エンド8 セーブしてみて
本日13時より幾つか短い小説を投稿します。是非是非そちらも作者のページから見て頂ければ~
「あぁ?見ねぇ顔だな?テメェは誰だ?」
「俺?俺は、勇者様だが?」
その言葉を発した瞬間、暗殺者ギルドのモノたちは動いた。
腕を引かれ、そのまま部屋へ引き入れられ、組み伏せられる。
大量の刃物が、聖夜の急所に突きつけられた。
「勇者様が何のようだ?ア゛アアァァァ????」
脅すような声で尋問が行われる。
聖夜も少し恐怖を感じたが、その心を理性が押し込める。
そして、不敵な笑みを浮かべた。
「いやぁ。別にお前たちに害をなそうとしてるわけじゃねぇよ。ただ、王城からかっさらってきたモノがあるから、それを持ち主に返そうって言う慈善活動をしようとしてるだけだ」
「は?慈善活動?勇者様も大変だなぁ。……で?そのかっさらってきたモノって何だ?」
暗殺者ギルドのモノたちは、少しも聖夜へ突きつけた刃物を動かすことなく尋ねる。
聖夜はその容赦のなさに苦笑した。
そうして笑うと、刃物の圧が少し強まったような気がして、急いで返答を返す。
「お前ら、セプティアって言うヤツを知ってるか?そいつの形見らしいんだが」
「ほぅ?セプティアか。……いいだろう」
聖夜から刃物が放される。
それから、聖夜の前に手が差し伸べられた。
聖夜はその手を握り、立ち上がる。
「で?それをセプティアに届ければいいのか?なら、預かってやろう」
聖夜を立ち上がらせた男が、手を差し出してくる。
だが、聖夜は首を振った。
その反応を見て、男は怪訝そうな顔をしたが、
「実は俺、セプティアを仲間に引き入れたくてな。1度会ってみたいんだ」
「あ゛ぁ?お前、形見をダシにパーティーメンバーにしようってのか?」
また周りから刃物の気配を感じる。
聖夜は冷や汗が出てくるが、また心を押さえ込んだ。
それから、弁解を行う。
「違う違う。断られたとしても、形見は返してやるさ」
「……ちっ。俺たちも、その様子は見させて貰うぞ」
「ああ。構わない。じゃあ、セプティアのいる場所まで案内頼めるか?」
「仕方ねぇな。ついてこい」
後庫が聖夜を連れ、暗殺者ギルドから出て行く。
その背中を見ながら歩いていると、ふと途中である考えが浮かんだ。
そこで、男にばれないように聖夜はあることをした。
《セーブ1にセーブされました》
5回死んで達成した実績の報酬。
セーブの機能を使ってみた。
もしかしたらセプティアの勧誘に失敗するかも知れないし、ここでセーブするのがベストだと考えたのだ。
「ここだ。絶対に形見は返せよ」
「ああ。分かってる」
聖夜が案内されたのは、前回セプティアに連れられた家だった。
ーーここなら、わざわざ暗殺者ギルドを仲介しなくても良かったかも知れないな。
そんなことを聖夜が考えている間に、
コンコンッ!
と、ここまで案内押してくれた男が、扉をノックした。
すると、少しだけ扉が開き、セプティアの顔が覗く。
「ん?何の用だ?」
「用があるのは、俺じゃなくてコイツなんだ」
男が、後ろに控えていた聖夜の方を指さす。
聖夜の顔を見て、セプティアは首をかしげた。
ーーまあ、知らないヤツが訪ねてきたらこんな反応になるよな。
「用って言うのは、コレなんだが」
聖夜はそう言って、ペンダントを取り出す。
すると数秒、何だそれは、という顔でペンダントを見ていたセプティアだったが、形見だと理解して表情を変えた。
驚愕で目を見開き、ペンダントと聖夜の顔を交互に見る。
「お前!それをどこで!?」
「落ち着け。王城から貰ってきただけだ。なんと言ったって、俺は勇者だからな」
聖夜はそう言って胸を張った。
だが、セプティアからの視線は厳しくなる。
自分のことを勇者とか言うヤツは、頭がおかしいとしか思えないのだろう。
「まあ、俺が勇者かどうかはどうでもいいとして、これ、いらないのか?」
聖夜がペンダントを見せながら尋ねる。
セプティアは怪訝そうな顔をして、暗殺者ギルドの男の方を見る。
セプティアとしては、聖夜のことが信用できるのか確認したかったのだが、男も出会ったばかりで人となりなどさっぱり分かっていないので、微妙な顔をして苦笑するくらいしか出来ない。
「まあ、いいや。ほら。受け取れ」
「え?あ、ありがとう?」
このままでは話が進まないと考え、聖夜はペンダントをセプティアに押しつけた。
セプティアは首をかしげながらも、お礼を言って受け取る。
それを見てから、聖夜は本題を切り出した。
「それで、ここからは提案なんだけど。……もし、お前さえ良かったら、俺と一緒に、魔王を倒しにいかないか?」
「………は?」