57、幸せな一時
学園に戻ってきた私達は、先生達に前世で言う事情聴取をされました。ただ、私は余りにも衰弱していたせいもあって、医者から『休養を』と言われたけれども。
1ヶ月と言われましたが1週間でと言い切り、何とか1週間の療養になりました。
「ふぅ⋯。今日で五日目⋯⋯ダラダラしてるわ⋯⋯」
皆が、お見舞いに来てくれたりと嬉しいのは嬉しいのですが。なかなか、リアムと2人きりになれません。うん、皆が一斉に来るからね!?
「もう、そろそろかしら」
足音がする。いつも通りのメンバーね。コンコンと音が鳴った。
「どうぞ」
ガチャっと扉が開いた。
「ソフィ、お見舞い。調子はどうだ?」
「リアム⋯!いらっしゃい、体調は良いわ。皆も来てくれたのね」
リアムの後ろには、アイラお姉様にグラウス、クリス、レン様、スクラ、スザク。今日は珍しいレン様が来てくれた。レン様は忙しいので、なかなか来ることは無かったのに。
「ソフィ様、大丈夫ですか?あ⋯⋯顔色も良くなってきましたね!」
「アイラさん、ありがとう。私は大丈夫よ」
「無理は禁物ですよ」
「ありがとう」
あ、アイラお姉様ったら!!
もうっ!!私なんかを心配してくれるとか⋯⋯好きです!!あっ、気持ちがあふれたわ。
ただし、私は見逃さなかった。
「そこで、縮こまっているのなら出て行って下さらない?」
そう私が発言した相手は、例の2人である。未だに私は許していない。
「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」
「ソフィ様、私がこっぴどく言っておきましたから。ね⋯⋯⋯?」
上目遣いで私を説得しようとするアイラお姉様。あっ、好きっ⋯⋯!!つい、そうね!と言ってしまいそうな破壊力を持っているが⋯⋯ダメ。それほど酷いことをしたのだ。彼ら二人は。
「⋯⋯⋯⋯」
プイッと顔を背ける。そんな2人を見るより、私はリアムだけを見ていたい。私の癒し、旦那様っ⋯⋯⋯最近、私は愛に飢えていた。
と言うのも、結構ラブラブした記憶は新しいのだけども足りないと思う自分がいた。え、私。欲求不満なの?どういう事よ。
初めての恋だし、両思いだし、脳内では数え切れないほどイチャイチャしたのだけれど。やっぱり、脳内とリアルでは⋯やはり違う。
ホンモノが一番いい。
本当に出会えて奇跡だと思うし、こんな風に誰かを恋愛的な意味で好きになるなんて思いもしなかった。疑似恋愛なら沢山してきたけれど、ホンモノは違うかった。
この感情は、恋を経験した人にしかきっと分からない。言葉には言い表せない感情なの。幸せとか愛してるとか⋯それだけじゃ足りなくて。
でも、私の知ってる言葉では、幸せとか愛してるとかその言葉が限界。って私、何を語ってるのかしら。恥ずかしい⋯⋯。
「ふぅん⋯そうなんダ」
「知らなかったヨ」
「ピィー?」
私の語りを3人が聞いていたらしい。
『私を忘れないで頂戴。リア充』
ぐふ?!リア充⋯⋯その言葉は私の前世の行いを思い出させ、精神にクリティカルヒットする魔法の言葉になっていた。
申し訳ございませんんんっ!!!
「ソフィ様、大丈夫ですか?」
「顔色が悪い⋯⋯。俺達も、すぐに出た方がいいか」
アイラお姉様とスザクが心配して、そう言ってくれた。
「いえっ⋯⋯!大丈夫です!せっかく来て下さったのですから、お話していって下さい」
「そこまで言うなら⋯⋯分かった」
「はい⋯⋯。でも、辛くなったりしたらすぐに仰って下さいね?」
「勿論ですわ!」
うふふ⋯⋯旦那様と推しに囲まれる幸せよね。
「ソフィ、花束を持ってきた。ここに飾っておいておく」
「えっ⋯⋯。レン様⋯ありがとう⋯ございます⋯」
レン様が花束とか。似合いすぎるっ!!!
「おいは、果物持ってきた!剥くから待ってろ」
そう言ってリアムは、果物をシュルシュルと剥いてくれた。それを皆で食べる。2人を除いて。
「美味しい⋯⋯ありがとうございます。リアム」
「ん!これだけ食べれるようになって良かった。どうなるかと思ったけどな」
「えへへ⋯⋯。私、元気だけが取り柄でもありますから大丈夫ですよ」
「調子のいいこと言って⋯⋯」
「心配してくれたのは十分、分かっているつもりですわ」
「あ、ソフィ様。私達、用事を思い出したので帰りますね。リアム様と、ごゆっくりなさって下さいませ!ではっ!!」
そうアイラお姉様が突然言うと、リアム以外の人を連れて出て行ってしまった。こ、これは⋯気を使ってくれたの?!!推し達が成長している!
