178話・邪魔者は退散しよう
どうみても王女を名乗るには無理があるように思うがあんな女にコロリと騙されてしまった男達は結構いたらしい。彼女が男達から巻き上げた金額は相当なものになるとバラムは言っていた。
「馬鹿な男が多すぎる。特に先進国の筆頭と謳われているフランベルジュの王孫や、そのブレーン達が引っかかるとはな。女を見る目がないのか?」
「あの国の王族は所詮、見た目主義ですから。頭空っぽでも良いのですよ。見た目さえ良ければ」
「そうだったな。賢い女は嫌っていた。何が太陽王だ。今では斜陽の王のくせに」
もともとフランベルジュ国に対していい印象を持っていない。かの国の王太子(現在国王)は、姉のソニアを馬鹿にしていた。
見目が悪く、頭でっかちで可愛げが無いと嘲笑していた。その国の王子がクロスライト国の王女を騙る女に騙されたと聞き、いい気味だと思ったのは自分だけではなかったようだ。バラムもソニアを敬愛していたから同じ事を思っていたに違いない。
「陛下。お祖父さま?」
「ああ、悪い、悪い。ちょっとな、以前フランベルジュ国の王と色々あったものだから」
「あの国の王とは仲が悪いのですか?」
「向こうがこちらをどう思っているかは分からないが、以前あの王には我が国の誇る宝を馬鹿にされたことがあったのだ」
「宝って……ソニア王女?」
「ああ。あそこの顔だけ王は我が姉を愚弄した。女だてらに政治に関心を持つなんておかしいと言い放っただけではなく、外見まで貶めた。許せぬ所業だ」
と、言えばバラムも同意してきた。
「私も同感です。腐ってしまえと思いますね」
「本当にな。跡継ぎもいるというのにまだ萎えないらしいからな。さすがは太陽王。お元気なことだ」
「陛下は良くご存じなのですね? 見たように言いますが、その時に一緒にいらしたのですか?」
「いいや。この間、そなたに渡しただろう。姉上のノートだ。あれに全て書かれていた」
姉の日記には事細かに事情が書かれていた。もしもその場に自分がいたのなら迷わずフランベルジュの王子を殴っていたところだ。
レナータは黙ってしまった。何か不機嫌にさせることを言ってしまっただろうか?
レナータが大人しいと、何か隠しているようで気になってくる。
「どうした?」
「何でもないです」
「何でもないって顔ではなさそうだが?」
レナータはそれには答えず、バラムに話しかけた。
「お祖父さま。この後はゆっくりしていけるのでしょう? たまにはお祖母さまも一緒にお会いしたいですわ」
それを聞いてそう言えば、レナータは結婚してからバラム達とゆっくり会う時間が取れていなかった。ここはバラムにレナータを譲ってやろう。
「それはいいな。今夜の晩餐にタチアナも呼ぼう。それまでバラムはレナと話でもしているが良い。余はこの後、残った書類の整理があるからな。二人で積もる話でもしているがいい」
「陛下」
タチアナとはバラムの妻でレナータの祖母の名前だ。久しぶりの祖父と孫の再会をこれ以上、邪魔してはならないような気がして先に退出した。




