シロイ、授業の準備をする。
シロイは、アランから頼まれたとおり、使われていない畑へと向かった。そして、シロイはアランに言われた通りのことを始めた。
何もない畑である。そこにカカシを持ってきて、真ん中に立てる。それだけである。カカシは、村から、そのまま抱えて、持ってきた。
すると、男の子がひとり、近くで自分をみていることに気づいた。ノエルである。村の子供である。シロイよりも5歳ほど年下である。シロイは、ノエルには話しかけないで、無視をすることにした。しかし、ノエルは近づいてきて、シロイに聞いていた。
「なにしてるの。」
シロイは億劫だった。ノエルはその年ごろの子供たちがそうであるように、好奇心がとても強かった。そして、自分が気になったことを周りに質問するこどもであった。それがいけないというわけではないが、延々質問ばかりしてくるこどもを相手をするのは骨が折れる。だから、無視し続けようかと思ったが、答えることにした。
「授業の、準備を、している。今日、お前も受けるのだろう。」
「そうだよ。どんなことするの。」ノエルはすかさず聞いてきた。
「魔法の授業だよ。火の魔法を使うことを学ぶ。火の玉を起こして、このカカシに当てる。」
「そうなんだ。魔法ってさ」さらに、ノエルは聞いてきた。「それ以外にほかにはどんなものがあるの。」
「たくさんだよ。」
「たとえば。」
また聞いてきた。面倒になってきた。
「うんとたくさん。傷を治す魔法や、電撃を放つ魔法とか、それこそ、火の玉じゃなくて、絨毯のように、とても広い範囲に火を起こす魔法もある。」
「全部でどのくらいあるの。」
「そんなこと、自分が知っているわけないだろう。数えようにも、中には、存在することが秘密にされて封印されてしまって魔法もあるらしい。数えられないものさ。」
「どうして、秘密にしているの。」
「その理由も、秘密になっている。そもそも、秘密にされていることすら秘密になっているから、そういう魔法が存在することすら知られていないらしい。」
「なんで、秘密なのに、シロイはそのこと知ってるの。」
もう億劫である。
「そういえば、」シロイはふと思い出し、ノエルに聞いた。「お前、何歳だ。」
「8歳だよ。」ノエルは答えた。
ノエルの答えを聞いて、シロイはいった。
「9歳からだ。」
ノエルは何を言われているのかわかっていないようだった。
「今年じゃない。来年からだ。お前が魔法術の授業を受けるのは。8歳からじゃなくて、9歳になってからだ。」