「これで⋯やっと話せる。ソフィ、連れ去られた時に何が起こったと?」
「私は、ただただ寝てました。ただ、起きた頃には魔力が消失しており体が怠く⋯⋯起き上がることすらも出来ず⋯⋯起きていることもままならずで⋯⋯ずっと寝てました。だけど、意識が浮上している時にチラホラと聞いたの。『今日も、君の魔力を頂こう』とか。その時の私には、既に魔力なんて残ってなくて。頭悪いの?って思いながら意識を手放して⋯⋯次に目が覚めた時は、『私の魔力は美味い』と。それから気になることを言っていたわ。あの方って人が、リアムとレン様が倒したエンペラーに指示を出していたらしいのよ。そこでまた、意識が途切れて次起きたのは、あの日よ」
「⋯⋯⋯簡潔にまとめると、エンペラーはソフィの魔力を誰かの指示によって吸収し奪っていた。けんど、誰かの目的が分からない。エンペラーはただ、言われるがまま魔力を堪能していただけと思うけん。やけんど、誰かが分からんとね⋯」
「で、でもね?魔力を吸われてただけで特に何もなかったのよ?あ、壁ドン以外は!」
「ん?壁どん⋯?って何たい。何されたと!?」
「へっ!あ、えっーと。壁に追い詰めて顔の真横に手をドンと!」
リアムにトンと肩を押され、ベッドに押し倒された。但し、顔の真横に手がある。
「こういう事たい?」
こ、これは、床ドン?!いやなんて言えばいいの?ベッドドン?なんか間抜けな響だから絶対違うわ。
「ちょっと違うけれど⋯⋯ほとんど同じ⋯」
リアムと視線が交差する。ドキドキと心臓が煩い。愛しいな、もっと近づきたいな。このまま幸せな時間を過ごせたらどんなにいいか。いや過ごせるわよね。だって、こんなに幸せなんだもの。
「大好きです。リアム」
「おいも好いとー。でもこんなことされたならもっと⋯⋯殺っとけば良かったたい⋯⋯」
えっ!?!物騒なこと言ってませんか!?かなり、ボロボロだったわよ!?エンペラー!
「えっと、リアム?あの⋯⋯エンペラーって序盤だけれど、結構強いのよ?しかもギリギリ倒すのが本来のシナリオなのに⋯その上、私の魔力も吸っていたのだから本来より強化されていたはずなのに難なく倒せてるのよ?!敵が太刀打ち出来ないほどに!」
「そうだったとね?あんな奴、弱すぎか。でも、ソフィがそげん言うなら⋯そうなんたいね」
弱いのか、あれで弱いのか⋯⋯。強すぎるのよね⋯⋯2人が規格外に。そんなに、レベルアップしたの?!いつの間に?!
「かっこよかったです」
「かっ、かっこ⋯⋯!?」
瞬時にリアムの顔が真っ赤になる。可愛いぃいいい⋯⋯⋯⋯。食べた─────い。今日くらいは思ったことは吐き出しちゃうんだから!心の中だけでだけど!!
「いい所を見させて頂きました」
「⋯⋯⋯ソフィには怒られると思ってたばい」
「まぁ⋯⋯そこは、結果。レン様も覚醒していましたし。良しです。それに、リアムも覚醒していましたしね!」
「ん?覚醒?」
「はい、魔力の覚醒です。あれから魔力を使った事は?」
「あ、そういえば⋯⋯今までより魔力の扱いがしやすくなったのと⋯⋯半分の力いや、それ以下で使えるようになった気がする」
「効果が出ていますわね。リアムは間違いなく覚醒しているわ。魔力覚醒は、MPと言っても分からないわね⋯⋯技を発動するには魔力が必要でしょ?技によって魔力量の消費は違うけれど技によっては半分以下の量で技を放てるようになる。それと、コントロールがしやすくなって力が安定する。多すぎたり少なすぎたりしないの。まぁその技の熟練度にもよるけれど。それから、技を習得しやすくなる。最後に魔力が普段より増加しやすい体質になるの」
「覚醒って凄かね⋯」
「そうでしょう!!ふふ⋯⋯!これが、主役の特権なのです!!」
「生き生きしとるたいね。そんなソフィも好いとー」
そう言いながら、おでこにキスしてくれた。顔が熱くなるのは仕方ない。いつまでも、ずっとこうしていられたら⋯⋯どんなに幸せか。
いや、私は絶対に生き残ってみせる。そして、私はリアムと共に一緒に生きていくんだ。
そう胸に誓って──────
そんな固い決意は、一瞬にして崩れ去ることも知らずに私は今の幸せな生活を堪能して日々を過ごした。




