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38話・話が通じそうにありません


「未だ悪夢から目が覚めていないあなたに現実をお知らせしましょう。アリス嬢はあなたに近付く為に元許婚であったゲラルドを利用して、あなたさまのお側付きの他の侍従や護衛らと交際していたのですよ」

「嘘だ!」


「この事は早いうちから私の元へ報告が上がってきていました。護衛の者も含めて五、六人と同時進行でお付き合いされていたようでした。アリス嬢にはゲラルドというしっかりした許婚がいたので、そのようなはしたない真似はおよしなさいと注意したのですが、私がもてない女で僻んでいると言われてしまいましたわ。彼女曰く、平民同士の間では婚前交渉は当たり前で、体の相性が良ければお付き合いするそうです。ヨアキム様は下手だけど、お金があるから付き合っているのだと高笑いされていました。アリス嬢は腹立たしい相手ではありましたけど、本気で相手をするのも馬鹿馬鹿しくて殺す気にもなりませんわ」



  ここまで暴露する気はなかったが、彼女のことを聖女のように信じ込んでいるヨアキムに一矢報いてやりたくなった。彼の知らなかった一面を突きつけると、ヨアキムは震えだした。



「あのアリスが僕以外の男と? 嘘だ。信じられない。おまえが嘘を言っているのだろう? 僕を翻弄しようとしても無駄だ」

「あなたも救われない御方ですわね。もしも、私があなただったならもっと上手くやりましたわ」

「なんだと!」


「黙っていても王位はその手に転がってきたというのに実に惜しいこと。私ならば自分が王となった暁には政略結婚相手が気に入らなければ離宮にでも追い払い、顔を合せないことにします。政務で相手が使えるならば仕事を与えて働かせ、自分は好いた相手を愛人にして愛でていたことでしょう」

「それでは不実な男にしか見えないではないか?」



  夜会で陛下が決めた婚約者をエスコートせずに、浮気相手と堂々と姿を見せ、婚約破棄などという馬鹿げた行動を取っておきながら、どの口が不実などと言えるのだろう。私はため息しか出なかった。

  一夫一妻を望み、アリスの為に取った行動だと言いたかったのだろうが、彼のやり方は間違っていた。



「王になるならば当然のことでしてよ。平民が王になるのとは違うのです。アリス嬢は独特の平民意識をお持ちのようでしたけど、夢物語ではその辺はしっかり描いていたようですわね。夫となるヨアキム様には政務を執らせ、自分は愛人の男達を侍らせて暮らすおつもりだったのでしょう。でも、それではアリス嬢が産む子があなたの種でない可能性も大ありでしょうが」



  ヨアキムは顔色を変えた。王ならば後宮を持っても許される。それは側室達が確実に王の種を育み、次代へと繋げる為だ。でも、その相手が他の男の種も抱え込んだならどうなるのかと言えば押し黙った。


「……それでアリスを殺したのか? 何も殺さなくても良かっただろう」


  しばらく黙っていたヨアキムが口を開いたかと思えば、まだ私を疑っていた。彼は何を聞いていたのだろう。やっぱり馬鹿だ。


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[一言] バカは死ななきゃ治らない。
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