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27話・イヴァン少年との出会い


私はブスで知られた王女だ。十四歳にして結婚相手になど恵まれそうにない事を知っていた。当時の他国の王子らは政略相手に外見の美しさを求めた。

美しい女性を側に置くことをステータスにしていた部分もあった。それでいて自分よりも政治に興味を持つような賢しい女は嫌われた。


その世の中で、自分はどこの国の王族にも嫁げないだろうという確信があった。ブスな自分に結婚支度金なんて、いつ嫁ぐか分からない自分の為にお金を残しておくなんて勿体ないという思いが先に立った。

それなら今、必要としている領民の為に用立てた方が良いように思われた。このお金を使えば少なくとも領民の何割かは飢えで死ぬこともないのだ。


何度も説得するうちに、父王は渋々ながらお金を用立ててくれた。父王は私がこの時点で結婚を諦めたのにも関わらず、まだ望みを捨てていなかったようだ。


でも結果的にそれが役立った。領民は健康を取り戻した。次は仕事だ。領民は農地が駄目になり仕事に困っていた。


そこでまず長雨の時期になると氾濫が起こっていた川に堤防を築き、給水や、排水、灌漑を目的とした用水を引く事にした。泥地は開拓した。

領民は素直で、誰一人逆らうこともなくこちらの要望に従ってくれた。そのおかげで八年後は、水路が領地に引かれ、痩せた土地が肥沃な土地へと変貌を果たした。


ここまで来るのに八年もの年月が経っていた。身だしなみなんて気にしている暇も無かった。時々、領民に混じって鍬を振るっていたせいか、肌は日に焼け腕が太くなり、掌は豆が出来て堅くなっていた。特権階級クラスのしかも頂点に立つ、王女の手とは思えないほど変わった。


でも後悔はなかった。領民はふくよかになり笑顔を浮かべていた。やりきった感があった。成果が父王にも伝わったようで、八年ぶりに宮殿に呼び戻されることになった。


久しぶりに会った父王は若い女を侍らせていた。その女は私が宮殿を出てから陛下が迎えた愛妾で、父王の寵愛が深く、二人の間には五歳になる男の子がいると人づてに聞いた。


王妃である母は寝付いていると聞き、心配で部屋を伺うと、そこに一人の少年がいた。

寝間着にガウンを羽織った母は、カウチソファーに座り、少年を隣に座らせて楽しそうに話をしていた。



「まあ、ソニア。お帰りなさい。今、丁度あなたの話をしていたところよ。イヴァン、ご挨拶なさい。この人があなたのお姉さまよ」

「……おかえりなさい。おねえさま」



  私の訪れを母は喜んだ。その母が側にいた男の子を紹介する。それが少年イヴァンとの出会いだった──。



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