表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/71

マイナス13体目 ゴリラ

 年月は加速するように過ぎていった。

 まずは恩師が亡くなってから、落ち着いてきたある日の図書館での出来事。

 いつものように本を読んでいたら、レイナが話し掛けてきた。


「塔也さん。医学系の本を読んでいるんですか?」

「ああうん。能力を覚えたくてな」

「治療系の能力をですか?」

「ん~。治療というより実体の分身を作るためだな。医学系の知識が深くなれば、怪我した時の生存率が上がるっていうのもある」


 智恵さんの一件から医学の大切さを強く感じた。

 応急処置などの知識は1年間での教えで覚えた。

 現在は専門的なものにも手を出している。

 人体に詳しくなれば、実体分身(・・・・)(かて)になるはずだ。



 続いてある日の活動日。

 清川は、とんでもない武器を持って来ていた。


「清川お前、なんで銃なんて持ってんだよ……」

「資格ならばちゃんと得たぞ? 手数を稼げる武器が欲しいと思っていたからな。薬物や爆薬は悪くないが、使いどころが難しいしな」


 本体だけではなく弾丸もかなりの額になるはず。

 だが清川は他で稼げているため、金銭的燃費はあまり気にしていない節がある。


「魔造科学だっけ? あれは覚えられそうにないか」

「うむ。相も変わらずカードにも出ないな。多少興味はあったが、自力で作ってこそだから気にせんさ」


 清川以外の3人は得るものがあったから、少し悪い気が……しない。

 こいつはこいつで、動画のネタを手に入れたのだから対等だ。


 無幻弾というのは、ようは魔力を効率よく矢にできる宝珠だった。

 職人に加工を頼んで、現在はのぞみの弓に装着している。



 事件を機に、それぞれ冒険者として一皮剥けたと思う。

 遊びはするが、戦闘中などの集中力はこれまでの比ではない。

 20階層ボスの狼の亜人もあっさり討伐できた。

 そしてオレたちは、高校生になる。



 高校生にもなると、同年代の活動者が爆増する。

 そんなある日のこと。

 清川が魔塔内部にて、昔の知り合いを見つけ出した。

 すると清川(バカ)はポーズを取り、指を差しつつ宣言した。


「む! そこに居るのはイエローゴリラだな!」

「誰がゴリラよ!? って、清川君に小並君じゃない。久しぶりね」


 オレが小学生の時のクラスメイトだ。

 彼女には毎年のように腹パンされていた記憶しかない。

 毎回力任せに殴られ、強引に事を運ばれたものだ。


「……こんにちは」

「……なんで距離を開けるのよ」


 開けるなというのは無理がある。

 一体何回、ゲロを吐かされたことか。


「そりゃあ……まあ、うん……。ゴリラだし」


 ゴリラと発言した瞬間、彼女の姿がブレた。

 次の瞬間には目の前に現れ、拳を構えていた。


「ちょ――ぶっはぁ!」


 ちょっと待ってと言えず、拳はオレの腹へとめり込んだ。

 オレのレベルを見極め調整したようで、絶妙な力加減で悶絶(もんぜつ)させられた。


「前に言ったわよね。その呼び方をしたら殴るって」

「そんなんだから、ゴリラって呼ばれるんだよ……」

「おいやめろシュナイダー! これでは俺がっ――」


 オレは痛みに耐えながら清川を盾にしつつ宣言した。

 最初にゴリラと言い出したのは清川だ。

 犠牲にならないのは気が済まない。


 それでも少しだけ計算外なことがあった。

 清川(こいつ)の防御力は高い。

 にもかかわらず、一撃で沈められるとは思いもしなかった。

 想像以上に高レベルなようだ。


「2人とも中々鍛えてるわね。えーっと……絆地さん? も、久しぶりね」

「う、うん……。2人とも平気?」

「へー。凄いや。清ちゃんまで一撃だなんて。ゴリラって呼ばれるだけのことはあるね。黄ゴリラってことは別の色のゴリラも居るの? やっぱ赤と青は外せないよね! 下着の色ももしかして黄色っ――」


 クマーも自ら地雷を踏み抜き、結果地面とキスをした。

 これで3バカ全員が腹パンを貰いお揃いとなった。


「私の名前は≪木崎(きざき) ミナミ≫よ! 失礼な呼び方しないでよね!」


 そういえば、そんな名前だった気もする。

 言われるまで完全に忘れていた。


「えっと……。木崎さんも冒険者なんですか?」

「ミナミで良いわよ。冒険者名もミナミだから。絆地さんは?」

「私は、のぞみっていう冒険者名です」


 冒険者名は黄ゴリラにしたらどうだ。

 そう口にしようかと思うも、寸前で口を閉ざした。

 言えば最後、殴られる未来しか見えない。


「そう……。あなたたちの制服って専門校のよね。将来は公務員志望? もし自衛隊志望なら、良い人を紹介してあげるわよ。商人志望なら私が面倒を見てもいいけど」

「自衛隊とか規則とか厳しいから無理。接客業も対応で死ねる」


 規律だのルールだのと、面倒なことこの上ない。

 オレは自由な身で居たい。


「相変わらずね……。まあ、ここで会ったのも何かの縁だし、連絡先を交換しましょう。ほら小並君、冒険者カード出して!」

「そっちも相変わらず押しが強いな。その服って……どこのだっけ。お嬢様学校?」

「ええ。周りからはそんな風に言われてるわね。あなたが住んでるところから、電車一本なはずよ」


 適当に言ってみたら当たった。

 制服の違いなどオレには分からない。

 だが昔からお嬢様的なところがあったから想像通りだ。


「じゃあ、そろそろ行くか」

「待ちなさいよ。せっかくなんだからお茶しましょう。奢るわよ」

「奢ってくれるなら行く」


 オレは奢るという言葉に秒で釣られた。

 貰える物は要らない物以外貰う主義だ。

 特に食べ物なら拒否しない。


「ふむ……。たまには休みにするか」

「ぼ……ボクはお腹が痛くて食欲ちょっとないかな……」


 などと供述しているクマーも、数十分後には山のようにお菓子を食べるのであった。

 奢って貰った高級店のお菓子は、美味であったことをここに記して置く。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