魔法の授業(3)
やがて、シロイの番になった。
「シロイですか。」アランはシロイを見て、一瞬考えこんだ。「とりあえず、やってみなさい。」
シロイも、かかしの近くに立った。そして、言われた通り、呪文を唱えた。シロイが呪文を唱えたのはそこにいる全員に聞こえた。しかし、何も起こらなかった。
アランはそれをみて、言った。
「やっぱり。もういっかいやってみなさい。」シロイはもう一回やってみた。しかし、結果は同じだった。アランはシロイに近づいていった。
「シロイ、今の時代、魔法が使えなかったからといって、困るものでもありません。そもそも、魔法というものは、便利に使うものでも、役に立つためのものでもない。もっと大切なことはいくらでもあります。だけど、シロイ。お前が今やっていることは難しいことではないはずですよ。ここにいる子はもちろん、この子たちよりも小さい、5歳の子でも、できる子はできる魔法です。できないほうがおかしいものなんですよ。」
アランが言う通り、シロイは魔法術を使うことができなかった。この村の全員が知っていることだった。ここにいるこどもたちもみな知っている。村中の人間が個人の差はあれど、火の魔法を使うという最低限の魔法はできた。しかし、この村では、シロイだけができなかった。
アランはさらにいった。
「魔力があるのかどうか、調べてもらったこともあるのでしょう。あったんでしょう。魔力があるのに、なんでそれを使うことができないんですか。」