アラン、シロイの家に行く。
5時間ほど経った。もうすぐ、朝も終わるころである。
村人は恐る恐るではあるが、外に出て、それぞれ、動き始めていた。誰かが出てもいいと号令をかけたわけでない。外に出ても、大丈夫だといったわけでもない。しかし、最初のひとりが家の外に出て、それにつられるように、ひとり、またひとりと外に出てくる。そういうものである。
アランはシロイの家に行った。
クルトがいた。クルトは、窓から、山のほうをじっと見ていた。彼は山を見張っていたのである。村を襲った男は山の中に潜んでいて、山から村に降りてきた。山の中から誰かがやってくる場合、このシロイとクルトの家の前をおそらく通るはずだからである。
「どう思うよ。」クルトが聞いた。
「なにが。」アランは聞いた。
「まだ誰か潜んでいるかどうか。」クルトは山の方向を見ながら言った。
「わからないとしか。」アランは言った。
「山の中に入って、だれかがいないか調べてみたほうがいいのではないか。」クルトは言った。
「いいや、やめたほうがいいと私は思う。あの男、あれだけの力を持っていた。どんな奴が潜んでいるか、見当もつかない。」アランはそう答えた。
「そうだろうなあ。」クルトは言った。
「というか、わざわざ、ここにいて、見張らなくてもいい。」アランはいった。
「どういうことだ。」クルトは聞いた。
「これから、村全体を覆うように、結界を張る。もし、村の外から、誰かが来たら、すぐわかる。だから、見張る必要はいらない。」
「なんだ。そうなのか。」
「無駄なことをさせてすまなかったな。」
「いいや。しかし、結界を張ったところで、破られてしまうのじゃないか。」クルトは言った。
「その通りだ。でも、破られたことはすぐわかる。それよりも」アランは尋ねた。
アランは聞いた。「君の息子はどうしている。」
「部屋だよ。」
「起きているのか。」
「寝かせているよ。一晩中起きていたからな。」
それを聞くと、アランはシロイの部屋の方向を見た。部屋へとつながる入口に扉はない。シロイはこの部屋の奥にいる。しかし、ここからはシロイの姿は見えなかった。
「すこし、話をさせてもらう。」アランはそう言って、アランはシロイの部屋へと向かった。シロイを起こしてしまうことになる。しかし、仕方ないと思った。