124話・おまえがソニアだったなら
取り調べが終わった後、イヴァンに手を引かれ自室へと連れ戻された。
「レナ。どうして先ほどは止めたのだ? あいつはソニアを、おまえを殺した奴だぞ。悔しくないのか?」
「そうね。あなたが私の為に怒ってくれたから、もういいわ。それにあんな男、殴るだけ無駄よ」
部屋に入ってすぐにイヴァンが聞いてくる。彼が宰相に対してずっと憤慨していたのは知っていた。彼は私が止めてから、この部屋に戻って来るまでよく我慢したものだと思う。イヴァンが納得出来ないのは分かっていたが、あんな男のためにイヴァンの怒りの鉄拳を下すのは勿体ないと思ってしまったのだ。
「レナにはみっともない所ばかり見せているな」
「そう? イヴァンの怒りは当然だと思うし、最後まで見届ける気でいたわ。でも、あんな自己中心的な男に弱みなどくれてやる必要も無いでしょう?」
「さすがはレナだな。どうしておまえはソニアではないのだろう?」
「何を言い出すの? ヴァン」
イヴァンが私を乞うように見ていた。
「おまえがソニアだったならその頭に王冠を乗せてやりたかった」
「いらないわ。王冠なんて。私はソニアじゃないし、レナータだもの。あなたの隣がいい」
「それでもおまえの頭に輝く王冠を乗せたならどんなに映えただろうな」
「ヴァン、見た目よりも実力重視が良いわよ。そうでないとフランベルジュの二の舞になる」
「そうかな? レナータならあそこの王のように享楽に耽ることもないだろう?」
「今はそうでも後にどうなるか分からないわよ。人間って驕れる生き物だしね。驕り高ぶった私なんて見たくも無いでしょう?」
「いや、レナなら許せる気がする。見て見たい気がするな」
「悪趣味よ。ヴァン。それにね、私思うの。王位とはやはりそれに相応しい人物がつくようになっているのよ。きっと」
「フランベルジュでは違ったようだが?」
「あそこは例外よ。その代わり配下が優秀だもの」
「我が国では優秀な配下が少なすぎる」
「これから育てていけばいいじゃない? あなたと私で」
「そうだな。時間はかかりそうだが手伝ってくれるか?」
「もちろんよ。そうじゃないと私達の子供や孫達が困るものね」
「レナ」
イヴァンがその言葉に喜んでその晩、激しく求められることになろうとは思ってもみなかった。イヴァンは若くないから早く子供の顔を見たいと言ってハッスルしたせいで、なかなか寝せてもらえなかった。
もちろん二人揃って朝寝坊をしたのは言うまでもない。




