223話・彼女とは何でもない
「ではブリギットさまの部屋から出て来たというのは?」
「あれは昨日、話の途中で気を失ったから、その様子を度々見に行っただけだ。一人ではないぞ。セルギウスも同行した」
「信じますわ」
セルギウスの名前を出せばあっさり信用した。レナータの中で自分の信頼とはどのような位置なのか。不安になる。
しかし、話の伝わり方の早さが気になった。昨日、セルギウスにはどのような手を使ってもブリギットの気を惹けとは言ってある。
だからといって言われてすぐ数時間後に事に及ぶような軟派な間諜はいないはずだ。もしかするとこれは相手側がわざと煽った節がある。あとでセルギウスに確認する必要があるだろう。
「危険だな。単なる噂話にしては伝わり方も早い」
相手側はこのことで自分とレナータを仲違いさせ、レナータを始末してしまうことを考えているのではないかと思われた。
「ブリギットをおまえから離しておく必要性があるな。女官長」
「はっ」
「あの二人から目を離さないで欲しい」
「畏まりました」
「二人って?」
ブリギット側の配下の者に紛れ込んだときに、仲間を牛耳っているのか彼女付きの侍女と、護衛だと分かったのでセルギウスを通して女官長には伝えてあった。何も知らないレナータが聞いてきたので教えておくことにする。
「ブリギットが連れてきた侍女と護衛だ」
その言葉で察したレナータはハッとした様子を見せた。その彼女に自分の気持ちを疑ってくれるなよと言う思いで伝える。
「レナ。ブリギットとは何でもないからな」
彼女は黙って頷いた。その後、セルギウスの調べで影武者はブリギットとは適度な距離を保って交流していたようで、ブリギットと深い仲と言うのは向こうがでっち上げた噂話だったようだ。
たまたま影武者が見舞ったのを、朝帰りのように言いふらしたようで問題発言のあった女官らを罷免したらすぐに忌まわしい噂はかき消えた。




