190話・帰ったらもう一度、式を挙げようか?
そしてやってきたフランベルジュ国。前に訪れたときからこの国は何一つ代わり映えしなかった。変革という言葉とは無縁の遺跡の住人達にしか思えない。
来賓として国王の孫王子の挙式に参加すると、他にも近隣諸国の王族らの姿が見えた。
挙式は大聖堂で行われる。歴代のフランベルジュの王達もここで式を挙げてきたらしい。
聖堂の窓は天井から床まで届きそうな大きさのステンドグラス。ストリー性のあるステンドグラスとなっていた。
この国の初代王は牧童王と呼ばれていた。何でも六歳の時に神が目の前に現れ、おまえが王になってこの地を治めよと天啓を受けたのだと言う。眉唾のような話だ。
恐らく庶子でしかなかった王の子を担ぎ出して王位に就けたのが真相だろう。言い伝えなど幾らでも改ざん出来る。
しかし、初代王は牧童をしていたのであまり賢くなかったようだ。臣下達の傀儡となり享楽に耽って亡くなった。確か腹上死だったのではなかったか。
あまりにもみっともない亡くなり方で、病死とされたようだ。
その王はご丁寧にも「政治など些末のこと。そのようなことは陛下自らしなくとも、臣下がやるべきだ」などと遺言したらしいが真相はどうか分からない。
案外、その時代の臣下が自分達に都合の良いことを次の王に伝えたのかも知れない。
それを律儀に守り通しているような現国王には愚王のイメージしか湧かない。王が飾り物でいられた時代は終わったというのに。
時代に取り残された遺物でしかないのではなかろうか。
今回、この国を訪れたのには訳があった。この国の宰相から内緒で打診があったのだ。その問題に触れるのは面倒事にしか思えなくて無視しても構わなかったが、現王に関わることと聞いて放っては置けなくなった。
挙式は厳かで神聖な雰囲気が漂う。新郎新婦を見つめるレナータは彼らを食い入るように見つめていた。
もしかしたらソニアの頃に縁談が上手く行っていれば、今頃彼女は王妃とこの場に参加していたかも知れない未来もあった。複雑な思いを抱えているのかも知れない。
「帰ったらもう一度、式を挙げようか?」
レナータとの挙式はクロスライト国の王族の式に基づいたもので、この国の花嫁が来ているウエディングドレスのような派手さはない。何メートルにも及ぶ、花嫁がひきずるレーンは派手で華やいで見えた。レナータが着たならさらに愛くるしいものになるだろう。
「結婚式は一度でいいわよ。どうしてもう一度、する必要があるの?」
「こいつらを見ていたら自分達の式がお粗末に思えてきてな」
「この仰々しいのが必要? 必要ないわよ」
「そうは言ってもなぁ。レナは初婚だったのに、余が再婚と言うこともあり地味にしすぎたからな」
レナータは必要ないと言い張る。気にしすぎだったか。暴走ぎみだったのを恥じた。でもこの機会を逃すこともない。
自分は散々、ソニアを侮ってくれた国王を許していなかった。レナータを着飾らせて驚かせてやろうと思う。




