22話・陛下の意地悪
ゲラルドが退出して一人になると、でも気になって仕方なくなってきた。
「ちょっとだけよ。ほんのちょっとだけ覗くだけだから」
そう言い訳をして、こっそり屋根裏部屋へ接近を試みる。今回は誰に会うこともなくドアの前に来た。
ノブに手をかけた時だった。
「レナ。何をしている?」
「へっ、陛下っ」
背後にイヴァンがいた。彼は興味深げにこちらを見ていた。
「あの、これは……、その」
「ゲラルドや侍従達から聞いているぞ。王妃は余のことが気になって仕方ない様子だとな」
「別に陛下のことが気になっていたわけじゃありません。私は……!」
くっくっくとイヴァンが笑う。
ゲラルドのやつ、余計な事を。この場にいない嫁馬鹿の侍従長を心の中で罵っていると聞かれた。
「何をしようとしていたのだ?」
「以前、陛下がこの部屋に入って行くところを見てから気になっていました。この部屋の中には一体何が隠されているのかと」
観念した気持ちで正直に応えたら、陛下が言った。
「この部屋に大したものは置いてないぞ。中にはおまえの興味を惹きそうなものは何もない」
さあ行くぞ。と、肩を抱かれてドアの前から離される。イヴァンは部屋の中を私には見せたくないようだった。その様子から何かそこにあるのは確かだ。
私はここまで来てお預けなんてとんでもないと思い蹈鞴を踏んだ。やはり中の御方と話くらいはしたい。
陛下の腕から逃れると、陛下の気の抜けたような声が上がった。
「レナ……?」
急いでノブに手をかける。でも現実はそう甘くなかった。
「あ。うそっ。開かない……!」
ガチャガチャノブを回しても鍵が掛かっていて無駄だった。開けられない。がっかりしてその場にしゃがみ込もうとしたら、その体を支えられた。
「そんなにこの部屋の中が気になるのか?」
「はい。中には人知れず陛下の気を惹く御方が匿われているのでしょう? どうして私には教えて下さらないのですか?」
水くさいじゃないですか。と、詰るように言えば、陛下から問いかけがあった。
「レナ。おまえはこの部屋に余が女を囲っていると思っているのか?」
「はい。違うのですか?」
少し陛下は考える素振りをして言った。
「そんなに会いたいか? この部屋の主に」
「はい。是非に」
「それは無理だな」
「どうしてですか?」
「この部屋の中におるのは余にとってかけがえのないものだ。いくらお気に入りであるおまえでも会わせてやる事の出来ないものだ」
陛下はこの部屋にいる者を認めた。かけがえのないと言うぐらい相手に相当な執着を見せている。それなのに私に会わせるのは嫌なようだ。
「陛下の意地悪。ちょっとぐらいお話させてくれても良いじゃないですか? このお部屋の中にいる御方は陛下にとって大切な御方なのでしょう?」
「ああ。その通りだ」
別に一回くらい会わせてくれても良いじゃないか? 減るわけでもないのに何故拒む?
私は面白くなかった。イヴァンに詰め寄ると、彼は「まあ、落ち着け」と言ってきた。




