2.異世界に来て早々ですが、我流の剣士が仲間になりました
「兄さん、迷ったって言ったが行く当てはあるんですかい?」
「聞いたことない地名ですしかなり遠いんでしょう?」
街中を馬車で移動していると御者の男が話しかけてきた。
「いや、行く当てはないしそれに仕事だってないしな」
そうここは異世界、当然俺の家もないし仕事もないから金だってない。
「なら兄さん、もういっその事ここに住んでしまってはどうです?」
突然の発言に俺は驚いた。
普通のことのように軽く言うから尚更驚いた。
そんな簡単に住めるん!?
だけどまぁ、ここ異世界だし普通のことなのかもな。
これからは慣れよう....
異世界に順応するためにも色々知っとかなきゃな。
「だけど、どうやって住むんだ? 俺は金をちょっとも持ってないんだけど」
異世界に来てすぐの俺に異世界の金なんて持ってるわけがない。
異世界だろうと金は必要だろう。
「ちょっとも持ってないですか......あ、ならギルドに登録してみてはどうです?」
「冒険者の役職なら資格なしでももらえるし、それに古い家なら安く買えやすしね」
異世界の家の値段はわからないが安く買えるなら問題ないのかな?
高くてもローンくらいは組めるだろう。
「で、兄さん冒険者になってみやすか?」
「あぁ、なってみるよ」
異世界で唯一できるものならするしかないだろう。
「なるほど、わかりやした。ではこのままギルドハウスまで行きやすね」
そういうと御者は馬を走らせた。
...
程なくして馬車は周りの建物より一回りほど大きい建物の前で停まった。
「さぁ着きやしたよ」
馬車から降りて建物を眺めた。
扉の上にある大きな看板には”GUILD HOUSE”と書かれていた。
眺めていると御者が馬車から降りてきた。
「ささ、登録の仕方とかは説明しやすから入って入って」
さすがにここまで付き合わせておいてさらに手伝いまでさせるわけにはいかない。
「大丈夫だよ、それより早く商材届けた方が....」
「いえいえこれも何かの縁、手伝わしてください」
そう言うと俺は御者にギルドハウスに入れられた。
「まぁ手伝うと言っても登録は簡単なんで、すぐに終わるでしょう」
「ちなみになんだが、冒険者としての仕事の説明とかは教えてくれるのか?」
「冒険者登録したときに貰える冒険者用のガイドブックに書かれるから、それを見れば大体のことはわかると思いやす」
受付には列ができていて、俺らは列の最後尾に並び順番をまった。
「それにしても、いつもより受付の時間が長いな」
男は眉を顰めて言った
少したって俺たちの順番となった。
「お待たせいたしました、それではご用件を伺います」
受付の女性が椅子に座るよう促した。
受付前の椅子に腰をかけると俺が話しかけるよりも先に男が話しかけた。
「こちらの兄さんを冒険者として登録しにきたんでやすが、問題ないですか?」
「はい、登録できますただ今日から登録に条件がつきまして....」
その言葉を聞いて男は眉を顰めた。
「その条件ってのはなんでやすか?」
「パーティを組んでいる人で、さらにパーティに一人は戦闘の経験者がいないといけなくなりました。本当に申し訳ありません」
受付嬢は申し訳なさそうに答えた。
「もしかして、例のモンスターのせいでやすか?」
「ええ、そのせいで色々と条件など変わってしまって...」
「そうでやすか」
男は少し困った表情を浮かべる。
さっきいつもより受付の時間が長いと言っていたが、そう言うことか。
「そうですね...パーティに入ることを希望している人をまとめたリストがあるので、その中からパーティになってくれる人を探してパーティになることもできますが...」
それしかないないか...
にしても今日条件が変わるとか、運悪いな。
「ではその方法をお願いできる?」
「はい、わかりました。...メイカ、パーティ希望者のリストブック持ってきてくれる?」
受付嬢が受付奥の扉の方へ呼びかけた。
「OK!、ちょっと待っててね」
呼びかけに対して扉の向こうから返答が返ってきた。
男が受付の上にある時計を見て驚いた顔をした。
「あっ、すいやせんあっしそろそろ時間ですわ、兄さんここまでしか手伝いできませんでやしたが頑張ってください」
男はそう言うと急足でギルドハウスから出て、馬車で颯爽と言ってしまった。
ここまでしかって...十分手伝ってもらったけどな。
お礼したかったが先に出て行ってしまってできなかった。
「はいよ持ってきたよ」
男が出ていくと同時に扉から溌溂とした女性が出てきた。
「ありがとう、そうだちょっと手伝ってくれる?」
「いいよ、何すればいい?」
メイカが、受付嬢に聞いた。
「私が案内してる間受付お願いできる?」
「全然大丈夫だよ」
メイカは受付嬢と入れ替わって椅子に座った。
「では早速今からパーティになれる方を探しましょう」
受付嬢はメイカが持ってきた本を取り、俺を受付からみて右にある酒場に案内した。
「今いる人の中から、選んでもらうんですが相手が認めてくれないと当然パーティにはなれないのでパーティになる人を探すまで時間がかかると思います」
「時間なら気にしなくて大丈夫」
時間ならある、というか他に時間をかけることがない。
「良かったです。では最初に聞いておきたいのですがパーティに入れる人の役職は何がいいですか?
