魔法の授業(4)
「それは」シロイは答えられなかった。
ほかのこどもたちはシロイを遠くにあるものをみているような目で見ていた。自分よりも年長の人間が、自分たちは簡単にできることができないのだ。
アランは続けた。
「私だって、魔法が得意というわけではない。だけど、これくらいのことはできます。」
そういって、アランは左手をかかしに向けた。そして、呪文を唱えた。しかし、何も起こらなかった。
「あ」とアランは言った。彼はもう一回、呪文を唱えた。しかし、やはり、何も起こらなかった。「魔法が使えない。」と彼は言った。
「先生。どうしたんですか。」ひとりの少年が聞いた。しかし、アランは返事をしなかった。
そして、もう一度呪文を唱えてみた。しかし、やはり何も起こらなかった。
「でも、そうとはいっても、調子が悪いとか、体調とか、そういうのも含めて、魔法は多くのことに影響されるらしい。そんな簡単ではないものなのです。私たちが知っていることはごく一部で、まだまだ全然わかっていないこともたくさんあるのです。とても奥が深いものなんだ。そういうことも覚えておいてください。シロイ、戻りなさい。」
シロイはアランに言われた通り、そのまま、自分がもといた場所に戻った。
「次の子。きみが最後かな。」とアランが言った。
次のこどもが最後だった。そのこどもは呪文を唱えた。その子供は魔法を使うことができた。火の玉がはなたれ、その火の玉はかかしに当たった。シロイができなかったのが不思議に思えるくらい魔法を使うことが簡単にできてしまった。結局、シロイ以外の全員が火の玉を放つ魔法をつかうことができたのである。
そして、魔法の授業はそれで終わった。