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Atlantis World Online【設定集】  作者: 秋風 疾風
イベント
12/16

レイドイベント⑧

 妻からの情報をもらった僕は、ポーション制作を切り上げて臨時本部へと戻っていた。


「今戻った、進捗は?」


「オクト、ちょうど良かったわ。今お父さんが!」


 またお義父さん絡みか。今度は一体どんな爆弾を持って来たんだ?

 慌てふためく妻をあやし、説明を聞く。

 未だ混乱気味のパープルは、未知の力を前に狼狽切っていた。

 その情報とは、つい先ほどワールドアナウンスによって開示されたこの街が持つ能力。レイド戦に深く関わるこの能力を、このタイミングで発生させたあの人の運命力はどれほど強力なのだろう。


「分かった。後は僕が引き継ぐ、君は情報が入り次第知らせてくれ。正念場だ、乗り越えるぞ!」


「ええ!」


 力強い妻の言葉を受け、向き直ったその場には二つの能力とエネルギーの残量が示されていた。

 それが『電磁バリア』と『古代の光』という相手のバフを全部引き剥がす強力なもの。どちらも無駄打ちはできない。戦闘組と連携しなければ勝機を逃してしまうだろう。


 僕は『漆黒の帝』のクランマスターである金狼氏に連絡を取り付けた。



[オクト:突然の連絡すまない。状況が変わって僕が作戦指揮を統括することになった。すまないが協力してもらえないか?」


[金狼:分かった。お前が出て来たということは相当な事態なのだろう。それと丁度今親父殿からとんでもない爆弾発言を聞かされた。多分それ系列だと思っていいな」



 そういえば彼の父親もお義父さん繋がりだったか。

 これは説明する手間が省けたな。

 いったいあの人は何手先まで読んで行動しているのやら。



[オクト:概ねあっている。うちの義父がクエストを踏み抜いたのは確認しているね?]


[金狼:ああ、掲示板でもパニックになってたぜ。誰だそれって。うちの管轄でも大絶叫だ。なんてったってこのイベントの仕掛け人だからな」


[オクト:その義父からとても強力だが扱いづらい能力を頂いた。それがレイドからの直接攻撃をはじき返す電磁バリアとレイドの防御力を無効化するデバフだ。どちらも膨大なエネルギーを使うし、使える回数が限られている。そちらに戦闘指揮は任せたが、ここからは連携が必要と判断した]


[金狼:そいつは確かに今一番欲しい能力だ。あのクソデカレイド、防御姿勢を取ったらどんな武器でもダメージが一切入らなくなる。そんで防御中は街の中のモブ共が活性化しやがる。それとそのバフ剥がし、多分だが街に被害が出たら使えない類だな?]


[オクト:おそらくそうだろう。でなければバリアなど必要ないはずだ]


[金狼:了解した。こちらでなるべくそっちにダメージが行かないように調整する。そっちでエネルギーの残量とバリアの回数を逐一教えてくれ!]


[オクト:了解した]



 コールは繋げたまま、戦闘に移行する。

 こちらもパネルを見やり、バリア一回につきどれほどのエネルギーを使うのかの計算に移る。





 そこで何度かダメージを受けることによって理解したのは一度の防衛に対して30%の消費であること、そして60%では古代の光と呼ばれる超強力デバフが発動しないことを知る。

 予想以上に手詰まりな状況。あの妻が投げ出したくなるのもわかる気がした。

 奥歯を噛みしめ、レイドからの攻撃を防ぎ切る。

 レイドからの攻撃はターン毎に決まった行動後に行われることは金狼氏とのやり取りで分かっていた。

 残りエネルギーは40%。お義父さんの導きで封印した個体からの補充も底を突きそうだ。次防ぐか、デバフを打ち込むかの瀬戸際、金狼氏からの連絡が来る。



[金狼:今だ精錬の、放てぇええええええ!!!]


[オクト:古代の光全力照射!!! もうバリアに回す分のエネルギーは残ってない、これで決めてくれ!!]


[金狼:その為の俺達だ! いくぜ野郎共、総力戦だァーーッ!! 後先考えずにぶっ飛ばせぇえええ!!!]



 力強い声が金狼氏を中心に唸りを上げる!

 順番に補給を受け取りに来る人員、怪我をして倒れ込む人々。

 みんながみんな一丸となってことに当たっている。

 しぶとく足掻く大型レイドボス。

 確かにウロボロスと言ったか。それが放つ絶叫が、天高く木霊し、大きな地響きを立てて倒れ臥す。


 そして響き渡るワールドアナウンスで参加プレイヤーは自分たちの勝利を確信した。


 

「ぶはぁ、しんどい」


 勝利の瞬間まで止めていた呼吸を吐き出し、ようやく凌ぎ切ったことに今さらながら感動が全身を駆け巡る。


「お疲れ様、オクト」


「君こそお疲れ様。なんとかイベント勝てたね。懐はだいぶダメージでかいけど、前に進む道は開けた。ここからが頑張り時だよ」


「ええ。最後の最後で私はダメね。あなたに頼ってばかり。これじゃあサブリーダー失格かしら?」


「何を言う。こんなときだからこそ頼ってもらえて男冥利に尽きるってもんさ」


「ふふ、お父さんと同じこと言ってる」


 妻は薄く笑う。それに釣られて僕も笑った。


「そうだね、僕の憧れだ」



 今でも。いや、今はより強く焦がれている。

 それに比べてなんて自分は小さいのだろうと身震いした。

 今回お義父さんを引き取ろうと決めたのは僕だった。

 お義父さんに今の自分を見てもらって、それで認めてもらおうと気を逸らせた。その結果がこれだ。

 逆に返しきれない恩を貰うことになってしまった。

 得意のゲームだからと僕はどこかで天狗になっていたのかも知れない。

 でも違うんだな。できる男に境遇は関係ない。

 どんな場所でも結果を出すのがお義父さんなんだ。



「オクト、お父さんを引き取るって話、そろそろ本人に伝えた方がいいんじゃない? お母さんには話を通してあるけど……」


「僕から言うよ。美咲も懐いてくれているし、この世界にも居場所を得た。今回は偶然が折り重なって居座ってもらってるけど、ちゃんと話したい」


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