれる巨大な塔が現れ、魔物は世界より消えてなくなった。
無限に広がる塔の内部に収容されていたのだ。
各国に現れた≪転移球≫に触れることで、内部へ入場できる。
塔の内部は、1階層が直径10キロほどある円形のフロア。
空があり壁はないが、一定距離進むと反対側に出る謎の構造。
次の階層へ続く主柱が建っているが先端がはっきり見えない。
上空に飛ぶと、一定以上から距離が伸びなくなる。
何かしらの魔術が空間に作用しているらしい。
それぞれの階層にある主柱の最上階のフロアには、外に持ち出せる転移球が各階層に1個ある。
それを使い、各国に追加のギルドが建設された。
現在では日本でも、全国に点在するどの冒険者ギルドからでも魔塔に入場することが可能だ。
誰かが上の階層に到達して中心付近に存在する転移球に触れると、その階層に誰でも転移することが可能となる。
階層毎に風景や季節や気候も違い、当時は観光客で賑わったそうな。
10階層から11階層へ続く主柱の最上フロアには、ボスモンスターが待ち受けている。
そしてボスを打ち倒した者たちに、塔から響く声で告げられた。
『11階層から20階層の挑戦権を獲得しました』と……。
その日11階層が解放されると、いつものように転移で視察に行った者たちいる。
しかし、転移球を中心に直系20メートル広がっている結界から外に出ることは叶わなかった。
階層を昇るほど魔物は強くなる。
≪挑戦権の獲得≫とは、その階層でも戦える実力があると認められるということだった。
そして10階層を突破すると同時に、結界を広げる方法も入手したそうだ。
だが方法は国家機密で、国民には公開されていない。
分かっているのは、魔物を倒すと高確率で落とす≪魔石≫を使うということぐらい。
結界は燃費も考え、直径1キロ前後にするのが基本。
主柱を昇った先の出口が結界内になるのも、丁度それぐらいの距離だ。
特例もあり、全体を結界で覆い、魔物を出なくしている階層も存在する。
20階層のボスを倒すと、SPと言う概念が生まれた。
現在では冒険者用携帯電話――通称≪冒険者カード≫の登録時に、その機能がインストールされる。
昔は特殊な方法でしかステータスを確認できなかったそうだ。
SPの懸念が生まれてから、レベル1アップ毎にSP1を獲得しているのも確認できるようになったらしい。
そしてSP20を使うことで、これまでの上限だったレベル100の上限が解除された。
さらには冒険者の肉体や精神を強化することも可能となり、それは特殊能力にも及ぶ。
当然、能力を好き勝手覚えたり強化できるわけではない。
生まれつき能力が宿っているか、生活の中で芽生え、覚えられる状態である必要がある。
能力を自力で覚え鍛えることも可能だ。
SPは能力の成長を手助けをしたり、基礎的なステータスなどの強化をするためのものだ。
余談だが、SPはスキルポイントと呼ばれてはいるが、場所によってはソウルポイントとも呼ばれていたりする。
SPはレベルアップで生まれる余剰分の魂で、それを使うことで自身を強化するからだとか。
最後に地上100階層。
この階層の≪天の試し≫と呼ばれる試練を突破すると、地下へ進むことが可能となる。
地下は、試練を突破していないと転移することも不可能だった。
この時はまだ誰も知らないことだが、遠くない未来、地下も一般人が転移可能となる。
そして≪転移門≫なる物が地上に点在する各国ギルドに現れ、他国の門へと転移できるようになることも……。
日本では、冒険者の武器の所持は認められていても、銃の所持は認められない。
そんな緩いようで微妙に厳しい法律の国で、オレは今日も自宅の布団で目が覚める。
そして6年の苦労が報われる以前――冒険者になるところから、オレの冒険は始まった。