エンド4 暗殺ギルドへご招待
「私は、母の形見を王族に奪われたんだ。だから、王族から形見を取り戻したい。ただそれだけだ。……とっ!そう言えば、自己紹介もしてなかったな。私はセプティア。よろしく」
女性こと、セプティアは手を差し出してきた。
セプティアの外見は、全身黒いローブをまとい、フードを深く被っていて、顔や体つきはよく分からない。
聖夜はセプティアを観察しながら、手を握り返して自己紹介を。
「俺の名前は聖夜。よろしく」
「ああ。セーヤ、よろしく。それじゃあ、早速打ち合わせをするぞ。ついてこい」
聖夜はセプティアに言われたとおり、その後ろをついて行った。
通る道は裏路地のような場所で、あちこちに人が倒れている。
臭いも強く、聖夜は鼻をつまみながら厚板。
「ここだ。……って、どうした?鼻なんて押さえて。鼻血でも出たか?」
セプティアは、とある扉の前で到着を宣言した。
そこで初めて聖夜の姿を見て、聖夜が鼻を押さえていることに気付く。
その表情に、心配の色が浮かんだ。
「きにしゅるな。それより、はやく」
聖夜は少しでも速くこの臭いから解放されたかったため、鼻をつまんだ状態の変な声でセプティアを促す。
心配そうな顔をしながらも、セプティアは中へ入っていった。
聖夜もそれに続いて入っていく。
「……ふぅ。かなりマシになった。お前、よくこんな臭いの中で平然としていられるな」
「ん?臭い?そんなに変な臭いは感じなかったが」
聖夜の言葉に、セプティアは首をかしげた。
不思議そうにしながらも、セプティアはフードを脱ぎ、近くの椅子に座る。
それによってあらわになるセプティアの可愛さに、聖夜は心を動かされかける。
ーー2次元女子と同レベルで可愛いだと!?あ、あり得ない!
ボサッとしているが、どこか引き込まれるようなショートの赤い髪。
クールな雰囲気を醸し出す光のない目。
「どうした?ぼぉっとして」
「え?あ、ああ。何でもない。ただ、異世界にまだなじめてないと思っただけだ」
聖夜は慌ててごまかす。
恋愛に年齢は関係ないと理解はしているが、それでもいい年して若い子に見とれてたとか、口が裂けても言えないのだ。
とは言っても、今の聖夜の見た目ならそこまでおかしくはないのだが。
今の聖夜の肉体は、10代後半くらいになっている。
チート能力ではないが、神から与えられた特典の1つだ。
だからこそ、兵士たちから追われながらも筋肉痛になることなく走って逃げられたわけだが。
「本当に大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ。それより、作戦の話をしよう。1番の目的は、お前の母親の形見を取り返すことで良いんだよな?」
「露骨に話題をそらされたな。……まあ、いいだろう。私の目的はお前が言うとおり、形見を取り返すことだ。だが、別にお前まで協力して取り返す必要はない。お前はお前で奴らに復讐すれば良いだろ」
「ん?何を言ってるんだ。お前の目的を優先すべきだろう。俺の復讐なんて、まだまだ機会はあるわけだし。重要なのは、お前だ」
「そ、そうか」
聖夜の力強い言葉を受け、セプティアは苦笑した。
だが、その言葉の意味を考えて、顔を赤くする。
ーーもしかして私、口説かれてる?
重要なのは、お前だ。
という部分が、口説いているように聞こえなくもないが、そこまで考えるモノは少ないだろう。
意外と、セプティアは脳内お花畑なのだ。
「じゃ、じゃ、目的は私の形見の奪還ということで良いのか?」
「ああ。もちろんだ。考えられる作戦としては、潜入したり色々ありありそうだが」
それから2人は、どうやってセプティアの母親の形見を取り返すか話し合った。
考えを出し合い、却下したり、保留になったりしていく。
そして、1時間ほど時が経ったところで、
「よし!コレで決まりだな!!」
「ああ。コレなら行ける!私たちは天才かも知れないなぁ!!!ハハハハッハ!!!」
「そうか?まあ、そうかも知れないなぁ。フフフフフフフ」
2人は笑みを浮かべた。
考えまくって頭がおかしくなり、ちょっと荒の多すぎる作戦が完璧だと思い込めるようになってしまっている。
とは言っても、作戦には時間が掛かるから、きっと、どちらかが問題に気付く。……はず。
「それじゃあ、作戦のために、お前を連れて行くとしよう」
「ああ。頼む」
聖夜とセプティアは立ち上がった。
そして、作戦に必要な場所へ向かう。
その場所は、
「ここだ」
「そうか。ここが、暗殺者ギルドなのか」
聖夜は、目の前の建物を見上げる。
見た目は他のモノとほとんど変わらない。
だが、よく見てみると色々な所に防犯対策がされいることが分かる。
コンコンッ!
「帰る場所は?」
「明日の闇」
厨二病臭い合い言葉を平然とした顔で口にするセプティア。
聖夜は、絶対にこの合い言葉を自分で言いたくはないと思った。
………もちろん、フラグである。
「ん?セプティアじゃないか。珍し、……っと。連れがいるのか」
建物から入れ墨を入れた男が顔を出した。
反応から考えて、セプティアの知り合いだと分かる。
聖夜は自己紹介でもしようと思ったが、
「まあ、中に入れ。兵士に見つかってもまずいしな」
「そうさせてもらう」
先に中へ誘導された。
建物の見た目は普通の大きさだったが、実際の中身は広い。
不思議な仕掛けがされているようだった。
「セプティア。何のようだ?お前の形見のために王城へ盗みに入るなんて無謀なこと、協力できないぞ」