8、運命の出会いという名の嫁に出会った(2)
コンコン⋯
また、律儀な誘拐犯ですわね。その間に、私達は隠れた。
「みんな、いい子にしてただろうな?」
ん??なんか聞き覚えがあるような────。
「い、いねぇ!!?待て待て!!どこに行っ─────がはっ⋯!?」
「フン!弱かたい。なして、こげん奴に捕まったとか⋯いっちょん分からん」
リム────かっこいいぃぃぃぃ!!!!!素手で、腹を1発。かなり強烈なパンチを食らったらしい。相手は、白目になっていた。気絶してるなコレ⋯。
「うーん。なんか、この顔に見覚えが⋯⋯。あ!!この人!!私とスザクを誘拐した犯人だわ!!」
「何だって!?」
リムが声を荒らげた。
「こい達がワイと⋯スザクちゅう友人ば誘拐したとや?」
「えぇ、3年前に。その時に逃げられちゃいまして。まさか、まだ人攫いをしてるとは⋯。ということは、今度は私の出番ですわ」
「⋯?」
「この方の相棒、大の幽霊嫌いなのです。さぁ、閉めておきますわよ」
ドアをパタンと閉め、気絶した犯人は扉が開けばすぐ目につく真正面へ移動させ。待ち構えることに───。
バンッ!!
いきなり扉が開いた。隠れていて良かったと心底思う。そうして、私は案の定⋯長い髪を垂らした。えぇ、前世で言う日本の貞○のように。
「おい!!大丈夫⋯か!!あの3年前から散々だったが──」
「アナタァ⋯まだ⋯ワタシというものがありながらこんなシゴトをツヅケテイルノネ??」
「!?」
男は肩を震わせた。歯がカチカチとなっているのは間違いではないだろう。
「ワタシ⋯サンネンマエ⋯アナタに⋯トリツイタノ⋯。ソォ⋯アァイトシ⋯」
そうして、わざと触れた。私の手はいつだって死人のように冷たいのを利用して。
「ひいいいいい!!!」
そう叫び声を上げ、犯人は馬鹿なことに後ろを振り向いた直後───────!!
バタリ⋯!!
悲鳴をあげる間もなく、ムンクの叫○のような顔をして気絶した。かなりの見ものだったわ!
「あら、3年前と相変わらずね。リム!やってやったわ!!」
「す、凄かぁ⋯」
あ、あれ?こ、これはもしや、もしかしなくとも⋯引かれている────────!?!?
「ソフィ⋯ワイは、女ん子やったとたいね」
え。それを今?!
「えぇ⋯先程も申し上げたでしょう?」
「ん。やっと信じれた」
えぇえええ!?信じていなかったって?!いやまぁ、それはいい⋯わよね。信じて貰えたなら。
「それは良かったですわ⋯」
「そげん事より、おいんこと怖くなかと?」
「???」
何を訳の分からないことを⋯⋯。愛でて愛したい衝動には駆られるけど、怖いなんてひとつも思わない。
「全く怖くありませんわ。金髪は見事に綺麗ですし、瞳の色だってサファイアとラピスラズリのように素敵な色合いですし、頭についてるお耳としっぽだって素敵すぎて可愛すぎますわ。後は大の大人を1発KOしてしまうほどの腕力をお持ちなところもカッコイイですし。どこに怖がる要素がありまして?」
そう伝えれば、リムは顔を真っ赤にしていた。
「え、えっと⋯変なこと言ってませんわよね?」
「うーん、言ってなかね。ただ⋯おいが言われなれてない──だけばい⋯。ド直球すぎると⋯」
ん?んん?!という事は⋯⋯これは、もしかしなくても照れていらっしゃる?!
きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!
本日、何回目の黄色い声だろうか。可愛すぎます!!!だって本当の事を申し上げただけですもの!!
「本当のことを申し上げただけですわ!」
「わ、分かったけん⋯もう言わんで⋯」
「し、仕方ありません⋯。分かりましたわ」
そうして、数分も経たないうちに扉がまた開いた。
「ソフィ様!!」
「ネル!!」
「レン様から聞いた時は、どうしようかと⋯!心臓が止まるかと思いましたっ!!」
泣きそうになりながら、ネルは言う。
「私の強さを知っているでしょ?それより、この方⋯リムが助けて下さったのよ。カッコイイのよ?」
「お嬢様を助けて下さったんですね!ありがとうございます!!」
彼はビクッとした。そして、フルフルと顔を横に振る。なんて素敵な人なんだろう。謙遜するなんて。更にリムの株がソフィの中で、上がった。
言わばレベルアップしたようなものだ。好感度が。そんなことは、どうでも良くて!何故こんなにも彼は怯えているのか。
あれだけ強いリムの事だから、怯える必要もないはずなのだ。ネルに対して。確かにネルは、隠密行動とかも出来ちゃうハイスペックメイドだけど。殺気をだしてる訳でもないし。何でだろう?
