139:ハリネズミ大量発生中
大量発生したハリネズミたちを、フレーシュはどうしたものかと眺める。
(放っておいても大丈夫そうかな。地面に落ちている武器は念のため回収して破壊しておこう)
部下に指示を出していると、不意に近くから濃い魔力の気配がした。
振り向くと、最近喧嘩別れした兄弟子が立っている。
にやにやと笑う彼の様子を見て、フレーシュは今の惨状の理由を察した。
彼がわざわざ、大嫌いなフレーシュの傍に姿を現した理由も。
「どうだ、傑作だろ」
「やっぱり兄弟子殿の仕業だったみたいだね。ねえ、あの趣味の悪い形状の武器は、なんなの?」
「モーター教から俺のところに、短納期の依頼が来たんだ。五百年前の例の武器と全く同じもんを作れって。腹が立ったから、見た目をそのままに、中身を改良してやった」
「それでハリネズミ……」
「ああいう、ちまちました生き物は、アウローラが喜びそうだろ。何匹か捕まえて、プレゼントする予定だ」
「たしかに、僕も同じことを思ったよ」
二人とも、アウローラの弟子だけあって、彼女の好みは熟知している。
「俺はこれから、このふざけた武器を発注した奴をシメに行くつもりだ」
「え、それなら僕も行く」
「お前、王位争い中だろ」
「モーター教がいなければ、部下たちだけで余裕だよ? 好きなときに王位に就けるように、すでに根回しは完了しているんだ。だって、完璧な状態で師匠を迎えたいし。師匠にケチをつけそうな要因は、予め潰しておかないとね」
「そういうところだけ周到だな」
「前世と同じようなことになったら困るし? 自分の居場所は掌握しておかないとね」
前世でフレーシュと王は親子だった。
事なかれ主義の国王と、魔力の多さ故に虐げられてきた第二王子。
二人の仲は修復不可能なくらいこじれていて、フレーシュはある程度王宮に嫌がらせをしたあとは極力関わらずにいた。
あのとき、全部潰して自分が王位に就いていれば、アウローラの助けになれたかもしれないのに。
五百年前の自分の未熟さを、フレーシュはずっと悔いていた。
今度は絶対、同じ道を辿らない。