59、Real Story
ふわふわと浮かんでいる気がする。私は死んだのか?いや、まだ死んでないわ。
暗い闇の世界で私は全ての黒歴史思い出した。私が目を開けると映像が、いやこれはホンモノ?私の目の前には暗い深夜産まれたばかりの二人の子供がスヤスヤと別室で寝かされている場面を見ていた。
元々の始まりは、生まれた時からだった。
私、ソフィとアイラお姉様は二卵性の双子だった。ただ、赤ちゃんで産まれたばかりの私達は⋯そっくりだった。そこへ、アイツが現れる。
闇に取り憑かれた化け物が。病院のベットに並んで寝ていた私達の影に忍び寄る悪魔が私の姉を攫ったのだ。
そう勘違いをして────
本当は、私を誘拐するはずだったのに闇の魔力を持たない逆の力を持つアイラお姉様を誘拐してしまった。
犯人は、アイラお姉様を誘拐すると実験室へと連れていった。生贄にする為に。けれど、その計画は失敗に終わる。
何故なら、アイラお姉様が授かっていたのは光魔法。そう、闇を打ち消したのだ。うん、さっすがヒロイン!!そして犯人は戸惑い、何故だ!!と狂ったように叫びながら⋯⋯⋯アイラお姉様を外へ捨てた。
アイラお姉様は外に置き去りにされるが、今の両親に運良く拾われる。そうして、犯人は次に私を攫おうとするが⋯両親が勘違いをしてもの凄く大切にしていた為、叶わなかった。
何故、両親が私を勘違いして大切にしていたか。それは、予言だった。私の両親は占いなどを信じるタチで、占い師にこう予言された。
『貴女が産む子供は光属性をもち、貴女方を幸せにするでしょう』
これを両親は、光属性とはすなわち聖女。聖女を思い通りにそして、愛してさえすれば⋯私達は永遠に贅沢な暮らしが出来るのだと考えるクソ親だった。
というか、そういう設定。子供は駒としか考えないクソ親。そして、産んでから双子というのが分かりアイラお姉様が誘拐された時は両親も慌てた。
「あぁ!!まさか、誘拐されるなんて!!」
「なんてことをしてくれるんだ!!」
「も、申し訳ございませんっ⋯⋯」
そう、医者が謝罪をした瞬間──
私の身体は光ったのだ。この子は、聖女になる子だと確信する二人。この時なぜ光ったのかと言えば、私に僅かに残っていた光魔法が闇魔法によって打ち消された。
いえ、追い出されたからである。そして、その光魔法はアイラお姉様に受け継がれた。そう残りの光魔法が、あるべき場所に戻ったということ。
それらを踏まえて分かったこと。⋯⋯⋯私とアイラお姉様は生き別れた双子の姉妹だったんだ。そういう設定にしたわ。ほんとに今頃って感じ⋯⋯。ここまでは良かった。ここまでは。
「私が⋯⋯⋯本当の意味でのラスボスじゃない⋯⋯この展開⋯⋯」
そう。私が書いた結末に辿り着くまでに、本編とは別に違うストーリーを書いていてそこで私は散々死んできた。
ただし、本編も勿論あるわけで。本編⋯⋯私が最後まで書ききった本筋のストーリーは私が最終の黒幕として現れ、2人に殺されるのだ。
当然の報いだけれど。それは、3年生の卒業パーティーで事件は起こる。ソフィは闇魔法を影からアイラお姉様に発動しようとした瞬間に、血を吐くのだ。
それが────
死へのカウントダウンの始まりだった──。
───
──
???side
暗い暗い闇の中で何かは言う。
アハハハ⋯⋯コンナニチカラを
ツケテイルナンテ───────
アァ⋯ハヤク⋯タベタイナ──────
デモ、マダマダタリナイ──────
モットモット──────
ミガジュクスマデガマンガマン────
ダッテ───
シフクのデザートはサイゴノ
スペシャルディナートシテサイコウ
デショウ⋯⋯⋯?????
カノジョガオモイダスコロニハ───
トーッテモトーッテモ─────
ボクゴノミにナッテルンダロウ────
アァ──マチドオシイナマチドオシイナ──
キミノ────ゼツボウニユガムスガタガ──
メニウカブヨ─────
アハハハハ─────────
コレハウンメイダカラ─────
ドウシタッテカワルコトナイ───
サダメ─────
ハナシスギタナ───
マァデモボクノソンザイハバレテイナイ──
バレルハズモナイケレド───
マタカクニンシニコヨウ────
ボクノイケニエ───
そう呟いた何かは、下準備の為にさらに動きだした。エンペラーという魔物に魔力の強い女を誘拐しろと命じた。その代わり、彼女の魔力はあげると。
「───様、本当に良いのですか」
「イイヨ、サァ─ツレテキテ?」
「畏まりました」
そうして、エンペラーは目的の少女を連れてきた。そして、魔力を彼女から吸い出す。彼女は意識が朦朧とし気を失いかけていた。
「これで良いですか?」
「アァ⋯⋯⋯コレデ⋯⋯シタジュンビ⋯ガ⋯トトノウヨ⋯ソノ、マリョクハ⋯⋯キミノモノ」
「有り難き幸せ」
エンペラーはひたすらに彼女の魔力を求めた。そう、それが今回の目的だった。エンペラーは、強い魔力の貯蓄も膨大な量を消化出来る。
彼も何かの生贄として選別された1人だった。そもそも膨大な魔力を体に貯蓄するというのは体にとって害でしかない。
その事を知らないエンペラーは何かに言われるまま魔力を吸い続け気付かぬうちに体は弱っていったのだった。
そして、エンペラーに何かは最後の命令を下した。
「キョウ、カナラズマリョクヲ──ノコセ─」
「⋯⋯⋯それはな⋯⋯」
「ワカッタナ?」
「仰せのままに⋯⋯」
エンペラーは何かの言葉に従った。これが最後の晩餐になると知らずに。エンペラーは知らない内に体が弱っていた為、本来の力の10分の1も出せずに死んだ。
何かはエンペラーの結末を見届けた後、狂ったように声を出して笑う。
「アッヒャヒャヒャヒャ!!!アーアーサイコウダ!
イイシゴトヲ、シテクレタ。
モウスコシ、ガマンスレバ──
ソノトキガクル───
セイジョ?ソンナノ、テキデモナイ。
ナンセ、テニイレタンダカラ───
────ヲ。」
何かは楽しそうに語る。彼女の絶望する姿を楽しみにして。
「バッドエンドハサケラレナインダヨ?」
そう言い残して。暗い闇の中へ更に溶けた。




