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34話・なぜ私に?


「ヨアキムとしては、賢い許嫁が側にいたものだから、ちょっと抜けた娘に頼られて悪い気がしなかったのだろう」


  イヴァンが私を見ながら言う。アリス嬢は抜けているというか常識に欠けた娘としか思えないのだけど。

  イサイ公爵と目が合うと、公爵は申し訳なさそうな顔をしてもう一通の手紙を差し出して来た。



「実はこのアリス嬢ですが、もう一通手紙を同封しておりましてそれが妃殿下宛なのです」

「はい?」



  なぜ私に? 疑問に思うと、隣で動きがあった。公爵がもう一通差し出したのを目ざとく見つけて、私よりも先に手を出した。



「陛下?」

「ゲラルド。中を改めよ」

「はっ」



  王妃である私付きの侍従長ゲラルドに命じてその手紙の中を改めさせた。



「中に何も細工はされてないようです」

「……!」



  イヴァンとゲラルドのやり取りで、私は手紙の中身を改めるとはそういうことかと改めて理解した。ゲラルドの迷いの無い動きなどから、今まで私宛ての手紙や封書などは侍従長が調べていたに違いないと思った。



「その字だが、アリスとか言う娘の字に間違いは無いか?」

「間違いないと思います。これは彼女の字です」



  元アリスの許婚だったゲラルドが認めた。本人の筆跡に間違いないと言う。



「中はどんな事が書かれている?」

「ある場所に妃殿下においで頂きたいと……。その日時や場所が書かれております」



  陛下に問われ、報告するゲラルドの顔が険しくなっている。中を読まなくとも大体予想がついた。



「きっとアリスさんは私を名指しするぐらいだから、事と場合によってはヨアキム様を返してやってもいいなどと書いているのではなくて?」

「その通りにございます。妃殿下、なぜ分かったのですか?」



  ゲラルドは私が手紙に目を通してもいないのに、どうして分かったのかと不思議がる。



「公爵に宛てて書いた手紙の中身から予想しただけよ。彼女は不満しか漏らさないからきっと、それはヨアキムさまと一緒にいることで、自分が巻き添えを食ったとしか考えてないのではないかと思って」


  こういった相手は、すぐに他人のせいにしたがるからと言えば、イヴァンもそうだなと呟く。


「すぐにこの手紙のことをキルサン将軍に申し伝えよ。そして捜索隊をここに送るよう指示を出せ」


  イヴァンはこの手紙を利用して、アリスが呼び出した場所に追っ手を送ることにしたようだ。彼女が呼び出した場所へ捜索隊を向かわせて捕らえる気だ。

  アリスも黙っていれば、まだばれずに済んだものを。よっぽど背に腹はかえられなかったようだ。


  一体今まで誰が彼女達を匿い続けたのかは謎だけど、その辺りも彼女が捕まれば自ら馬脚を現してくれそうな気がする。

  ゲラルドが御意と言って退出して行くのを見送ってから、私はこれでヨアキム事件は一段落ついたような気がした。



「陛下。私は彼女の呼び出し場所に行かなくとも良いのですか?」

「あの娘の呼び出しに応じる気か?」

「でもそれをあの娘は望んでいるのでしょう?」

「わざわざおまえが行く必要は無い。あやつらの捜索はキルサンに任せたのだ。おまえはその手柄さえ、横からかっ攫うつもりか?」

 


   イヴァンは可笑しそうに言う。私はアリスと会い、彼女が簡単に口を滑らすためにも、多少の挑発ぐらいすべきかと思っていた。

  イヴァンには、私の考えなどお見通しのようだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 指定した時間と場所にアリスは何の疑いも無しにいるんだろうなー。 私が呼び出してるんだから絶対に来るわ!ぐらいに思ってるんだろうなー(笑)
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