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ノエル、山へ(4)

 ノエルは気が付いた。山のかなり奥に入ってしまっていた。奥に行かないように気を付けていたつもりだったけれど、野草集めに夢中になってしまっているうちに、村から離れたところまで来てしま

ったらしい。

ノエルは思った。自分は今まで、これほど山の奥に行ったことがない。まるで、村とは全く別の場所に来てしまったようである。と言っても、実際、村に戻ろうとすれば、十分もかからないだろう。奥と言っても、遠くに来てしまったわけではない。しかし、村とは見えない壁で隔てられた、まったく別の場所にいるようだった。

 ノエルはあたりを見渡した。今、山の中には自分以外、誰もいないようである。村の人は、山に来ていないようだった。

 ふと何かが見えた。一瞬であったが、遠くの木の影から、誰かが自分をみていた。そして、こちらがみていることに気が付いたのだろうか、すぐ姿を消した。明らかに人だった。動物ではなかった。

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