シロイ、家へと帰る。
授業が終わった。シロイは、畑を離れた。片付けはしなくていいとのことだった。家に向かって歩いていた。村ですることがあったわけでもなかった。家に父はいないだろうが、帰ることにした。
誰もいない道を一人で歩いていた。静かであった。そして、のどかであった。
すると、どこからか「シロイ。」と自分を呼ぶ声が聞こえた。声が聞こえた方向を向くと、少女が立っていた。
「終わったの、授業。」
少女は言った。彼女の名前はミドリという。シロイと同じくらいの歳である。この村の少女で、幼い頃からずっとシロイのことを知っている。
「終わったよ。」
「帰るの。」
「うん。」シロイは答えた。
「アラン先生に、授業の準備をやらされたんでしょう。」
「そうだよ。朝、準備をした。」
「面倒なことを押し付ける人ね、アラン先生って。」
「別に構わないよ。」
「まあ、私もあの人のこと、昔から知っているから。」
「気にしてないよ。」シロイは答えた。
「そう。」ミドリはいった。すると、少しだけ沈黙が流れた。ミドリはさらに、聞いてきた。「それで、どうだったの、魔法の授業。」
「別に。」シロイはそう答えた。
「ダメだったの。」
「ダメだった。魔法は使えなかった。」ミドリもシロイが魔法を使えないことは知っているのである。
ミドリはそれ以上何も言わなかった。