アラン、シロイに頼み事をする。
次の日になった。
朝、シロイの父はすぐ出かけていった。隣の村へ、村長の手紙を届けに行った。手紙以外にも運ぶものはあったらしい。隣町まで結構な距離がある。歩いて三時間はかかる。往復すれば、七時間近くかかってしまう。シロイが朝起きたときはまだいたが、すぐにいなくなってしまった。父は出かけるときに、シロイに向かって、村へ行って、手伝えることはないか聞いてこいと言った。
シロイは、村の図書館へ行った。図書館と言っても、単に村に存在する本を一か所に集めた建物をそう呼んでいるだけである。アランという男に会いに行った。アランはそこにいることが多い。アランとはシロイの教師である。村の外で教育を受けた人物はこの村にはアランを含めて、ほんの数人しかいない。図書館にある本もアランを含めて、村の中の数名しか理解できない内容のものばかりである。シロイも内容は理解できない。
「かかしですか。」シロイはアランに言われたことをそのまま返した。
「そうです。かかし。」アランは答えた。「今日の午後、魔法の授業があるでしょう。あなたも受けますよね。そのときに、的になるものが必要になるんです。それを用意してほしいのですよ。それで、もう使っていない古いカカシがあるから、それを使ってください。」アランはそう言った。
「わかりました。」断るわけにもいかなかった。「でも、いいのですか。」シロイは聞いた。「カカシを的に使ったら、燃えてしまうのでは。」
「大丈夫ですよ。燃えるわけがありません。そんなに強い魔法ではありません。もしも、心配なら水でもかけておけばいい。」アランは続けた。
「本当だったら、私がやるべきなんでしょう。だけど、私は今日、これから、予定が入ってしまったんですよ。なので、君が代わりにやってくれませんか。」
シロイは承諾することにした。単純に自分がやりたくないだけだろうと思い、アランにその予定とはなんであるのか尋ねようと思ったが、思いとどまった。