186話・やはりレナータはソニアだった
翌朝。清々しい気分で目が覚めた。隣には昨晩、小猫のように声を震わせ、自分の背に爪を立てていたレナータがぐっすりと眠り込んでいる。その寝顔を眺めていたら胸が熱いもので満たされた。
昨晩、ようやくレナータと結ばれた。ずっと望んできたことが叶えられたのだ。レナータから持ちかけてきたことに未だ信じられない思いだが、彼女の中に収まった時には、自分の落ち着く場所はここだと感じた。
「ん……」
レナータが身じろぎ目を覚ました。起きたようだ。
「辛くないか?」
レナータは当然のことだが初めてだった。自分と繋がった時、痛い、痛いと呻いていた。それが気になっていた。
サイドテーブルの上に用意されていた水差しを手に取りコップに注いで差し出すと「ありがとう」とかすれた声が返ってきた。
大丈夫そうだ。彼女の乱れた胸元には赤い痕が残されていた。自分が甘噛みした後だ。自分の視線に気がついたレナータはコップを返してきながら、慌てて胸元をかき合わせていた。
「ヴァンさま。先に目が覚めていたの?」
「ああ。おまえの寝姿を見て余韻に浸っていた」
「まあ、恥ずかしいわ」
照れるレナータが愛らしい。その彼女の頬を両手で包むと、小さな手がその上から重ねられた。
「なあ、レナ」
「なあに? ヴァンさま」
「愛している」
「私も」
迷いのない気持ちが返ってきて安心した。昨晩二人は一つに混じり合った。それが自分の気持ちを強くさせた。
「レナ。おまえは姉上なのだろう?」
「……?!」
レナータは瞠目していた。昨日から考えていたことだ。キルサンとのやり取り。そして今まで十六歳にしては老成されたような考えの持ち主で思考が自分の知るソニアに良く似ていた。そう思ったら姉のソニアが生まれ変わっているとしか思えなかった。
「おまえはそんなに接触していなかったはずのキルサンの子供の頃の愛称を知っていたし、姉上のノートに固執していた」
「それは……」
「皆、亡き王女の遺品なんて気にしないからな」
レナータがソニアの生まれ変わりと思われる根拠をあげていくと、レナータは気まずそうにしていた。
「おまえと初めて会った時から初めて会った気がしなかった。てっきり兄上の子だから、兄上に似た何かをおまえに感じ取っているだけかもしれないと思っていた。それにおまえは余の妻になるのを全力で嫌がっていたしな」
「そりゃあ、そうよ。初め抵抗はあったわ。あなたは政敵で弟だったんだもの」
レナータが観念したように言う。やはりレナータがソニアだったのだ。
「姉上!」
「違う。今はレナータだから」
「余にとってはどちらも変わらぬ。ああ。レナが姉上だった」
感極まって抱きしめると、違うレナータだと反論が返ってきた。自分にとってはそんなことは些細なこと。
ソニアがレナータに生まれ変わっていたことを神に感謝したくなった。今まで信心深くなかったのに、姉が生まれ変わり妻となったことが偶然とは思えず、目に見えない大きな存在の何らかの干渉があったとしか思えなかった。
「ちょっ。イヴァン。気持ち悪くないの?」
「なぜ?」
「なぜって私は前世、ソニアであなたとは異母姉弟。色々思うところとかあったでしょう?」
「ああ。もう少し早く産まれれば姉上を妻に迎えたいと思っていた。姉上は余の初恋の人だった」
「はあ? 姉弟なのに? 何馬鹿なことを言っているの?」
レナータが呆れたように言ってくる。




