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マイナス14体目 破滅へのカウントダウン

 高校生になり活動制限が解けたオレたちは躍進(やくしん)した。

 5月頃には、レベルも35に上昇。

 他の3人は40を超えている。


「差が付き始めたな……」

「分身は経験値が入らないからな……。まあシュナイダーも、実体を得たら一気に追いつけるだろう! 多分!」


 清川の励ましも、あまり身には染みてこなかった。

 最近は虚像の分身を見抜く魔物ばかりになっている。

 これでは経験値も入ってこない。

 まだ焦りはない。

 しかし、思うところはある。


「実体のない分身なんてゴミみたいなものだからね。戦闘中あまり使ってないけど、能力レベルは?」

「確かにゴミだよなぁ。能力レベルは全然だよ。勉強はしてるんだけど上がんないんだよな……」


 ゴミと言われるのも仕方がない。

 他の3人はSPを有意義に使えて順調に実力を付けている。

 オレは実体分身が芽生えた時に備えてSPは残している。

 そのため実力は思ったほど伸びていない。

 肝心の能力のレベルも使用頻度が減っているからか、まるで上がらない。





 夏休みの終わり頃には、さらに差が広がった。

 まず長期休暇に入った時点で、いい加減ボスに挑むことになった。

 オレが安全マージンを取れていないが、他の者が高いから問題ないという判断だ。


 そしてオレがレベル40に至った時点で、のぞみはレベル50になった。

 清川とクマーに至っては、レベル55を超える。

 2人は金にものを言わせた高火力と特異性の高い能力ゆえに、経験値が多く渡ったのだ。


 この頃にはオレも、焦りが出てきていた。

 分身はレベル17になった。

 残すところレベル3――されど3だ。

 20に至る頃には、一体どれだけの差ができるか想像できない。

 それどころか20になっても実体が芽生えなかったらと考えると、そこには恐怖しかなかった。


「塔也君。焦らなくて平気だからね。今だって私より役立ってるぐらいだし、きっと能力もレベル20になったら、実体を作れるようになるから」


 焦らなくても平気とは、のぞみ談。

 日頃から励ますようなことを言われ、逆に惨めにさせられる。


「そうそう。魔法だって一応通用してるし、気にすることなんてないさ。強力な能力なんだ。大器晩成になるのも仕方ないって!」


 口の悪いクマーすらも、皮肉を混ぜずに励ましてくれる。

 それすらも今は、心臓に(くぎ)を刺し込まれるように心が痛むのだが……。


「組もうと言い出したのは俺だからな。いくらでも付き合うとも!」


 清川も平常運転に見えて、かなり気を使っている。

 早く地獄のようなこの時間を終わらせたい。

 オレは毎日、そんなことばかり考えていた。

 そんな(はり)(むしろ)な状況は、オレが2年生に上がるまで続いた。



 4月上旬。

 その頃には、レベル差は限界近くまで迫っていた。

 オレがレベル47なのに対し、2番目に低いのぞみですらレベル73だ。

 40階層を突破し、50階層のボスも倒すことはできた。

 しかしボスを倒した際、オレだけが51階層以降の挑戦権を得られなかった……。


 自身のレベル上げは後回しにして、まずは分身をレベル20にする方針になった。

 待たせるわけにはいかないと、オレは必死に修行した。

 しかし能力がレベル19になった時点で、察してしまう。

 次のレベルに必要なSPは、1のままだった……。


 その辺りからだろう。

 みんなの態度が変わり始めたのは。


「おはよ~」

「……ん? ああ。おはよう」


 清川は、これまでに比べテンションの低い返事を返してくる。

 まるで急に、精神的に大人になった(・・・・・・・・・・)かのようだ。

 高校生になって後輩もできたとはいえ、突然のことだった。


 少し前からブツブツと、これまで以上に独り言も言うようになっている。

 だが、次元を超えただの、時間のズレがどうのだの、自問自答している様子もあった。

 良い意味でのバカさ加減は健在(けんざい)なようで、そこには安心した。



 クマーに関しては、目を逸らし汗を大量に掻きつつフォローを入れてくる。

 嘘が下手なため、強引に励ましているのが丸分かりだ。

 それでも気を使ってくれているのが分かるだけに(つら)い。

 




 そして、運命の時が来た。

 ついに分身のレベルが20へ至り、自身のレベルも48になった。

 しかし実体は生み出せず、新たな能力として追記されることもなかった……。


「小並ちゃんごめんね。パーティーは続けたいと思ってたけど、これ以上は……」

「そう、だよな……」


 当然の反応だ。

 清川に至っては冒険者活動を休みがちで、パーティーを組む回数事態も減っている。


「レベル差があるのに一緒に居るのは、お互いのためにならないもんな」

「……ごめんね」


 謝罪すべきはオレなはずなのに、クマーが謝ってきた。

 そんな空気が暗いまま帰宅し、事は夜中に続く。


「塔也君。大丈夫? 辛くない……?」

「……これからどうするかな。やっぱり魔法か?」


 分身には芽が出なかった。

 ならばやはり、魔法にSPを振ってやり直すのが正解か。


「……実体分身は諦めちゃうの?」

「努力はしてきただろ。……何年も。それでダメなんだから、そっちの才能なんて最初からなかったんだよ」


 オレは冒険者カードを取り出し、ステータスを開いた。

 そして整理された能力や魔法の一覧を確認する。


「塔也君は、頂上はもう目指さないの……? 智恵さんの願いでもあるんだよ?」

「…………もう少し考えてみるよ」


 智恵さんの名前を出されては、やけにはなれない。

 カードを横に投げ出し、オレはベッドに身を沈めた。

 そして最悪の事態は、翌日に起こる。


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