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村役場の一階(2)
ふと、扉の向こう、外から、こどもがひとり、こちらをのぞき込んでいることに気づいた。村のノエルという少年だった。
「どうしたんだ。」と声をかけてみる。すると、ノエルは外から中に入ってきた。
「あのさ。」そして、こう聞いてきた。「ルルちゃん、結婚しないってほんとうなの。」
「誰がそう言っていたんだ。」男はそう答えた。
「かあちゃん。」
「違うんじゃないか。そのような話は聞いてない。」
「そうなの。」
「延期だろ。2週間ぐらい延びたという話は聞いている。」男は答えた。
「なんでさ。」
「引っ越しのために、手配していた御者が延期を頼んできたとか聞
いている。」
「なんで。」
「しるわけないだろう。御者の馬車が壊れたりしたんじゃないのか。」
「そうなの。」
何もしないでただ座っているのは面倒である。しかし、暇だからと思って、子供に声をかけてみたはいいが、が、子供の相手も同じくらい面倒だと男は思った。男は言った。
「それよりも手伝いとかしなくていいのか。誰かから手伝えって、言われていないのか。」
「言われたよ。父ちゃんから。」
「なんでやらないんだよ。」
「いやだもん。」