4.落とし物
「す....すごいな、一瞬で倒れたぞ」
「おかしいですね.....弱っていたのでしょうか」
ルアが倒れたオーガを見る。
「まぁ倒せたんだし気にすることないんじゃない?」
「そうですね、さっさと報告して討伐報酬もらっちゃいましょう」
ルアはオーガのツノを切り落とし鞄に入れた。
「俺はもう少しレベル上げしててもいいか?」
まだまだレベル4だしもう少し上げておきたい。
「全然良いですよただ、無理だけはしないで下さいね」
そういうとルアは街の方に歩いていった。
俺はスライムを斬っていく。
ドロップ品はルアからもらった袋に詰める
「ふぅ....これでやっと27体倒したのか」
スライムを倒すのは簡単なんだけど、剣が重くて疲れるんだよな。
「さてそろそろ帰ろうかな....痛っ!」
何か硬いものが頭に当たった。
なんだ? .....これか?
地面に何かが落ちていたので拾い上げてみる。
腕時計....かな?
ガラス越しに歯車やゼンマイが見える、所謂スケルトン時計ってやつだ。
これが当たったのか。
さっきまで落ちてなかったので当たったのはこれで間違い無いだろう。
ていうかなぜ当たったんだ?
周りを見渡しても俺以外人などいない。
まあいいや誰もいないんだし貰っても問題ないだろう。
これが何かは明日確かめよう。
「ジェイル、クエスト報酬貰ってきましたよ」
俺が腕時計をポケットにしまうと街の方からルアが歩いてきた。
「3400サットもらえましたよ、ジェイルはどのくらいドロップ品集めましたか?」
「27匹スライム倒したけどあんまりドロップ品は出なかったよ.....」
「初めて狩るとしたらかなり狩れている方ですよ、ところで剣の腕は上がりましたか?」
正直スライムはたくさん倒したが剣の腕はあまり上がっていない気がする。
「まあまあかな、始めた時よりは上手くなってると思う」
「練習すればいずれ上手くなります、頑張って下さい何かあれば私も手伝いますよ」
ルアはスライムのドロップ品の入った袋を受け取った。
ギルドでドロップ品を売ったら1000サットくらい稼げた。
さて異世界で最初の稼ぎですが俺が今から買うものは決まっていた、そう服です。
割と触れてなかったけど俺、異世界に来てからもずっとパーカーで過ごしてる
だからそろそろ着替えたいのだよ。
それに異世界の服も楽しみたいってのもあるけど。
多分俺的には後者の方がより強い理由だと思う。
....服屋に来たが......まさしく異世界って感じのする服が売ってあった。
「これとかどう? 似合う?」
ルアに見せてみる。
「んー...私はこっちの方が好きですね、凝ってないというか質素な感じが好きです」
かなりの種類の服があったがルアの意見のもとすぐに買う服が決まった。
早速着替えてみることにした。
着心地はいいし見た目もいい。
異世界の服は着てみたかったしこれだけでもかなり楽しい。
着替えようの服も買い所持金はあっという間に減った。
「そうだ、ジェイル」
「何?」
「自分用の剣を買ってみたらどうです?」
確かに今使っている剣は重くて自分にはあっていない。
「そうだな、もう少し溜まったら買うよ」
今はまだ稼ぎが少ないから貯金がある程度までいったら買おう。
「じゃあ今日はあと少し買い物したら帰りますか」
ルアは俺を連れて賑やかな大通りに行く。
「行きつけのお店があるので紹介しますね」
そういうと大通りでも少し人通りの少ない方にある店に行った。
「お、ルアさん今日も色々揃ってやすよ......って兄さんじゃありやせんか」
店から見たことある商人の男が出てきた。
「え? ホルガ、ジェイルのこと知ってんですか?」
「ええ...つい昨日ギルドに案内した人です......しかし本当に縁があったみたいでやすね」
偶然にも程があるだろ。
だけどこれで恩返しができる、家だけもらって恩返ししなくてはは俺の良心が痛む。
「あの時は本当に助かった...いつか、恩返しするよ」
「いえいえ別に大丈夫でやすよ、ただこれからこの店をご贔屓にしてくれるとありがたいでやす」
俺とルアは軽く買い物をして店を後にする。
ルアはギルドハウスに用があるようで俺だけ先に帰ることになった。
時刻は夕方あたり。
日が沈みかけ水平線からオレンジ色に街を照らしている。
.......
「お前がジェイルか?」
家に向かっていると急に後ろから話しかけられ驚く。
振り向くとそこには黒服に黒仮面と全身黒で統一された服装の.....体格と声的におそらく男がいた。
「え? 誰? てかなんで名前知ってんの?」
「時計は手に入れたか?」
俺の質問を一切無視し質問を続けてくる。
「時計ってこれか?」
俺はポケットから昼に拾った腕時計を取り出し見せようとした。
しかし、見ていない隙に黒服の男は消えていた。
なんだったんだ今の.....
少しの間俺は固まっていたがすぐに動き出す。
なんで名前を.....てか消えたんだが?
時計のことについて聞いてきたから持ち主なのかと思ったが渡す前に消えてしまったあたり持ち主ではなさそうだ。
俺はあまりそこに長居したくなかったからすぐに帰った。
家にはルアが先に帰っていたようで既に夕食ができていた。
俺も料理ができないわけではないが、ルア曰くパーティとしての仕事の一つでもあるらしくリーダーがするものではないらしい......俺的には誰がリーダーとかはあんまり決めたくないがルアがしたいというのだから、何も言わないでいる。
「遅かったですね、何かあったのですか?」
「なんか変な人に話しかけられた.....」
「変な人? 大丈夫だったんですか?」
「ああ特に何もなかったけどその人なぜか俺の名前を知ってたんだ」
「鑑定スキルのレベルが高かったのではないですか......一定まで高くなると相手の名前もわかるらしいですよ」
「そ...そうか」
ルアにさっきあったことを話した。
黒服の男は名前をわかったというよりか、元から知っているような口調で話ていたから少し疑問に思うところもあったがこの時の俺はかなり眠かったようで、考えることを諦めて眠りについた。
「おやすみなさい」
「おやすみ、また明日」
「........」