魔法の授業(2)
一人目は少女だった。少女は、かかしから5メートルほど離れたところに立った。そして、かかしに両手のひらを向けた。そして、呪文を唱えた。
少女の手のひらから火の玉がはなたれた。それは、かかしに向かって、まっすぐ飛んでいった。火の玉は石を投げつけたほどの勢いで、かかしにぶつかった。しかし、かかしに火が付き、燃えることはなかった。その表面を軽く焦がして、火の玉は消えた。
アランは少女をほめた。
「うまくいきましたね。では、次の人。」
次のこどもも、前の少女がやったように、かかしから少し離れたところに立ち、手のひらをかかしに向けた。そして、呪文を唱えた。同じように、手のひらから、火の玉がはなたれ、かかしにぶつかった。そして、消えた。
「うまく、できましたね。では、次。あなたがこれをやるのは、はじめてですね。」
次の少年は、9歳だった。彼がこの魔法の授業を受けるのははじめてだった。
「うまくいかなくても、大したことないです。だから、あんまり緊張しないように。」と、アランは少年を励ました。
少年はかかしのそばに立ち、ほかのこどもたちがやったように呪文を唱えた。すると、火の玉が放たれた。しかし、それはかかしに当たらず、かかしの少し右上を飛んでいき、数メートル後ろに落ちた。火の玉は土の上で消えた少年は「あっ」と声を上げた。
「失敗してしまいましたね。もう一回やってみなさい。」とアランは言った。少年は言われた通り、同じようにもう一度呪文を唱えた。しかし、何も起こらなかった。
それをみて、アランは言った。
「魔力が尽きてしまったようですね。人が一日に使える魔力の量は決まっているものです。できなかったからと言って、落ち込むものでもない。また次のときに、できるようになっていればいいのです。」
そう言われると、少年はもといた場所に戻った。