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摂政姫の転生~政敵だった義弟が夫になりました!~  作者: 朝比奈呈
◆番外編◆イヴァンの宿命
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144話・ネリーの妊娠発覚

  王妃が宮殿を去り二ヶ月後に、間者から密かに赤子が生まれたと報告があった。王妃譲りの濃紺色の髪に青い目の男児だと言う。

  キルサンに似なかっただけ良しと思うことにした。処分を訪ねられたが、そのままに捨て置けと言いかけて産まれた赤子だけこちらに引き取り育てることにした。  


  赤子を処分してしまえば、世継ぎを作る為だけにあの女を抱かなくてはならなくなる。それは嫌だった。


  世継ぎが手元にいれば、側室うんぬんと煩い事を言ってくる親父どもを牽制する事も出来る。

血筋に拘る爵位もちの者らは、どんなに言葉を言いつくろっても、こちらが愛妾の子と下に見て、自分の娘の高貴な血筋でもってそれを補ってやろうという気持ちが透けて見えた。


  イヴァンにとっては実際、子作りよりも国作りの方が優先事項だった。

この国は豊かだと特権階級者は思い込んでいるが、貧富の差が激しいのだ。特に特権階級ではない者達は明日にも食べるものに事欠き苦しい生活を行っていた。そういった者に税の免除をするよりも暮らし向きを良くするために何か仕事や、住む場所を与えてやりたかった。


  行き詰まると鍵付きの引き出しにしまっておいた一冊のノートを取り出す。それはソニアが幽閉されてから書き残していたもので形見として譲り受けたものだ。

 そこには彼女の日々、思うことが書かれていた。幽閉されている身だというのに彼女の考えることはまず国のこと。この先の国のことを憂いていて、まだやり遂げられなかった政策を無念そうに書き綴っていた。


  摂政姫と称されていた彼女らしい日記だ。しかし、その日記には思わぬ解決策が抱えていて、悩むイヴァンにヒントを与えてくれた。いわばバイブルのようになっていた。


「さすがは姉上」


  政務室の壁に掲げてある一枚の絵画に目をやれば、少女姿のソニアが笑った気がした。その絵には父王一家が描かれていた。そこには自分が求める家族の姿があった。威厳ある父王に、聖母のような王妃。品の良い王子イラリオンに、王妃に抱かれた赤子のアレクセイ。そして男勝りの気の強い王女ソニア。

自分が産まれてくる前の王の一家だ。皆、生き生きとしていて幸せそうな顔をしていた。


 詮無きことだがもしもと考えることがある。彼らに何もなければ今ここにいたのはイラリオンであり、ソニアだったのではないかと。実に惜しい人達を亡くしてしまった。

 物思いに沈みかけたところに侍従長から来客を告げられた。バラムだ。彼には彼の元へ預けていた兄アレクセイの恋人の様子を報告させるために執務室へ呼びつけていた。



「久しぶりだな。バラム。どうだ、彼女は?」

「……お代わりはありませんが、実はその事でお願いに参りました」

「どうした?」



  バラムは父王の御世から仕えてくれていた有能な外交官だ。まだ将軍が生存中、彼の動きを危険視して今は亡き、兄アレクセイの恋人を彼の元へと預けていた。彼女は彼に懐き、彼の息子や、奥方とも仲良くやっていると聞いていた。



「実はネリー嬢が身籠もりました。そこのことで息子が責任を取ると言っております」

「なに? 兄が死んで一年もしないのに?」



  信じられない思いだった。あの貞淑なネリーが兄の死で憔悴していたとしても、他の男とそのような行為に走るとはどうしても思わなかった。勝手なことだが、兄に対しての彼女の思いはそんなものだったのかと批難したくなった。


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― 新着の感想 ―
[一言] イヴァンにしては衝撃だわなぁ… でもでもでも…(笑)
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