「あら?獣人のかた?」
ビクゥ!と、それはそれは分かりやすく反応した。思わず、リムの前に庇うように立った。
「ソフィ様⋯?」
「えっと。とりあえず、リムを見ちゃダメよ!見ていいのは⋯私だけなんだから!」
「な、なんの独占欲です?とりあえず、分かりましたから⋯ここから出ましょう?」
「そ、それもそうね」
「リム、行きましょう?」
彼は黙って頷き⋯私の手を握った。死人のように冷たい手にビックリしていたみたいだけど⋯そんなの俺が温めてやるって具合にキツく握ってきた。
もうキュンキュンしないわけが無い。この人は、私を殺しにかかってるに違いない。それから、犯人達は3年の時を経て無事逮捕された。そして⋯捕まっていた子達は、ちゃんと親元まで帰された。残るはただ、リム1人。
「ねぇ、リム⋯?」
「何⋯」
「貴方を帰さなきゃ行けないの。教えてちょうだい」
「教えれない⋯」
あの地下部屋にいた時と⋯うって変わって、博多弁などないが。これを聞くに落ち着いてるのだろう。安心はしていると言ったところか。
「なんで??」
そんなに知られたくない素性を持っているのか。
「分かったわ、街に行けばその保護者にあたる方達に会えるかしら」
バッと顔を上げたリム。
「ふふ⋯正解なようね。じゃあ決まったわ。行きましょう。手、繋いでもいいかしら?嫌なら腕を組───」
「よか⋯」
「ふふ⋯変わり者ね、私の手なんか死人のように冷たいのに」
「そんなことなかよ!!アンタは、あったかい。この世界の誰よりも、あったかい⋯」
あーなんなんですか。可愛いすぎて本当に私が死んじゃう。そんなことを言ってくれるのは貴方で2人目。
1人はネル。
そう、私の手がかなり冷たいと知ったのはつい最近。いえ、知っていて知らぬふりをしたのは⋯この私。闇の魔法を使うにつれて、私の手から体温というものは消えた。
だから、スザクも手が冷たい。何故そういう仕組みなのか。それは───いえ言うもんじゃないわね。これは裏のストーリーだもの。
ソフィのね。私しか知らない彼女の物語。語るのは、もう少し先かしらって⋯ちょっと言ってみたかったのよ!!言えちゃったわ!!
「ありがとう。リム⋯」
「それと、俺⋯。アンタに黙ってることがある⋯。俺の名前リムじゃなくて、リアム」
「まぁ!素敵な名前!!」
「そんなこと言う奴、ワイしかおらんとね」
リアムは、照れくさそうに言った。
「ふふ!素敵なんだもの!それじゃあ、リアム⋯行きましょうか?」
「どうやって⋯?」
「それは⋯また目を閉じて下さる?」
「ん」
「さぁ⋯着いたわ!」
「一瞬で───凄かね⋯」
「そんな事ないわ。スザクにだって出来るもの」
「そういえば⋯スザクちゅう⋯友人ばと仲良さげたいね」
「えぇ。私の師匠ですから」
「ふぅん⋯⋯ソイツは男たい?」
「えぇ⋯そうですけど?」
「ふぅん⋯⋯」
何か気に入らないのかしら??しっぽが垂れ下がっている。
「いた!!」
??
いたって⋯へ?目の前には獣人ばかり。ただし、フードを被っているけれど。いや囲まれている?
「ご無事で何よりです」
なんか格式ばっているな⋯。
「無事なんて思っていないだろう。知っている」
「リアム王子⋯」
「へ?!王子様!?」
私は素っ頓狂な声を上げた。なんせ、リアムが王子と呼ばれたからだ。嘘でしょおおお!!
「黙っていて悪かった。ソフィ⋯」
「ぜ、全然!大丈夫ですわよ」
「リアム様⋯この方は」
「俺の命の恩人だ」
「それは逆⋯⋯」
「恩人となれば⋯彼女がいかに人間だとは言え⋯感謝せざる負えませんね」
ん?なんだコイツ。ものすごく失礼な言い方しなかったかしら?
「おい、失礼な言い方するな。ソフィは典型的な奴じゃない」
ん?これもまた失礼なような??
「では、我が国に招待致します」
リアムの話を、スルーした。なんつー奴だ!敵だ!!
「そう威嚇するな。俺は大丈夫だから」
「リアム⋯様が言うなら⋯」
「様付けは要らんと言ったばい」
「で、でも⋯」
「いいから」
「分かりましたわ。招待という前に⋯私、両親に伝えてからでないと」
「それもそうだ」
「えぇ⋯」
許可なんて、すぐ降りますわ。なんせ、私は両親に愛されてはいないと知ったのですから。