魔法の授業(1)
昼になった。
十人ほどのこどもたちが、畑の周りに集まっていた。シロイが用意したかかしがあった。九歳から十四歳までの子供たちである。これから魔法の授業を受ける。まだ、授業を受ける年齢ではない九歳を迎えていない子供もいた。やることがないまま、村の中にいると、大人から何かを手伝わされてしまうから、それを避けるためにいるのである。授業を見学するという言い訳である。ただ、ノエルはいなかった。
そこにアランがやってきた。
「いますか、みなさん。」
アランはいった。彼は、こどもの人数を数えた。
「ちゃんと集まれていますね。この村の子供たちは、しっかりしています。」
アランはさらにつづけた。
「今日は、魔法を学びます。言われている通りのものです。火の魔法が実際にできるかどうか確かめます。そのために、みんなの前でやってもらいます。もうすでに魔法を使える子もいるでしょう。だけど、その子たちも忘れてしまって、使えなくなっていないかを確かめなくてはいけません。そのためにやってもらいます。」
シロイが用意したかかしは結構な高さである。そのかかしより背の低い子どももいる。アランはかかしを指さしながら言った。
「あのかかしに向かって、火の玉を放つ呪文を唱えます。火の玉を放って、あのかかしにあててもらいます。ただ火の玉を放つだけではなく、ちゃんとかかしに当てないとだめです。火の玉を放てても、見当違いの方向に飛んで行ってしまったら、どうしようもありません。ちゃんと狙った方向に当てるのも魔法の一部に含まれています。」彼は、さらにつづけた。「これは一番初歩の初歩の魔法です。これができなかったら、ほかの魔法はできないものです。では、一人目からやってみてください。」