75:一番弟子と二番弟子
それから、グラシアルは半ば強制的にアウローラの弟子にされた。
兄弟子のエペはものすごく性悪で、ことあるごとにグラシアルを追い出そうとしてきて、ぜんぜん兄弟子らしくなかったが、アウローラ至上主義という一点だけは共感が持てた。
だからこそ……アウローラが息を引き取る直前の提案を、グラシアルは呑んだのだ。
グラシアルはめきめきと魔法の実力を付け、氷魔法を極め、自分を虐げてきた人間に復讐した。やりすぎてアウローラに止められたが、後悔はしていない。
全て自分で選択してきたのだ。彼女を追って転生したことも。
ただ、今世に来て不安もある。
同時に転生したであろう兄弟子の行方が全くわからない。王子の権力を使っても見つからない。
あの性格ならば、どこかで何かしら大きな問題を起こしているはずなのに。
(あいつは僕と違って、性格以外は腹が立つくらい器用だから。大暴れせずとも、上手い具合にやっているんだろうね)
城下の魔法使いの保護も完了し、主犯はラムが捕獲してくれた。これで、今回の事件は解決するだろう。
でも、犯人の処遇についてはちょっと不満だ。バッキバキに凍らせて、粉々に砕いてやりたかったのに。
(それが師匠だから仕方がないけど。死ぬ直前に怒った、エペの気持ちがわかっちゃった。周囲に甘いんだよね、あの人……今回も、聖人を更生させようとしているし。絶対に無理だと思うんだけど)
だが、言っても聞かないのがアウローラだ。それこそ、強制的に閉じ込めでもしない限りは、自由に自分の思いのままに行動してしまう。
そんな彼女をグラシアルは嫌いではないし、だからこそ近くで見守りたい。
でも、求婚を断られた……
(あんな男が師匠に相応しいなんて思えないよ)
まだまだ、グラシアルはアウローラ……――現ラムのことを諦める気はなかった。