役職によって候補人数が違うので先に聞いておきたいんです」
役職か...異世界に来たから、ここは魔法使いをパーティにしたいところだが魔法使へのパーティへの誘いは多いだろう。
モンスターを倒してドロップ品を売るという仕事であるためできるだけモンスター討伐に向いている役職が...だとしたら魔法使いなんだが。
だが、俺としてはどんな役職でもいい何よりもパーティになってくれることの方が重要なのだ。
「そうだな、剣士がいいかな」
「剣士ですね」
受付嬢は本をめくり、今ここにいる剣士達の中でパーティになってくれる人を俺と探した。
男A「すまない、俺は上級の奴としか仲間になる気は無いんだ」
男B「あ、俺はすでにパーティが決まってるんで」
女A「ごめんね〜あたしゃ弱いもんには興味がないの」
だが次々と断られてしまった。
まぁそうだろうな。
特に何かしらの役職にもついてない俺のパーティになりたいなんて思うわけがない。
そして最後の一人になった。
「え〜っと最後の一人は”ルア・ブラッド”...あの子か....」
「あの子って...知り合いなのか?」
受付嬢が知っているようだったので聞いた。
「ええ、あの子もパーティを探してるんだけどまだパーティにしてくれる人がいないのよね」
「なんで?」
「彼女腕もいいし剣士としては立派なんだけど、我流って言うのと剣士としてはかなり若いっていうのでパーティに入れようとする人がいないからね...」
なるほど俺と似たような感じかな。
「ルアちょっと用があるんだけどいい?」
受付嬢が酒場の奥に座っている赤髪の少女に話しかけた。
「あ、エミリー...用って何?」
ルアがこちらを振り向いた。
「パーティのことで、この人が今パーティになってくれる人を探してて...急な話だけどなってくれない?」
ルアと目が合った。
「私は全然いいし、むしろ嬉しいけどその人には伝えてあるの? 私のことは」
エミリーが口を開け答えようとしたが、その前に俺が答えた。
「ああ聞いてるよ我流っていうのは、でも俺はあんまりそういうの気にしないし知った上でパーティになってほしいと思ってる」
「なるほど、そう言うことなら私が断る理由はないですね。エミリー早速登録しちゃってください」
ルアは嬉しそうにエミリーに話しかけた。
エミリーはそのままルアと俺を受付まで連れて行った。
なんかあっさりとパーティになってもらえたな....
これまでに聞いた人数を考えればあっさりではないか.....
「では登録するのでこの紙に書いてあることに応えて書いてください」
そう言うと受付嬢は羊皮紙と羽ペンをくれた。
羊皮紙には希望する役職や自分の種族など各項目は多かった。
種族を描くってことは人間以外も普通にいるのだろう。
描き終えてエミリーに渡した。
ふと外を見てみたらだいぶ暗くなっていた。
異世界に来たのが昼頃だから異世界に来てもう何時間も経ったんだな。
「登録終わりました。こちらがギルドカードです」
エミリーが片手で持てるほどの小さなカードを渡してきた。
「これは?」
「自身冒険者としてのランクや実績が書かれている言わば冒険者用の身分証明書のようなものです」
カードをポケットにしまった。
さて...異世界に来て仲間もできて役職にもつけたがまだ一つ解決できてないことがある。
家だ。
まぁ借りるしかないんだろうけど。
そう思っているとメイカが話しかけてきた。
「そういや、あんたの家の鍵預かってたんだ。ほい」
メイカが鍵を渡した。
「え、俺の家なんてないはずだけど」
「それね商人のおっさんからもらったんだよ、恐らく登録できるのは夜になるだろうから先に家を借りておいたってさ」
「あ、ただ料金は払ってくれだってさ」
もう遅いし次会えた時にお礼をしよう。
俺とルアはギルドハウスを後にし教えてもらった家に行った。
...
「ここか...」
二階建ての一軒家でギルドハウスからはそこまで遠くない。
「とにかく今日は疲れた、早く寝ようっと」
「私も疲れてるので早めに寝ますね」
家の中には風呂もついていたため風呂に入ってから布団に入った。
流石に男女同じ部屋で寝るわけにはいかないのでルアには隣の部屋で寝てもらっている。
明日の仕事に備え今日はぐっすりと眠ろう。
目を閉じ眠りにつく。
こうして俺の異世界生活1日目は終わった。